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待ち合わせに遅れた俺が、止まった電車の中で送れなかった一行

  • 2026.10.25
ハウコレ

届いた「まだかかりそう?」を開いたのに、返す文面がどうしても決まりませんでした。半年前に自分が送った一通が、同じ画面の少し上にまだ残っていたからです。

車内に、停止信号のため停車しているというアナウンスが流れました。窓の外に見えるのは線路脇のフェンスだけで、次の駅はまだ先でした。すぐに動くだろうと思っていたのですが、同じアナウンスが何度も繰り返されました。

いつもの遅刻のつもりだった

彼女とは付き合って2年になります。待ち合わせに遅れるのは、ほとんど毎回でした。彼女がそれを強く責めたことはなく、俺はその穏やかさに甘えていました。

この日も家を出るのが遅れ、駆け込んだ電車の中で「五分遅れる」と送りました。乗り換えがうまくいけば取り戻せる、そのくらいに考えていたのです。電車が駅と駅の間で止まったのは、その数分後でした。10分たっても20分たっても、動き出す気配はありませんでした。

「電車止まった」が送れない

「電車止まった」と打って、送信する前に消しました。

半年ほど前、寝坊して遅れた日に、「電車が遅れてて」と送ったことがありました。彼女は「大変だったね」と返してくれました。あのときの嘘が、同じトーク画面の少し上にまだ残っている。本当のことを送っても、いつもの言い訳にしか見えない気がしました。

そこへ「まだかかりそう?」が届きました。少し迷ってから開いたので、既読はついたはずです。それでも「あと少し」とは書けませんでした。電車が動く気配は、まだなかったからです。

今頃、彼女は入口の前でどんな顔をしているのだろう。考えるほど、打った文字を消す回数だけが増えていきました。

届いたのは「じゃあ」だけ

「五分遅れる」を送ってから1時間がたった頃、「じゃあ」が届きました。

その先に何が続くのか、画面をいくら見ても分かりませんでした。もう帰る、なのか。もういい、なのか。どちらにしても、このまま黙っていたら終わる気がしました。

その直後、電車がようやく動き出しました。駅に着くなり改札を抜け、走りながら「じゃあの続きは会って聞かせて。いま走ってる」と送ったのです。

美術館までの坂を駆け上がった先、入口脇のベンチに彼女の姿。膝に手をついて息を整えながら、言うべきことはたくさんあったはずなのに、口から出たのは「ごめん」だけでした。

そして...

窓口で次の回の券を買い直し、展示を見て回るあいだも、理由は言い出せないままでした。

駅へ向かう途中で、彼女から切り出された一言。

「じゃあ、次は遅れる理由もちゃんと送って」

少し間をあけて、「うん」とうなずきました。

その夜、電車が止まっていたことも、半年前の「電車が遅れてて」が寝坊だったことも、全部打って送りました。今度は消さなかったのです。

しばらくして届いた返事は、「そっか」だけでした。スマホを置いて、次の待ち合わせの日のアラームを30分早くセットし直しました。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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