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うつ病と経済的な悩みを抱えた夫婦が保護した、重い病気を持った子猫。この出会いが夫婦にもたらしたものとは? さまざまな困難を持つ人に寄り添うノンフィクション【書評】

  • 2026.9.13

【漫画】本編を読む

動物を家族に迎えることは、ただ「かわいい毎日」が始まるだけではない。特にその子に病気があれば、通院や投薬が必要になり、体調の変化に一喜一憂し、自分たちの暮らしが大きく変わっていく。『スローステップ朔太郎』(叶輝:漫画、朝待夜駆:脚本/KADOKAWA)は、病気を持つ一匹の子猫と飼い主夫婦が過ごした日々を描いたノンフィクションコミックだ。

漫画家の叶輝(かのうあきら)氏とパートナーの朝待夜駆(あさまちよかけ)氏の家には、以前から一匹の地域猫が遊びに来ていた。ある日、その猫が全身傷だらけでやせ細った小さな子猫を連れてくる。放っておけず保護した夫婦はその猫を「朔太郎」と名付け、病院で診察を受けさせる。しかし待っていたのは「猫エイズ」という重い病気の可能性だった。治療を続けているとさらに新たな問題が見つかり、病状に不安を抱える日々が続いていく。

そんな病気と闘いながら生きる朔太郎との日々を通して、朝待夜駆氏にも少しずつ変化が生まれる。数年前からうつ病を患って休職と復職を繰り返していたのだが、その状況から抜け出すために転職を決意し、自分にとって無理なく働ける環境を探し始めるのだ。地方移住という選択肢も視野に入れながら、自分たちらしい暮らしを模索していくふたりの姿から、朔太郎との時間が確かな支えになっていることが伝わってくる。

本書は終わりの見えない通院や治療、看病する側の不安や迷いも描いている。それでも、夫婦が朔太郎を愛おしみ、もともとは外で暮らしていた朔太郎がふたりに甘えて安心して眠る姿を見ていると、一緒に過ごす時間がどれほど温かく満ち足りたものであったか想像に難くない。

思い通りにならない現実に直面しながらも、そのとき自分たちにできることを選び、毎日を積み重ねていく夫婦と朔太郎。苦しさも喜びもまるごと抱えて進むふたりと一匹の歩みは、読み終えたあとには温かな余韻が残るだろう。本作は猫の闘病記にとどまらず、会社のことで悩みを抱えている人、限りある命との向き合い方に悩む人、または病気の家族を支えている人に寄り添う作品だ。

文=坪谷佳保

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