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10年前に「あなたに接客は向いてない」と言われ店を辞めた私→研修の最後列に元店長がいました

  • 2026.9.19
ハウコレ

10年前に名札を返した店で、私は言い返す言葉を持てませんでした。同じ人が受講者として座った研修のあと、廊下で聞いた答えは、謝罪よりずっとはっきりしたものでした。

研修の最後に集めた質問用紙の中に、4つに折られた紙が1枚だけ混じっていました。

レジに列ができた日の、店の奥で

20代のはじめ、私は駅ビルの雑貨店で働いていました。

3年目のある日、お客さまとの会話を続けるうちに包装の手が何度も止まり、気づけばレジの前に列ができていました。

閉店後、店長にバックヤードへ呼ばれました。

棚の段ボールを片づけながら、店長は言いました。

「あなたに接客は向いてない」

理由を聞けば、まだ何か言えると思いました。

けれど店長から続いたのは、話し込む、手が止まる、列を作る。それでは売り場を任せられない、という説明でした。

机の上には、契約更新についての書類が置かれていました。

私が返せたのは、

「わかりました」

だけです。

その後、契約は更新せず、店を辞めました。

名札を返した日のことは、そのあと別の売り場に立っても忘れませんでした。

10年後、教える側になりました

私は別の会社の販売職に入りました。

最初に直したのは、包装と会計の速さです。話している途中でも手を止めない。列が伸びそうなら早めに応援を呼ぶ。売り場全体を見る癖もつけました。

でも、お客さまと話すこと自体はやめませんでした。

何度か来てくれる人の顔を覚え、以前買ったものを確認しながら商品を提案する。そうしているうちに、新人へ接客を教える役を任されるようになりました。

今は社外向けの接客研修にも講師として立っています。

その日の会場で受講者の名札を確認していたとき、最後列に見覚えのある名字がありました。

顔を上げると、10年前の店長が座っていました。

目が合いました。

相手は小さく会釈しました。

私も会釈を返して、そのまま研修を始めました。

折られた質問用紙に、名字がありました

研修の最後に質問用紙を配りました。名前を書く欄は任意です。

控室で回収した束を確認すると、4つに折られた紙が1枚ありました。

開くと、名前の欄には元店長の名字が書かれていました。

質問は、

「仕事が遅い人に、向いていないと伝えることについてどう考えますか」

という内容でした。

私はその紙を持って廊下へ出ました。

まだ帰っていなかった元店長を呼び止めます。

「あの日、本当に私が接客に向いてないと思ってたんですか」

相手はすぐには答えませんでした。

やがて、

「思っていました」

と言いました。

言い訳はありませんでした。

私はもう1つ聞きました。

「今もですか」

元店長は私を見て、

「今は、私が間違っていたと思っています」

と答えました。

それでも、「ごめんなさい」とは言いませんでした。

私も、許すとは言いませんでした。

そして...

その答えを聞いても、10年前の自分が報われたとは思いませんでした。

あの言葉を信じて接客そのものを辞めていた可能性もあります。たまたま私は、別の売り場でもう一度やってみただけです。

次の研修から、資料に項目を1つ増やしました。

「向いていない」と人そのものを評価するのではなく、何ができていないのか、どう変えればいいのかを具体的に伝える。

私が遅かったのは事実です。

列を作ったのも事実です。

でも、それと「接客に向いていない」は同じではありませんでした。

10年前に欲しかったのは、励ましでも優しい言葉でもなく、その区別だったのだと思っています。

(30代女性・接客研修講師)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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