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東京大学に眠るお宝に出会う。総合研究博物館の大澤啓先生が解説する「SP盤」

  • 2026.10.26

せっかく東大に入ったからには、博物館や資料室も隅々まで歩き回りたい。そこは専門家やマニアも唸るアイテムの宝庫。東大はコレクションも一級品だった。

photo: Koh Akazawa / text: Masae Wako

東京大学総合研究博物館・大澤 啓
BRUTUS

解説者:大澤啓

おおさわ・けい/フランスの大学を経て東京大学総合研究博物館へ。専門は美学・美術史学。20世紀の工芸やデザイン、ジャズレコード史を研究。「初期の蓄音機は、機能と造形が一致している点が美しい」

ジャズ黎明期の躍動を伝える名盤・レア盤、約1万枚

場所:インターメディアテク

古き良き時代の「音の文化」を、どう収蔵し、どう体験してもらうのか。それも博物館の課題だと、インターメディアテク(IMT)は考える。IMTは東京大学総合研究博物館が日本郵便と協働運営し、大学が持つ学術標本を展示する施設だ。

「収蔵庫には、1910年代から50年代までに録音されたジャズのSP盤レコードが1万枚近く。その中心は蒐集家(しゅうしゅうか)の湯瀬哲さんから2012年に寄贈されたコレクションです」

そう話すのは大澤啓先生。SP盤とは1分間に78回転する蓄音機用レコードだ。先生はジャズレコードを軸としたサウンドスタディーズ、すなわち、人間が「録音された音」にどう触れてきたのかを、人類学的、美術史学的、さらには音響機器の観点からも研究し続けている。IMTでは、音を聴く文化を追体験する装置として、蓄音機を約80機収蔵。蓄音機音楽会も開催してきた。

初期のSP盤の主流は片面3分半のシングル盤。それを複数枚、冊子状に収めたものをアルバムと呼んだ。

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「Livery Stable Blues」1917年。ジャズ、正確にはJass(ジャス)という言葉が印字された最古のレコードとされる。
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イ・アームストロングの「WEATHER BIRD」1928年。
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コールマン・ホーキンスの「BODY AND SOUL」1939年。
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レスター・ヤングの「BLUE LESTER」1944年。
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チャーリー・パーカーの「A NIGHT IN TUNISIA」1946年。
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エラ・フィッツジェラルドの「I'M THE LONESOMEST GAL IN TOWN」1947年。
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ブルーノートが1939年にレーベルを創立し、最初にリリースした記念碑的な3枚の12インチ・シングル。左から、「MELANCHOLY」「BOOGIE WOOGIE STOMP」「MIGHTY BLUES」。

「蓄音機は、100年前の音の厚みや当時の空気感だけでなく、ジャズの革新性も伝えます。それは西洋古来の音楽とは真逆の、肉感的で即興的な黒人音楽が人々を熱狂させ、市民権を得たという斬新さです。私が試みているのは、そんなジャズ史を音楽家や様式で語るのではなく、レコードを基準に、音楽としてフラットに捉え直すこと。そのためには盤に刻まれた音が重要なのです」

とはいえ、蓄音機の針もレコードも、かけるたびにすり減ってしまう。

「いつかは聴けなくなる名残の世界。それも含めてロマンを感じます」

1920〜40年代のレコード
1920~40年代の名盤。ジャケットも魅力的。
東京大学総合研究博物館 IMTの展示
IMTの展示。蓄音機を発明したとされるのはトーマス・エジソン。

東大 memo
ミュージシャンや様式論ではなく、レコードに刻まれた音にフラットに向き合うことで、新しいジャズ史が見えてくる。

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