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真面目な父が突然失踪して1週間後に帰宅。しかし母は何も問い詰めなかった。「普通」だと思っていた家族に隠されていた真実とは?【書評】

  • 2026.9.7

【漫画】本編を読む

『わたしは家族がわからない』(やまもとりえ/KADOKAWA)は、どこにでもいそうな三人家族が持っていた違和感を描き出すミステリー仕立てのヒューマンドラマで、「家族とは何か」という問いを読み手に突きつけてくる作品だ。夫婦、親子、そして「普通」という言葉の危うさが静かにあぶり出されていく。

物語の舞台は、役所勤めの真面目な父、「普通がいちばん」が口癖の母、そして活発な娘が暮らす平凡な家庭。しかしある日、父が何の前触れもなく1週間失踪。戻ってきても母はその出来事をなかったことにして生活を続ける。数年後、中学生になった娘は、家から離れた場所で父の姿を何度も見かけたという話を耳にし、封じられていた過去と向き合うことになる。なぜ父はあのとき消えたのか。母はなぜ問いたださなかったのか。その謎が、物語に張りつめた緊張感を与えている。

本作の怖さは悪人が登場しないところにある。誰もが少しずつ本音を飲み込み、波風を立てないように沈黙を選ぶ。その日常の積み重ねが、気づかぬうちに家族を壊していく。暴力や大事件ではなく、会話の欠如や見て見ぬふりが関係を蝕んでいくという描写は、きわめて現実的で胸に刺さる。

そして「普通」という価値観への懐疑的な視点もポイントだ。世間が思う幸せな家庭像にしがみつくほど、本当に必要なコミュニケーションや相互理解は遠ざかっていくのだ。外から見れば穏やかな家庭でも、その内側では誰かが孤独を抱えているかもしれない。本作は、そんな見えにくい家族の歪みを描き出す。

家族だからといってわかり合えるとは限らないし、わかろうと努力しなければ距離ができてしまう。そんな当たり前だが難しい真実を本作は鋭く突きつけてくる。読み終えたあと、「自分にとって家族とは」と考えずにはいられなくなるだろう。

文=馬風亭ゑりん

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