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「怖い人」と決めつける前に。その人にも背景があるかもしれないと想像することの大切さ【監修者インタビュー】

  • 2026.9.23

【漫画】本編を読む

愛美は夫・賢二とごく普通の夫婦として、幸せに暮らしていた。しかしある日、突然賢二の両親が事故に遭い、義父が亡くなる。悲しみに暮れる中、義父の葬儀に現れたのは怪しげな男。その男は、夫の兄・聡一だった……。聡一という兄がいること、聡一は高校生の頃から引きこもっていることを愛美は初めて知る。義家族はなぜ聡一の存在を隠していたのか?

『隠された家族』(のむ吉:著、小瀬古伸幸:監修/KADOKAWA)は統合失調症を患う兄をめぐり、家族がどう向き合っていくかを描いた物語だ。本作を監修した精神科認定看護師の小瀬古伸幸さんにインタビュー。精神疾患を抱える家族のサポートにも力を入れる小瀬古さんに、家族が抱えている問題とその解決の糸口、精神疾患に関する近年の研究成果についてまで、広くお話を伺った。

※統合失調症をはじめとした精神疾患の進行や症状は個人差がありますので、詳細は医療機関等にご確認ください

――この作品を読む方へ「ここに注目して読んでほしい」というメッセージがあればお願いします。

小瀬古伸幸さん(以下、小瀬古):漫画を最後まで読めば自然と伝わることではあるんですが、一番見てほしいのは表面的な出来事ではなく、その背景です。そこに至るまで、どういう状況が積み重なってきたのかがとても丁寧に描かれています。そこに目を向けることで、「近所のあの人は少し変わっているな」と感じる相手に対しても、「もしかしたら何か背景があるのかもしれない」と想像できるようになると思います。そういう積み重ねが、偏見やスティグマ(編集注:特定の属性を持つ個人や集団に対し、周囲が否定的なレッテルを貼り、差別や偏見、不当な扱いをすること)を少しずつ減らしていくことにつながるはずです。

――確かに、街中で誰もいないところに怒鳴っている方などを見かけることがあります。つい怖いなと思ってしまうのですが、どう考えればいいでしょうか?

小瀬古:まず大前提として、外見やその場の行動だけで背景を判断することはできません。統合失調症をはじめ、認知症、アルコールや薬物の影響、その他の病気が原因でそうした行動が生じている可能性もあります。

私自身、病棟勤務時代からこれまで数多くの患者さんと関わってきました。症状や精神的な苦痛が強く現れているときは荒い言葉を使われることもありますが、普段はとても穏やかに接してくださる方が大半です。

ですので、一概に「怖い人」と決めつける必要はありません。ただし、もしご自身やお子さんなどに危険が及ぶと感じる場面であれば、無理をせず保健所や自治体、必要に応じて警察へ相談することも大切です。

――精神疾患のある方は危険だというイメージを持たれがちですが、その点についてはいかがでしょうか。

小瀬古:精神疾患のある方だから加害行為が多いということはありません。法務省の犯罪白書でも刑法犯全体に占める精神障害者などの検挙人員の割合は約1.0%で、精神疾患のない人と比べて犯罪率は極めて低いんです。ニュースでは印象的な事件だけが大きく報じられるため、どうしても「精神疾患=危険」というイメージが強くなってしまいますが、実際にはそうではないんです。もちろんゼロではありませんが、多くの方はきちんと話せば通じますし、症状はあっても人としての本質は私たちと何も変わらないと思っています。この作品を通して、「変わった人」「怖い人」と決めつける前に、その人にも背景があるかもしれないと想像してもらえたら嬉しいですね。

取材・文=原智香

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