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心臓発作や脳梗塞の警告サインが「まぶた」に現れることがある――1年以内の発症率が約3倍に

  • 2026.9.16
心臓発作や脳梗塞の警告サインが「まぶた」に現れることがある――1年以内の発症率が約3倍に
心臓発作や脳梗塞の警告サインが「まぶた」に現れることがある――1年以内の発症率が約3倍に / Credit:Canva

アメリカのスタンフォード大学(Stanford University)などで行われた研究によって、動脈を詰まらせるコブと同じ材料でできた「まぶたの黄色いふくらみ(眼瞼黄色腫)」がある人は、ない人に比べて、診断から1年以内に心筋梗塞や脳梗塞を起こす割合が約3倍になることが明らかになりました。

その差は10年たっても約2倍までしか縮まらず、しかも黄色腫がある人のあいだでは、血液中の脂に異常(脂質異常症)があってもなくても、発作の起こりやすさはほぼ同じでした。

毎朝鏡で見ているまぶたに、心臓や脳の血管の危険がにじみ出ていたことになります。

論文では、眼瞼黄色腫は最長10年にわたる心筋梗塞や脳梗塞の起こりやすさと結びついており、心臓や脳の血管の危険度を見分ける目印として価値がある、と記述されています。

では、なぜまぶたの小さなふくらみが、体の奥の血管の危険を映し出すのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年4月18日に『Atherosclerosis』にて発表されました。

目次

  • まぶたの黄色いふくらみの正体
  • 1年以内の心筋梗塞と脳梗塞が約3倍に
  • 鏡に映る「予防のきっかけ」

まぶたの黄色いふくらみの正体

まぶたの黄色いふくらみの正体
まぶたの黄色いふくらみの正体 / Credit:Canva

年齢を重ねるうちに、まぶたのあたりに黄色っぽいふくらみができることがあります。

それ自体は害のないものとされ、見た目が気になって皮膚科を訪れる人がほとんどです。

このふくらみは眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)と呼ばれ、女性によく見られます。

今回の研究でも、黄色腫と診断された人の7割が女性で、平均年齢は54歳でした。

ふくらみの中をのぞくと、そこには免疫細胞がぎっしりと集まっています。

その一つ一つがコレステロールなどの脂を内側にたっぷり抱え込み、泡を詰めたようにふくれ上がっています。

実は、これと同じように脂でふくれた免疫細胞は、血管の壁の中にも現れます。

そこにたまって血液の通り道を狭める脂のかたまり「動脈硬化のプラーク」は、この細胞が主役になってできていくのです。

まぶたと同じことが血管の奥でも進んでいるなら、まぶたのふくらみは、外からは見えない血管の異変を知らせるサインなのかもしれません。

実際、両者の関係はこれまでも調べられ、心臓病との関連を認める研究が多く報告されてきました。

眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)は他の病とかかわっている
眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)は他の病とかかわっている / Credit:Xanthelasma and its association with developing major cardio-cerebrovascular events

ただし、ふくらみのある人に、もともと喫煙者や高血圧の人が多いだけなら、心臓病が多いのはそちらのせいとも考えられます。

喫煙や高血圧のように、病気の起こりやすさと結びつくよく知られた要因は「危険因子」と呼ばれます。

そのため、危険因子の条件をそろえて比べれば関連は消えるのではないか、という見方もあり、決着はついていませんでした。

そこで研究チームは、過去最大級のデータを使い、10年という長い期間でこの関係を確かめることにしました。

1年以内の心筋梗塞と脳梗塞が約3倍に

研究チームが使ったのは、アメリカなど4カ国の医療機関に蓄積された、1億5000万人を超える患者の電子カルテのデータです。

その中から、まぶたの黄色いふくらみと診断された約1万8000人を選び出しました。

比べる相手には、ふくらみのない老眼の人たちを、同じ人数だけ選んでいます。

老眼と診断された人は目の専門医の診察を受けており、まぶたの状態もきちんと見てもらっているからです。

その結果、診断から1年のあいだに心筋梗塞を起こした人は、ふくらみのない人が0.35%なのに対し、ふくらみのある人では1.00%に達していました。

脳梗塞でも、ふくらみのない人の0.30%に対して、ふくらみのある人は0.95%でした。

脳の血流が一時的に途絶える発作(一過性脳虚血発作)も、0.19%に対して0.60%です。

どれも割合としては小さいものの、ふくらみのある人ではそろって約3倍にのぼっていました。

黄色腫の特徴である斑点は、コレステロールやその他の脂肪で満たされている。
黄色腫の特徴である斑点は、コレステロールやその他の脂肪で満たされている。 / Credit:Xanthelasma and its association with developing major cardio-cerebrovascular events

しかも、この差は時間がたっても消えませんでした。

10年後の時点でも、心筋梗塞はふくらみのない人の1.73%に対してある人は3.13%、脳梗塞は1.53%に対して3.00%でした。

約3倍あった差は縮まったものの、ふくらみのある人の危険は、なお約2倍の高さを保っていたのです。

喫煙や高血圧などの条件をそろえたうえで、これだけの差が長く残ったことになります。

もし危険の高さが血液中の脂の多さだけで決まるなら、同じふくらみのある人でも、脂質異常症のない人では低く出るはずです。

ところが、ふくらみのある人どうしで比べると、脂質異常症のある人とない人とで、心筋梗塞や脳梗塞の起こりやすさに大きな違いは見られませんでした。

このふくらみが知らせる危険は、コレステロール値だけでは測りきれないのかもしれません。

鏡に映る「予防のきっかけ」

まぶたのふくらみに気づいたとき、多くの人が向かうのは皮膚科です。

取りたいのは目元のふくらみであって、心臓や脳の相談をしに行くわけではありません。

研究チームは、こうした人たちの中に、まだ見つかっていない、あるいは十分に管理されていない心臓や血管の危険因子を抱えた人がいると考えています。

その隠れた危険因子が、今回の危険の高さにつながっている可能性があるというのです。

心臓や脳の血管の異変は外から見えにくいのに対して、まぶたのふくらみは、医師はもちろん本人も鏡で見つけられます。

そのため研究チームは、ふくらみのある人をかかりつけ医が早めに診て、隠れた持病を見つけて管理することが大切だと述べています。

そうすれば、生活習慣の見直しやコレステロールを下げる薬、血圧の管理といった予防策を、心筋梗塞や脳梗塞が起きる前に始められます。

「見た目の悩み」として片づけられてきた小さな黄色いふくらみは、心臓や脳を守るための、鏡に映る早めのサインになるかもしれません。

元論文

Xanthelasma and its association with developing major cardio-cerebrovascular events
https://doi.org/10.1016/j.atherosclerosis.2026.120647

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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