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捨てれば「肥料になるプラスチック」を千葉大学が開発、分解物でコマツナが育った

  • 2026.9.15
捨てれば「肥料になるプラスチック」を千葉大学が開発、分解物でコマツナが育った
捨てれば「肥料になるプラスチック」を千葉大学が開発、分解物でコマツナが育った / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

弁当を包んでいたフィルムを丸めて捨てる。そのひとかけらは、たぶん自分より長く地上に残る。

プラスチックは長いあいだ、丈夫であることを目指して設計されてきました。

使い終えた後にどうなるかは、あまり考えられてきませんでした。

捨てられた分の多くは埋め立て地や野外に残り、海に出た分は細かく砕けた粒になって漂います。

ナゾロジーでは以前、スイスの土や水に年間200トンを超える微小なプラスチックが降っているという研究を紹介しました(スイスの土や水に年間200トン超の微小プラスチックが降る)。

千葉大学の青木大輔准教授らの研究チームは、使い終えた後に肥料へ変えられるプラスチックを開発しています。

今回は、その材料を柔らかくするための添加剤そのものを、使用後に肥料の成分へ変わるように設計しました。

引っ張って切れるまでに伸びる割合は4.3%から45.2%へ、10倍以上になりました。

できた分解物でシロイヌナズナとコマツナを育てると、市販の尿素肥料を使ったときと同じくらいよく育ちました。

確かめられたのは、この材料の組み合わせと、シロイヌナズナとコマツナでの結果です。

では、捨てたプラスチックは、どうやって肥料に変わるのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年8月18日に『Scientific Reports』にて発表されました

目次

  • 柔らかくする添加剤まで「肥料の成分」に変わる
  • コマツナは市販の尿素肥料と「同じくらい」育った

柔らかくする添加剤まで「肥料の成分」に変わる

柔らかくする添加剤まで「肥料の成分」に変わる
柔らかくする添加剤まで「肥料の成分」に変わる / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

材料の骨格になるのは、ブドウ糖から作られるイソソルビドという分子。

これをつないだプラスチックが、PIC(ポリイソソルビドカーボネート)です。

研究チームは以前に、このPICをアンモニアの水溶液で分解し、イソソルビドや尿素など肥料になる成分に変えられることを示しています。

アンモノリシスと呼ばれる処理です。

ただしPICは硬くてもろく、使える場面が限られていました。

もろい材料は早く壊れ、その分ごみが増え、作り直すために新しいプラスチックが要ります。

研究チームが作ったのは、同じイソソルビドを原料にした可塑剤。可塑剤(かそざい)は、材料を柔らかくする添加剤です。

これをPICに混ぜた。

すると、割れずに曲がるようになりました。

それでいて、アンモニアで分解して肥料に変えられる性質は保たれています。

可塑剤そのものも、使用後には肥料に合う成分へ変わります。

青木准教授は「私たちは、プラスチックの歴史における重大な転換点にいます」と話しています。

肥料として本当に働くのかは、植物を育てて確かめる必要があります。

コマツナは市販の尿素肥料と「同じくらい」育った

コマツナは市販の尿素肥料と「同じくらい」育った
コマツナは市販の尿素肥料と「同じくらい」育った / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究チームは、その分解物を肥料として植物に与えた。

使ったのは、研究でよく使うシロイヌナズナと、食用のコマツナ。

育ち方は、市販の尿素肥料を与えたときと同じくらいでした。

可塑剤を含む材料から作った肥料で食べられる野菜を育てたのは、今回が初めてです。

以前の研究では、可塑剤を含まないPICそのものの分解物で同じ考えを示すにとどまっていました。

柔らかくできたことで、フィルムや袋のような、しなやかさが要る製品にも広げられるかもしれない、と研究チームはみています。

挙げられているのは、包装、袋、育苗ポット、農業用のマルチフィルム。

ナゾロジーでは以前、温めると気体になり、冷ませばまた固まるプラスチックの開発も紹介しました(熱すると気化し、冷やすと固まる新型プラスチックを開発)。

確かめられたのは、可塑剤を含む材料の分解物で食用のコマツナまで育てられた、というところまでです。

作りたての状態では、PICと可塑剤の相性はよいと確かめられました。

ただし今の材料は、分子量も機械的な性質も、高い性能が求められる用途にはまだ不十分です。

長く置いたときの安定性や、可塑剤がにじみ出てこないかは、これからの課題です。

工程全体で環境やエネルギーの収支がよくなるかどうかも、まだ十分には評価されていません。

【これまでの研究】

プラスチックを肥料の原料と見る考えは、以前から試されてきました。

東京工業大学と東京大学などの研究チームは以前に、植物由来のポリカーボネートを化学的にリサイクルし、肥料の供給源にする考えを示しています。

そこではPICを、次世代のプラスチック再生の仕組みのモデルとして取り上げています(関連研究)。

東京大学と千葉大学の研究チームは、分解でできるイソソルビドそのものが植物に与える影響を調べています。

シロイヌナズナを濃度の違う培地で育て、地上部の重さや根の長さ、窒素の利用効率などを比べました。

イソソルビドを与えると地上部の重さが増え、窒素の利用効率が上がったと報告しています(関連研究)。

丈夫さを求めて作られてきた材料に、柔らかさと、使い終えた後の行き先が同時に組み込まれました。

弁当のフィルムが、次の弁当のコマツナを育てる日が来るかもしれません。

参考文献

Modern miracle? Plastic waste transformed into effective fertilizer (New Atlas)
https://newatlas.com/materials/plastic-waste-becomes-plant-fertilizer/

スイスの土や水に年間200トン超の微小プラスチックが降る(ナゾロジー)
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/199615

熱すると気化し、冷やすと固まる新型プラスチックを開発(ナゾロジー)
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/199001

Plastics to fertilizers: chemical recycling of a bio-based polycarbonate as a fertilizer source (Green Chemistry)
https://doi.org/10.1039/d1gc02327f

Novel role of isosorbide as a biostimulant in enhancing plant growth and development in Arabidopsis thaliana (BMC Plant Biology)
https://doi.org/10.1186/s12870-025-07248-5

元論文

Plastics to fertilizer: A polymer system based on isosorbide as a monomer, plasticizer, and fertilizer
https://doi.org/10.1038/s41598-026-63638-1

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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