1. トップ
  2. エンタメ
  3. 「悪い日があるからこそより一層幸せを感じる」。サブリナ・カーペンターが向き合う不安障害とメンタルヘルス

「悪い日があるからこそより一層幸せを感じる」。サブリナ・カーペンターが向き合う不安障害とメンタルヘルス

  • 2026.9.21
CBS Photo Archive / Getty Images

「サブリナ、これまでで私より背が低い人と共演したのは(あなたが)初めてかも」

「……アーメン!」(笑)

2026年4月17日(現地時間)、世界最大級の音楽フェスティバル、コーチェラ 2026のヘッドライナーとして世界中を熱狂の渦に巻き込んだサブリナ・カーペンター。サビの部分で“ジュノ・ポジション”(性的体位)のエアパフォーマンスで大いに盛り上がるヒット曲「Juno」の途中でマドンナの「Vogue」のイントロに切り替わると、マドンナ本人がサプライズで登場し、会場の熱気は最高潮に。そんなふたりは、今年7月に15作目となるマドンナの新作アルバム『Confessions II』のリード曲「Bring Your Love」を世界初披露し、先のように言葉を交わした。

ヘッドライナーを務めた2026年コーチェラフェスティバルで、マドンナとサプライズ共演。 Kevin Mazur / Getty Images

かつて“BOY TOY”(男の子のおもちゃ)のロゴが入ったベルトを着用した挑発的なジャケットで80年代世界にインパクトを与えた楽曲「Like a Virgin」、続く「Erotica」、そして写真集『Sex』等々、過激なまでの性的表現で社会現象を巻き起こすなど、68歳の現在もその存在自体が絶大な影響力を持つマドンナ。

フェス当日は20年前に着用したブーツ&コルセットに身を包んで登場した彼女とのリンクコーデで共演したサブリナは、かつてのマドンナのように過激な性的表現で目下世界を沸かせている存在でもある。それだけに、ふたりの共演はマドンナが自身のスピリットの継承者としてサブリナを“公認”する機会のようにも捉えられた。

2025年ブリットアワードで歌唱。刺激的な衣装や演出はときに物議を醸すことも。 Gareth Cattermole / Getty Images

メンタルヘルスをネタに大バッシングを受けた歌詞

「ねえ、私は怒ってない。今でも前みたいに愛してる。でも、あなたがいつか広場恐怖症になりますように(そうすれば外を堂々と歩けなくなるから)。そんなあなたの毎日が幸せでありますように。誰とも寝ることができないままでいるといいわ」

そんなサブリナは、2025年にリリースしたアルバム『Man's Best Friend』の収録曲「Never Getting Laid」で、元恋人の理解できない行動に対し不幸を願う強い復讐心を先のように歌詞に込めた。だが、「広場恐怖症になってほしい」という一節はファン内外から大きな批判を浴び、特にこの病に罹患している患者にとっては障害者差別的な発言に当たるとして社会的に問題視されていると『Newsweek』誌に報じられた。

2025年のメットガラにて。パフォーマンスのみならずファッションも常に注目の的。 Jamie McCarthy / Getty Images

広場恐怖症とは、不安障害の一種で公共交通機関、混雑した場所、広場、行列など人が多く集まる場所でパニック発作を起こしたり閉塞感を覚えたりすることから、そのような症状を引き起こす可能性のある場所や状況を恐れて積極的に外出することを避けるようになる病だ。有名人ではドージャ・キャットが楽曲「Agora Hills」でこの病に罹患していることを公表するなど、その患者数は決して少なくない。

また、同アルバム収録曲「Manchild」でも「バカなの? それとも(頭の回転もしくは発達が)遅いの? もしかしたら役に立たないのかもね」という部分が障害者差別的だと受け取られて非難の対象に。これに対し、自身は世間の批判的な反応に「ショックを受けた」とその心境を吐露しており、歌詞の解釈は自由ではあるが決してそのような意図を込めて書いたものではないときっぱり否定している。

有名になればなるほど、意図せずその言動にますます注目が集まるサブリナ。しかしながら、彼女は先のバッシング騒動以前の2019年5月17日、メンタルヘルス月間の最中に自身が不安障害に罹患していることを公表している。

不安障害の克服と独自のメソッド

2014年よりディズニー・チャンネルのヒットドラマ 『ガール・ミーツ・ワールド』で主人公の親友マヤ・ハート役を演じ、俳優として一躍有名に。主題歌も担当し、劇中やイベントでも歌唱。 Bruce Glikas / Getty Images

「不安というのは、一言では言い表せないほど説明が難しいもの。だから、その正体が一体何なのか、自分でもよく分からない人は多いと思います。なぜなら、(不安について考えれば考えるほど)答えられない無数の疑問が湧き上がってくるから。そして一度不安に襲われると息が詰まるような感覚に陥ったり、どこから始めたらいいのか、どうすれば気分が良くなって癒されるのか、全く分からなくなってしまうのです」

アルバム『Singular: Act II』(2019)からのシングルカット「Exhale」をリリースした際、彼女は罹患していた不安障害に対する率直な気持ちを歌詞に込めたと『Hollywood Record』誌に明かしている。奇しくもこの楽曲が当時メンタルヘルス月間の最中にリリースされたことから、関係機関との啓蒙活動の“タイアップソング”ではないかと囁かれたが、これに関して彼女は全くの偶然だったときっぱり否定している。

2019年、映画『Tall Girl』のプロモーションで『Young Hollywood 』に出演。 Young Hollywood / Getty Images

現在全世界で約12億人が罹患しているとも言われる不安障害は、決して稀な精神疾患ではない。厚生労働省によると、不安障害の主な症状は、慢性的な不安感や漠然とした心配が消えない、小さなことが極端に気になりリラックスできない、集中力や記憶力が低下してイライラしやすい、さらに湧き上がる不安を自分でコントロールできないといった精神的な症状に加え、動悸、息苦しさ、めまい、不眠といった身体的症状を伴う心の病だ。

「少しの間気持ちを落ち着かせたい/少し息を吐いてもいい?/これを打ち明けてもいい?/少し座ってもいい?/息をしてもいい?」という言葉で自身の症状を歌詞に綴ったサブリナは、当時インタビューで病との向き合い方についてこんなふうに明かしている。

「誰かと話したいときもあれば、誰とも話したくないときもある。だからこの病は厄介だけれど、一番大切なのは常に自分自身と向き合うこと。なぜなら、時にこの病のせいで自分が自分でないように感じることがあるから。そのためにも、私にとって入浴することと、少しでいいから座って深呼吸をする時間を持つことが、最も効果的なセルフケアなのです」

2024年コーチェラフェスティバルに出演。この年のアルバム『Short n’ Sweet』で歌手としてヒット。 Timothy Norris / Getty Images

また「exhale」リリース当時、自身の不安障害について明かすことをためらったという彼女は、その考え方を変えたことも病の克服の大きな一助となったと後に明かしている。

「(この曲のリリースに躊躇したのは)私はこんなに恵まれているのに、不安ばかり感じるなんて言ったら単なる“愚痴”に取られるのが嫌だったから。けれどどんなに恵まれていようと、湧き上がる不安は止められない。感謝すべきことがたくさんあるという立場にあることと、心の中に葛藤を抱えることは別の話、ということを自分に言い聞かせることができたことが、克服につながったと思います」

若者の自殺防止に向け、サブリナ・カーペンター基金設立へ

2025年、第67回グラミー賞では6部門にノミネート。『Short n’ Sweet』で最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞、「Espresso」で最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞を受賞。名実ともにポップアイコンに。 CBS Photo Archive / Getty Images

そんな彼女は、紆余曲折がありながらも自身のメンタルヘルスについて積極的に発信し、社会にポジティブな影響を与えることが評価されたことから、2024年にイギリスの慈善団体パピルスとパートナーシップを提携。近年イギリスで社会問題となっている35歳未満の若者の自殺防止に取り組む同団体のウェブサイトにこんな言葉を寄せている。

「私は、メンタルヘルスへの意識向上やLGBTQ+の権利、動物福祉など、自分が心から大切に思っている活動を支援することに情熱を注いでいます。ですから『サブリナ・カーペンター基金』が、すでに社会に貢献していることを知り、本当にやりがいのある仕事だと思いました。いつも私に揺るぎないサポートをしてくださるファンの皆さま、本当に感謝しています」

2025年のMTVビデオミュージックアワードでは、トランスジェンダーの権利をテーマに強いメッセージ性のあるパフォーマンスを行った。 Christopher Polk / Getty Images

そして同団体が24時間体制のメール&チャットサービス「ホープライン」を開設後、相談数や救命サービスの需要が著しく増加したことから資金難に陥ったため彼女に協力を緊急打診したところ、すぐさま「ショート・アンド・スウィート」ヨーロッパツアーの売上の一部がパピルスと関係慈善団体への支援に充てられるなど、精力的な活動を続けている。

パピルスUKが参加した2023年のロンドンのプライドパレードでは、LGBT+コミュニティを含む30,000人もが参加し、若者の自殺防止支援の必要性を訴えた。 Mark Kerrison / Getty Images

自身が克服した不安障害を率直に明かす一方、その闘いを他者の命を救うための力に変えたサブリナ。そんな彼女は、時折不安になりそうな心と向き合うとき、こんなふうに自分に言い聞かせているという。

「毎日が素晴らしい日になるわけではないけれど、それで大丈夫。むしろ悪い日があるからこそ、素晴らしい日を過ごせた時により一層感謝できるようになるのだから」



元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ