1. トップ
  2. エピソード
  3. お礼の文面をなぞるだけだった私が、文面集を閉じた理由

お礼の文面をなぞるだけだった私が、文面集を閉じた理由

  • 2026.9.13
ハウコレ

お客さまが席を立つと、私はいつも同じお礼の文面を開いていました。

共有された文面をなぞっていれば、間違えることはありませんでした。けれど、お客さまから届いた短い言葉を読んだあと、私はいつもの文面を何度も打ち直しました。

なぞっていれば、失敗しない

美容師になって2年目、担当としてお客さまを任せてもらえるようになった頃のことです。

お礼のメッセージについては、先輩たちが使っている文面を共有してもらっていました。

「本日はご来店いただきありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしております。」

施術が終わるたび、私はこの文章の最後に自分の名前を添えて送っていました。

私は昔から、自分の言葉を相手に送るのが苦手でした。共有された文面は、そんな私にとって便利な逃げ道でした。

話が弾んだ日ほど、書けなくなりました

映画の話で盛り上がったお客さまがいました。

最近見た作品の話から、好きな場面や結末の話まで続き、私もいつもよりたくさん話しました。

お客さまが帰ったあと、映画について少し書こうと思いました。

「あの作品、ぜひ見てください」

そこまで打って、消しました。結局、いつものお礼を送りました。

翌日、そのお客さまから、

「おすすめしてもらった映画、見ました」

と届きました。

本当は感想を聞きたかったです。それでも私はまた迷い、最後には、

「またのご来店をお待ちしております。」

と返しました。

テンプレートなら、そっけないと思われても「お店の文面だから」と考えられます。自分の言葉を書いて反応が悪ければ、それは私自身への反応になります。

いつもの文面では返せませんでした

しばらくして、お客さまからまたメッセージが届きました。

「テンプレートですよね。それならもう送らなくて大丈夫です」

私は共有されていた文面の一覧を開きました。

けれど、そこに今の状況へ使える言葉はありません。

お客さまが嫌だったのは、定型文そのものだけではなかったのだと思います。自分から映画の話を続けてくれたのに、私はそこにも店の言葉だけを返していました。

そして...

私は一覧を閉じて、自分で考えた言葉を送りました。

「すみません。自分の言葉で送るのが怖くて、先輩の文面をそのまま使っていました」

それから、

「あの映画、私も見返しました。あの終わり方、ずるいですよね」

とも送りました。

何度も読み返してから送信しました。

少しして、次回予約の通知が入りました。

今も、お礼を書くたびに迷います。毎回きれいな文章を書けるわけでもありません。

それでも、その日に話したことを少しだけ入れるようにしています。

(20代女性・美容師)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ