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引き止めてほしいと言えなかった私が、本に挟んだ紙にだけ書けた頼みごと

  • 2026.9.17
ハウコレ

口に出せば断られるかもしれないと思って、私は最後まで頼めませんでした。代わりに本に挟んだ紙を彼が見つけたかどうかは、まだ分かっていません。

荷物の減った部屋では、自分の足音がやけによく響きました。

決まってからしか言えませんでした

付き合って3年、私たちの職場はどちらも同じ町の中にありました。昇給するためには別の街に行って働かなければなりません。異動の希望を出すかどうか、何度も切り出そうとしました。ただ、相談の形で持ちかければ、私は彼が引き止めてくれるのを待つことになります。待ったうえで何も言われなかったときの自分は、想像がつきました。だから全部決まってから「来月から、向こうの店に移ることになった」と伝えたのです。彼が返したのは「そっか。決まったんだ」でした。思っていた通りの返事で、私はうなずくのが精一杯でした。

置いていくと言った本

荷造りの日、彼は黙って本を箱に詰めてくれました。その中に、3年前に借りたまま返していない本があります。私は手を伸ばして「この本、返すよ」と言いました。返ってきたのは「持っていけば」でした。本当は、その本に挟んだ紙を見つけてほしかったのです。

頼めなかった頼みごと

彼の部屋から帰るとき、彼は必ず外まで出てきて見送ってくれました。同じ町の中で歩けた距離が、来月からは電車を乗り継ぐ長さに変わるはずでした。会いに来てほしいと口にすれば、都合を聞かれて、無理だと言われるかもしれません。断られたら、向こうで荷物をほどく気力が残らないと思いました。だから本に挟んだ紙に「月に1度でいいから、会いに来てほしいです」と書き足したのです。駅で彼が「気をつけて」と言ったので、私は「うん」とだけ返して改札を抜けました。

そして...

改札を抜けてから、頼めなかった言葉を打っては消しました。結局どれも送れていません。

彼があの紙を見て私に会いに来てくれることを祈っています。

(20代女性・販売職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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