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「あの時受診していれば…」腹痛を放置した50代男性、急に激痛と血便に襲われ…受診先で告げられた“診断結果”に後悔したワケ

  • 2026.10.24
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、麻酔科専門医の松岡雄治です。

「ちょっとお腹が痛いけれど、横になったら治まったから様子を見よう」—ご家族の「病院に行ったら?」という心配を後回しにしてしばらく様子をみていましたが、ある日突然、激痛と血便に見舞われて緊急受診したAさん(50代男性)。

診断の結果は「腸重積症」でした。「あの時受診していれば…ただの消化不良だと油断しなければよかった」といまでも後悔していると語っています。

今回は、腸の中に腸が入り込んで抜けなくなる「腸重積症」の恐ろしいメカニズムについて解説します。

腸管内で起きる「構造的トラブル」の恐怖

「すぐ治まったから大丈夫」だと思っている間に、腸の中に腸が望遠鏡のように折りたたまれて入り込んでしまうのが、この病気の怖さです。なぜ一時の油断が重大な事態に繋がるのか、そのメカニズムは以下の通りです。

【腸重積症が悪化する悪循環フロー】

  • 【原因発生】腸の内部にポリープや腫瘍(大腸がん等)ができる
  • 【引き込み】腸が内容物を運ぶ運動(蠕動)により、腫瘍が先端となって肛門側の腸の中へ引き込まれる
  • 【締め付けと出血】引き込まれた腸の血流が滞り、粘膜がダメージを受けて出血し、イチゴゼリー状の血便(粘血便)が出る
    血流が止まった状態が長く続くと腸管が壊死してしまうおそれがあります。

「ただの腹痛」と「危険なサイン」の境界線

「一時的とはいえ痛みが引いたから、ただの消化不良だろう」と判断してしまうのは、無理もありません。実際、腸重積症の初期は入り込んだ腸が一時的に元に戻ることもあり、その間は痛みが引いてケロッと過ごせることもあります。そのため「治った」と錯覚しやすいのです。

しかし、大人の腸重積症は子どもの場合と大きく異なり、約90%以上で腸管内にポリープや大腸がんなどの明確な病変が存在します。特に大腸にできた隆起性の腫瘍が引き金となるケースが多く確認されています。 一度痛みが引いても、原因となる病変が腸の中に残っている限り、腸は何度でも巻き込まれてしまいます。放置するほど腸へのダメージは蓄積し、手術で切除する範囲が広がるなど、術後の生活の質低下に直結します。「痛みが波のように繰り返す」こと自体が、大人の腸において危険なシグナルなのです。

重症化する前に確認すべき3つのサイン

手遅れになる前に、ご自身やご家族で確認していただきたい初期サインは以下の3つです。

1. 波のある腹痛(間欠的腹痛)

痛みが数分〜数十分おきに強くなったり和らいだりする(腸が巻き込まれたり緩んだりするため)。 

2. 血便(粘血便・イチゴゼリー状便)

便に血液や粘液が混じる(締め付けられた腸粘膜から出血するため)。大人の場合は典型的なゼリー状だけでなく、「便にうっすら血が混じる」「赤黒い便が出る」といった形でも現れます。

3. 腹部のしこり(腫瘤感)

お腹の上からソーセージ状のしこりを触れることがある。

ただし、大人の場合、お腹の上から「しこり」を触れたり完全な腸閉塞を起こしたりする例は全体の10%程度と実は少数です。「しこりがないから大丈夫」「血便がないからただの腹痛」と自己判断してしまうのは危険です。また、小児のように突然発症するだけでなく、数日〜数ヶ月にわたって「時々お腹が痛む」状態がだらだら続くケースも多くあります。

腹痛や血便などの症状に気がついたら

日常を優先し、痛みを「まだ大丈夫」と後回しにしてしまうのは人間として当たり前のことです。ご自身を責める必要は全くありません。ぜひ今日からできる一番簡単な一歩として、以下の3つの対処法から実践してみてください。

  • 「波のある腹痛」や「血便」に気づいたら、消化器内科や消化器外科を受診する
  • お腹が張ったり便が出ないからといって、自己判断で市販の下剤(便秘薬)を飲んだり浣腸をしたりしない(腸が詰まっている状態で腸を刺激すると、腸管が破裂する恐れがあり極めて危険です)
  • CTやエコー検査では、重なった腸が確認できて迅速に診断がつくケースが多いことを知っておく

なお、波のある痛みが引かずに「激しい痛みがずっと続く」「激しい嘔吐を繰り返す」「お腹全体が板のように硬く触れ、触るだけで激痛が走る」「高熱が出る」といった場合は、腸の血流が完全に止まり、腸が破裂・壊死して腹膜炎を起こしている緊急事態です。決して我慢せず、直ちに救急車(119番)を要請するか救急外来を受診してください。

急激な腹膜炎などが起きていない段階であれば、大人の腸重積は慌てて緊急手術をせず、CT等でしっかり原因(がんやポリープ)を精密検査した上で、計画的・安全に手術を行えるケースも多くあります。

「受診したらすぐ切られるのでは」と不安にならず、まずは検査で原因を確かめに行きましょう。 不安を取り除き、大切な日常を守るためにも、どうか一人で抱え込まず、早めに医療機関へ相談してください。


※プライバシー保護のため、実際の症例をもとに一部の設定やエピソードを改変・再構成しています。

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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