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「年上の人との会話ってつまらない(笑)」雑談が苦手な28歳へ。直木賞作家・小川哲が提案する“ゲーム感覚”のコミュニケーション術

  • 2026.9.16

CREA2026年秋号の「1冊まるごと人生相談」特集が、現在好評発売中! CREA WEBではその一部を抜粋してご紹介します。

日露戦争前夜から第二次世界大戦が題材の『地図と拳』や火星が舞台のSF『火星の女王』など、さまざまな時空の人間模様を描いてきた作家が、人間関係に悩む読者にアドバイス(全2回の1回目/)。


【相談】父親がどんどん偏屈になってきました

小川 哲さん。

【お悩み】
もうすぐ70歳になる父親が年々偏屈になってきています。それと同時に、会うたびに「老い」も進み、弱っていく姿を本人も私も受け入れられずにいます。ささいなことで喧嘩も増えました。今までは特別関係が悪かったわけでもなく、育ててもらった感謝の念も愛情もあるのですが……。「自分がこんな風に老いていくのが怖いのかも」と漠然と思ったりします。(37歳・女性・プーアル茶)

大学院を経てそのまま専業作家になった社会経験ゼロの僕みたいな若造が、他人の人生の相談を受けていいのか……といまだに悩み中です(苦笑)。ただ、「僕だったらこうする。こう考える」という話ならできる。参考になるかはわかりませんが、悩んでいる問題の捉え方を少し変えてみるきっかけにしてもらえたらな、と。

この相談に関して言うと、お父さんの老いも偏屈も、正面から受け入れられないのはごく自然なことだと思います。自分の知っている父親とはどんどん違う人になっていくのを見るのが辛い、という気持ちはすごく分かる。かといって、他者である自分がそれをどうにかできるものではない。そのことに関して、まず諦める必要があるかなと思います。

諦めたうえで、僕だったら父親が偏屈になっていく様子や老いていく姿を見て、自分が今後どうやって父親の年齢まで過ごしていくかの一つの指針にしますね。「データを収集する」って言うと冷たく聞こえるかもしれませんが、そういう関心の持ち方で接するのもありなんじゃないか。

僕自身がまさに、そうやって人生を設計してきたところがあるんです。うちの父親は、めちゃくちゃ偏屈なんですよ。家族とか知人は全員、彼に迷惑を被ってきたんです。親って赤の他人とは違って、その血が自分にも流れているじゃないですか。父を見ながら、もしかして自分も偏屈な人になってしまうんじゃないかという不安は子どもの頃からありました。だからこそ、父親の偏屈な部分とか嫌いだなと思う部分を観察して、勉強の素材にしてきたんです。

相談者さんにとってお父さんは、人は老いたらどうなるのかを一番間近で見られる存在。それを見せてもらえることで、老いへの心の準備ができるかもしれない。「データを収集する」モードになることの何がいいかと言うと、気がラクになるんですよ。今自分はこの人から学習をしていて、人間として大きくなっている最中なんだと感じられるようになる。対人関係における心の持ちようとしても、意外と汎用性が高いんじゃないかなと思うんです。

【相談】世代が離れた人との雑談が苦手です

小川 哲さん。

【お悩み】
職場でもご近所でも、世代が異なる方とコミュニケーションを取るのに緊張し、気を使って悩んでしまうことがあります。目的がはっきりしている場合はまだしも、雑談ってハードルが高いですね。個人差はあれど、世代ごとの特有さはあると思うのですが、それを上手につかむ方法があればいいなと思います。(28歳・女性・ローズのバスソルト)

相談者さんは20代なので、おそらく年上の方とのコミュニケーションの取り方に悩んでいるんだと思うんですが。正直、年上の人とのコミュニケーションってつまらないですよね。話は退屈だし説教くさかったりするし、相手のほうが立場が上なことも多いから、気を使うのはこっち側。相手を楽しませようとするのは疲れちゃうし、気を使われているなって相手にも伝わっちゃうから、さらに会話が薄っぺらくなっていく。

こういうとき、僕は「どうやったら自分はこのつまらない状況を楽しめるのか?」と考えるようにしています。

例えば相手が、20代女性からしたら一番退屈な、50代男性だとしましょう。まったく興味もないその人と、5分ぐらい話をしなければいけない状況になったとする。普通に考えると、地獄ですよね。その5分を、50代男性とコミュニケーションするやり方を鍛える時間と捉えてみるのはどうでしょうか。目の前にいる50代男性のサンプルからいかに面白い情報を引き出せるかというゲームが始まった、と考えてみる。

「あなたの世代の人って、どういう話をすると盛り上がりますか?」という質問はいいかもしれないですよね。「腕時計好きの中で、これを知っているとセンスがいいと思われるブランドってあるんですか?」とか。そこで引き出した情報を、次に繫げればいい。別のおじさんと腕時計の話になったら「その腕時計のことを話せばいいんだ」となるし、実際そんな機会は来なかったとしても、本当に好きなものとか熱中しているものについての話って、聞いていてそれなりに面白かったりします。

「どうやって相手を楽しませようか?」ではなく、「どうやったら自分が楽しくなるか?」。どんな人間関係でも、この発想を持っておくことは大事だと思うんです。

続きは「CREA」2026年秋号でお読みいただけます。

小川 哲(おがわ・さとし)

作家。1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年、『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。23年『地図と拳』で第168回直木三十五賞を、『君のクイズ』で第76回日本推理作家協会賞を受賞。9月30日に『オルロージュ』(講談社)が発売になる。

『屁理屈と哲学』

著者がこれまで執筆してきたあらゆるテキストから格言や寓話、アフォリズム、パンチラインのような印象的な文言を収集した“箴言集”。小川流の発想や哲学が開陳されている。

定価 1,320円(税込)
集英社

文=吉田大助 写真=平松市聖

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