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「十分眠っている」と感じる人にも睡眠不足の疑い、自覚だけでは分からない

  • 2026.9.16
「十分眠っている」と感じる人にも睡眠不足の疑い、自覚だけでは分からない
「十分眠っている」と感じる人にも睡眠不足の疑い、自覚だけでは分からない / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

昼休み、机に伏せて5分。ゆうべは7時間寝たはずなのに、と首をひねる。

眠っている間のことは、ほとんど記憶に残りません。

だから睡眠の状態を正確に知るには、脳波のような客観的な計測が要ります。

ところが日常生活で睡眠を実際に測る手段は限られ、不眠症の診断は本人が「眠れない」と訴えるかどうかに頼っています。

筑波大学の研究チームは、睡眠健診を受けた421人の自宅での脳波と質問票の答えを突き合わせ、本人の自覚と医師の評価がどれだけ一致するかを調べました。

対象は日本の20〜79歳で、睡眠障害の治療を受けていない人。

結果、睡眠に不調を感じている人の66%は、客観的な計測で問題が見つかりませんでした。

逆に、十分眠れているつもりの人の45%には、睡眠不足の疑いがありました。

「睡眠の質」の自覚に、眠りの深さや短い覚醒、無呼吸のリスクをほとんど映していません。

自覚は、どこで客観と食い違うのでしょうか。

研究内容の詳細は2025年1月16日に『Proceedings of the National Academy of Sciences』にて発表されました

目次

  • 1〜6夜の自宅脳波と質問票を、医師の評価と突き合わせた
  • 自覚だけの診断は、行き違いと見逃しを生む

1〜6夜の自宅脳波と質問票を、医師の評価と突き合わせた

1〜6夜の自宅脳波と質問票を、医師の評価と突き合わせた
1〜6夜の自宅脳波と質問票を、医師の評価と突き合わせた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

測ったのは、脳波と血中の酸素飽和度。

参加者は自宅で1〜6夜を記録し、合計で1,465夜分のデータが集まりました。

あわせて、睡眠の習慣や自覚を尋ねる質問票に日本語で答えています。

医師はこの記録をもとに、睡眠不足・不眠・睡眠の質・睡眠時無呼吸のリスクを総合的に評価しました。

研究チームは統計モデルを使い、質問票の答えと脳波のデータのどちらが医師の評価を言い当てるかを比べました。

質問票の答えは医師の評価の予測に弱く、脳波などの客観データは予測に強い結果でした。

ずれの向きは、一方向ではない。

重い睡眠不足の人は自分の睡眠時間を長めに見積もり、「眠れない」と感じているのに脳波では不眠でない人は短めに見積もっていました。

睡眠の質の自覚が映していたのは、睡眠効率(寝床にいた時間のうち実際に眠っていた割合)でした。

短い目覚めの回数や眠りの深さは、自覚に表れません。

無呼吸が眠りの質に与える影響も、本人は感じ取れていませんでした。

医師が「足りている」と評価した人たちでさえ、平均の睡眠時間は393分で、推奨される7時間に届いていません。

深い睡眠の割合が高くても、良い睡眠とは限らないことも分かりました。

自覚だけに頼る診断は、何を見落とすのでしょうか。

自覚だけの診断は、行き違いと見逃しを生む

自覚だけの診断は、行き違いと見逃しを生む
自覚だけの診断は、行き違いと見逃しを生む / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

実際は眠れているのに「眠れない」と感じていれば、不要な治療を受けかねません。

反対に自覚がなければ、重い睡眠障害の予兆を見逃す恐れがあります。

自宅での脳波測定は初日の影響(初夜効果)が小さく、複数夜を重ねれば客観的な不眠の検出を良くできるといいます。

研究チームは、脳波に基づく健診や助言が睡眠習慣の改善と睡眠障害の早期発見に役立つ可能性があるとみています。

ただし、この研究でいう客観的な不眠は脳波だけで定義したもので、自覚症状に基づく通常の不眠症の定義とは大きく違います。

対象も睡眠健診の受診者だけ。治療中の人は含まれていません。

【これまでの研究】

睡眠を削られた人が自分の能力の低下に気づきにくいという示唆は、以前の実験にもあります。

ペンシルベニア大学の研究チームは以前に、健康な成人が寝床にいる時間を14日間、1晩4時間・6時間・8時間に制限して、認知機能の課題の成績を追いました。

4時間と6時間の群では、課題の成績が日ごとに積み重なって落ちました。

一方で眠気の自己評価は制限の直後に上がった後はわずかしか増えず、4時間と6時間の条件を有意には区別しませんでした。

眠気の自己評価から、参加者は自分の能力の低下をほとんど自覚していなかったと研究チームは推測しています(関連研究)。

「よく眠れた」という感覚と、脳が実際に休めたかどうかは、別の物差しで測るものなのかもしれません。

昼休みの5分の居眠りは、体からの正直な申告だったのかもしれません。

参考文献

自覚している睡眠時間や睡眠の質は「当てにならない」(筑波大学 TSUKUBA JOURNAL)
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20250117141500.html

The Cumulative Cost of Additional Wakefulness: Dose-Response Effects on Neurobehavioral Functions and Sleep Physiology From Chronic Sleep Restriction and Total Sleep Deprivation (SLEEP, 2003)
https://doi.org/10.1093/sleep/26.2.117

元論文

Discrepancies between subjective and objective sleep assessments revealed by in-home electroencephalography during real-world sleep
https://doi.org/10.1073/pnas.2412895121

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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