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「これ、私が作りました」が言えない…編み物を忘れただけなのにSNSでバズった結果

  • 2026.9.17
ハウコレ

開店してすぐ、私は店で制作途中の写真を差し出しました。返ってきた言葉と、そのあとに続いた謝罪。母の誕生日までに、花籠は私の手元へ戻ってきます。

画面いっぱいに写っていたのは、私が何日もかけて編んだ小さな花籠でした。

母に渡すはずだったもの

週に1度、休みの日に通うカフェがあります。入口から離れた角の席で編み物をするのが楽しみでした。作っていたのは手のひらほどの花籠で、母の誕生日に渡すつもりでした。完成まであと少しという雨の日、私は花籠を袋に入れ、椅子の横に置いたまま店を出ました。気づいたのは、家で鞄を開けたときです。店へ連絡する前に公式SNSを開くと、そこに自分の花籠が写っていました。

「店内でお預かりした忘れ物です。お心当たりのある方はスタッフまでお声がけください」

それだけなら、ありがたいと思ったはずです。ところが投稿には、作った人はすごい、売ってほしい、という言葉が並んでいました。私の知らないところで、ただの忘れ物ではなくなっていました。

取りに行ったのに、言えませんでした

カフェへ足を運んだのは、次の休みです。レジの横に花籠が置かれていました。注文を待つ女性が、店員に声をかけました。

「SNSで見たやつ、これですよね?」

「そうです。まだ持ち主の方がいらしていなくて」

女性が携帯を取り出したので、私は列から離れて席に座りました。自分のものですと言えば終わる話です。けれどここで名乗れば、その女性にも、作った人として知られます。レジの前から人は途切れませんでした。その日は花籠の前を通らずに帰りました。

見せたのは、制作途中の写真です

数日後、花びらがよく見える写真が、まだ持ち主を待っているという言葉とともに流れてきました。花籠を見るために店へ行ったという投稿まで見かけました。母の誕生日が近づいています。私は開店してすぐ店へ向かいました。客はまだ1人だけです。レジにいた店員へ、携帯に残っていた制作途中の写真を見せました。

「これ、私が忘れたものです」

店員は写真と花籠を見比べ、袋に戻して渡してくれました。

「お待ちしていました」

そのあとに続いたのは、謝罪の言葉です。

「落とし物を探すつもりで載せました。でも、反応が増えてから、店の投稿として見てしまっていました。申し訳ありません」

そして...

私も、言えずにいたことを伝えました。

「探してくれたことは、ありがたかったです。でも、作った人まで見世物みたいになるのは、ちょっと怖かったです」

店員はもう一度頭を下げました。花籠を大きく写した投稿が消えたのは、その日のうちです。母の誕生日には、予定どおり渡せました。今も私は、あの角の席で編み針を出しています。変わったのは、席を立つときに椅子の横まで確かめるようになったことです。

(30代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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