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「団地のふたり」9話 80を過ぎた親が、50代シングルの娘の老後を心配する——その親心、娘にはどう届く?

  • 2026.9.30

「団地のふたり」9話 80を過ぎた親が、50代シングルの娘の老後を心配する——その親心、娘にはどう届く?

一昨年、NHK BSで大きな話題を呼んだ「団地のふたり」が、NHKドラマ10で地上波放送に。小泉今日子と小林聡美が演じる50代の幼なじみと、団地に暮らす人々との何気ない日常を、やさしいまなざしで描いた名作です。もう一度楽しみたい人も、初めて見る人も、その見どころを振り返ります。 ※ネタバレあり

家族間のことほど、きっちり話し合わないまま……

“のんき”が板についているふたりも、さすがにここまでくると、のんきなままではいられなくなってきた。団地の建替え計画が大詰めにさしかかり、それぞれに身の振り方を考えるときがやってきた。

周りを見渡すと、ノエチ(小泉今日子)のお父さん(橋爪功)もお兄ちゃん(杉本哲太)も、やたらと準備がいい。もちろん「転ばぬ先の杖」は大事なことではあるけれど、今回の計画は、ちょっとばかり家族の気持ちとのズレがあるのでは?と思えてくる。

ここで太田家(ノエチの家)の男性陣の動きを確認してみたい。

まずお父さん。娘のためを思って、この先長く暮らせる住まいを相続させたいと考えて、マンションへの建替え計画を積極的に進めている。実際、シングル女性にとって住宅の確保は大きな課題だ。先々のことまで考えて行動するお父さんは、なんとも頼もしい。

次にお兄ちゃんは、リハビリ中のお母さん(丘みつ子)のことを考えて、早々に同居の話を持ちかける。病み上がりの母親を気遣う様子は、なっちゃん(小林聡美)が言うように「長男度」全開で、非の打ちどころのない親孝行ぶりを見せている。

ただ、このふたつの計画、どちらにしても本人への確認がないままに進めているようなのだ。

たとえばノエチとお母さんは、本音を言えば、建替え計画そのものに反対だ。母娘のふたりきりの時に、お母さんは「死ぬならここがいい」と団地への思いを語っている。そして、建替えが決定した場合、娘に迷惑をかけるとしても、ここに住み続けたいのだ。ただ、息子から同居の提案があったことは相当嬉しかったはず。だから本音は娘にしか言えていない。同居のことを「(お兄ちゃんに)断っておいてほしい」と娘に頼むところ、ここはいかにも母親らしい言動だと思う。

そしてノエチにしても父親が先々のことを考えてくれていることはありがたいものの、そんなふうに思われている自分が「情けない」と感じるのも事実だ。80を過ぎた親が自分の老後を心配しているのかと思うと、心中、穏やかではいられない。

お父さんやお兄ちゃんは、本人がどう思うかについて、どれくらい想像しただろうか。ふたりとも計画を前に進めるときに「守るのは自分だ!」と強い責任感を持って突っ走ったのだろうが、コミュニケーション不足の感は否めない。そして、家族間のことほど、きっちり話し合わないまま、こんなふうに先走って動いてしまうこと、実は少なくないように思う。

団地との別れを告げる。え? 本当に?!

準備がいい人、と言えば、佐久間のおばちゃんが、ちゃっかりと未来に向けて動き始めていた。なんと、ここでの53年の暮らしに別れを告げて、千葉の息子家族と同居するらしい。

引っ越し業者が荷物を引き取りに来たあと、がらんとした部屋でおばちゃんがいつになくしんみりとして思い出を語る。新婚時代、団地の暮らしに憧れて住み始め、最先端のかっこいい設備に囲まれて暮らした日々。あんなにピカピカだった家が、いつしか古い、汚い、と言われるようになって、それでも住み続けた。なぜなら、思い出のつまったこの団地が大好きだからだ。

ここまで愛着のある佐久間のおばちゃんでも、いまが潮時だと判断して団地を去っていく。

そのあとも、ぽつぽつと団地を離れる人たちが出てくる。さびしい気持ちが高まるなか、追い打ちをかけるようにノエチのもとに残念な知らせが入る。大学での非常勤講師の仕事がなくなって、このままでは無職の身になってしまう。建替えになったら自分の部屋もなくなるし、これは正真正銘の大ピンチだ。どうする?ノエチ!

そして、なっちゃんにも決断のときがやってきた。この団地が取り壊されると決まったら、お母さんのいる静岡に引っ越すことにするらしい。つまりふたりの別れのときも迫ってきたのだ。

ここで改めて思う。ここまでふたりが気楽にやってこれたのは、この団地があったおかげだ。建替えが始まれば、住まいがなくなるだけでなく、団地にあったコミュニティそのものが消えて、そこに集う人たちがいなくなる。そして建替えが終わったとき、それは元通りにはならない。団地が消えてしまうと、亡くなった空ちゃんも、さらに遠くに行ってしまいそうだ。

いつになくセンチメンタルな気分でふたりが夕日を見つめ、団地との別れを告げる。え? 本当に?! こちらはまだ気持ちの整理がつかない。頭のなかに「セーラー服と機関銃」(薬師丸ひろ子)のイントロが流れ出す。“さよなら”は別れの言葉ではない。そう思いたい!

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