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半休を取ったことも電池切れのわけも言えず家を出た俺→引き返すと、紙袋は玄関の真ん中に置かれていた

  • 2026.10.7
ハウコレ

妹の頼みを盾にして、俺は彼女の問いから目をそらしました。半休を取ったことも、電池が切れた理由も、話せないことではなかったのに。

改札を抜けたところで、手が軽いことに気づきました。妹に渡すはずの紙袋を、玄関に置いたまま出てきていたのです。彼女の問いに答えられないでいた数分の間に、俺は自分の用事まで落としていました。

妹からの電話

6つ下の妹が電話の向こうで最初に言ったのは「辞めてきた」でした。寮のある職場に入って半年、荷物のほとんどを置いたまま、財布とスマホだけで出てきたと言います。

会議室の窓のほうを向いて、声を落としました。泣いてはいませんでした。それでも、妹が今いる駅の名前を聞いたとき、そこまで動けるのは俺しかいないと分かりました。

残りの時間を半休にして、妹のいる駅へ向かいました。彼女に知らせようと打ちかけた文は、送らずに消しました。会社の帰りだと言えば済むと思ったのです。

妹は寮のサンダルのまま、ホームのベンチに座っていました。

23センチのスニーカー

妹の友人が近くに住んでいて、しばらく泊めてくれることになりました。友人の部屋まで歩く途中、妹が言いました。

「お兄ちゃん、親にも彼女さんにも言わないで。自分でちゃんと言うから」

「わかった」

2社目を半年で辞めたことを親にどう伝えるか、妹はまだ決めていませんでした。

妹を送り届けてから、駅ビルの靴屋に戻りました。仕事で履いていたサンダルしか持っていなかったので、しばらく友人の家で過ごせるように靴を買うことにしました。妹に聞いたサイズは23で、彼女の足より2センチ小さい数字です。

送り届けたあとも電話で今後の話をしているうちに、スマホは通話と地図で電池を使い切っていました。最終の電車で帰り、部屋に着いたときには日付が変わっていました。

「行ってくる」の続き

帰っても彼女に声をかけず、ベッドでは背を向けたまま眠りました。洗面所から戻り、玄関で靴を履いていると、彼女が後ろに立ちました。

「昨日どこにいたの?」

ほどけてもいない靴ひもを、結び直しました。

「電話、3回かけたんだけど」

「ごめん。充電が切れてて」

「それ、答えになってない」

「行ってくる」

妹の名前を出せば、辞めた話まで続きます。約束だから、と自分に言いました。本当は、妹の話をすれば彼女が「うちに来ればいいのに」と言い出すと思い、その先を彼女に背負わせたくないと、聞きもしないうちに決めていました。先月も仕事で遅くなった日があったことを、彼女がどう受け取っていたのかまでは考えていなかったのです。

「行ってくる」の続きを、俺は持っていませんでした。

そして...

改札で引き返して部屋に戻ると、彼女の靴はもうなく、紙袋は靴箱の脇ではなく玄関の真ん中に置かれていました。避けなければ通れない位置です。そのまま玄関先で腰を下ろし、妹に電話をかけました。

「今日、話してもいいか」

「うん。ごめん」

紙袋を膝に載せたまま、次にかける番号を画面に出しました。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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