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「その指輪、外さないの?」と聞いた私に、彼が3秒黙ってから返した一言

  • 2026.9.13
ハウコレ

未練ではないと分かっても、私の中の嫌な気持ちは消えませんでした。最初に指輪のことを聞いたとき、3秒置いて返ってきたのは、「これは、外せないんだ」という言葉でした。

泡だらけの手の中で、彼の左手の薬指だけが銀色に光っていました。

「これは、外せないんだ」から先を、彼は足しませんでした

付き合って半年になる彼は、夕食の皿を洗うのが習慣になっていました。細い銀色の指輪は、出会ったときから左手の薬指にあります。シャワーのときも外さない。気にならないと言えば嘘になりました。

「その指輪、外さないの?」

軽く聞いたつもりでした。返事が来るまでに、たっぷり3秒ありました。彼は蛇口を止めて、指輪をはめた左手を先にタオルで拭きました。

「これは、外せないんだ」

「誰かにもらったの?」

「昔の話だよ」

それ以上、彼は何も言いませんでした。私もそこで引き下がりました。

3年前の写真にも、同じ指輪が写っていました

引き下がったのは、その場だけでした。彼が帰ったあと、私は彼のSNSをさかのぼりました。2年前の投稿にも、同じ指輪が写っています。相手は写っていません。写っていないぶん、私の想像だけが増えました。

それからの私は、彼の言葉尻を数える人になりました。友人の名前が出れば男か女かを確かめて、見せられた写真は端のほうを拡大して。安い銀色の指輪を買って、自分の左手の薬指にはめて見せたこともあります。彼は「似合うね」とだけ言いました。

そんな聞き方を2週間ほど続けたころ、私の口から用意していない言葉が出ました。

「外して。無理なら、理由を聞かせて」

「そこまで口出しされること?」

先に返ってきたのはそれでした。

未練じゃないならいい、とは思えませんでした

そのあと彼は指輪を抜いて、テーブルに置きました。

「3年前に、ペアで2つ買ったんだ。片方は渡せないまま、今も引き出しに残ってる」

当時付き合っていた人に渡すつもりで、彼が1人で選んだものだそうです。重いと思われるのが怖くて渡す日を延ばしているうちに、関係が終わった。渡せなかった片方は箱のまま引き出しにしまい、関係が終わったあとに自分用のほうだけを指にはめ、次は言い出す前に諦めないための戒めにしていたと言いました。

未練ではなかった。それでも、私が言ったのはこれでした。

「未練じゃないならいい、とは思えない」

「俺にとっては、もう元恋人の物じゃない」

「でも、その意味を決めたのはあなただけでしょ」

彼にとっては自分への戒めでも、私から見れば元恋人とペアになるはずだった指輪です。同じ1つの指輪の意味が、私たちの間で最後まで揃いませんでした。

そして...

「捨てなくていい。でも、今付き合っている私の前で左手につけ続けるのは嫌」

私がそう言うと、彼はしばらく指輪を見ていました。

「そこは分けて考えてなかった」

指輪は今も彼の引き出しにあります。ただ、左手の薬指にはもうありません。処分してほしいとまでは言いませんでした。そこまで求めるのは違う気がしたからです。

引き出しにあると知っていて平気かというと、平気ではありません。それでも、平気ではないと口に出せたぶんだけ、前より楽になりました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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