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100年間引きこもっていた吸血鬼が東京で婚活!? 愛する人々を見送り続けた男が「永遠の片割れ」を探す、笑いとともに切なさを描いた物語『かわたれ、かたわれ』!【書評】

  • 2026.9.7

【漫画】本編を読む

『かわたれ、かたわれ』(糸井のぞ/新潮社)は、長い間森に引きこもっていた吸血鬼が、100年ぶりに外の世界へ飛び出し、東京で「永遠の片割れ」を探すヒューマンコメディ。永遠の命を持つ吸血鬼にとって、人間との出会いにはいつか必ず別れが訪れる。そんな切なさを抱えながら、婚活や家族との交流に奮闘する姿をコミカルに描いた作品だ。

主人公は吸血鬼のヤスパース。ある出来事をきっかけに、永遠に変化することのない「霧の森」に引きこもって暮らしていた。しかし、長い年月の中で、愛犬も自分を世話してくれた執事も亡くなり、ヤスパースは孤独に耐えられなくなってしまう。そんな彼の前に現れたのが、かつて森を出て「外」の世界で暮らしていた妹・アビだ。彼女に連れられ、ヤスパースは100年ぶりに森を出て、東京・清澄白河で新しい生活を始めることになる。

そこで待っていたのは、現代社会への適応するための日々と、「婚活」だ。長い間世間から離れていた吸血鬼が、現代の東京で右往左往する姿はなんとも愛らしい。しかし、そのコミカルな日常の奥には、永遠に生きる者だからこその孤独が常に横たわっている。人間とどれほど深く愛し合ったとしても、相手はいつか年老いて死んでしまう。愛する存在を何度も見送ってきたヤスパースにとって、誰かを愛することは、新たな別れを受け入れることでもあるのだ。

ヤスパースは、そんな自分と永遠をともにしてくれる「片割れ」を求めて、人とのつながりを取り戻そうとしていく。そうして出会うのが、不思議な雰囲気をまとった女性・陽だ。ふたりの不器用なやりとりを見ていると、「誰かと一緒に生きる」とはどういうことなのかを考えさせられるだろう。

永遠の命と聞くと、誰もが一度はあこがれるものだ。しかし、自分だけが変わらず、周りの人たちが次々と先に逝ってしまうとしたら、それは幸せといえるのだろうか。本作は、吸血鬼の婚活というユニークな設定をベースにして、愛することの喜びと別れの悲しみ、そして誰かと人生をともにすることの尊さを描いている。読み終えたあとには人恋しくなる、大人のためのコメディだ。

文=練馬麟

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