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朝ドラ【風、薫る】直美(上坂樹里)が再び向き合う因縁…寛太(藤原季節)の“金儲け看護”と腐れ縁の行方

  • 2026.9.7

朝ドラ【風、薫る】直美(上坂樹里)が再び向き合う因縁…寛太(藤原季節)の“金儲け看護”と腐れ縁の行方

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

藤次(中村倫也)がこの先何かを起こすか、気になるところだ

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる著・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』の第23週「歩々清風」が放送された。

まずこのサブタイトルにある「歩々清風」とはどういう意味なのか。タイトルにある歩々清風は、「歩々清風起」という、一歩一歩進むうちにいつしか清らかな風が吹いてくるという禅語からの引用と思われる。その風は自身ばかりでなく、周りにも影響を与えていくものへとなるということだ。はたして二人の主人公の歩みは清々しい風を吹かせることができたであろうか。

物語上の時計の針は何度目かのスキップを迎え、りん(見上愛)の母、美津(水野美紀)はこの世を去り、娘の環は女学校に入学後、最上級生となり、瀧七海が演じるところとなった。直美(上坂樹里)の息子、明(開原律)も5歳となりやんちゃざかりだ。

「これからの看護婦を、あなたたちに託します」
そんな言葉を残し、捨松(多部未華子)はりんと直美にこれからの看護の世界を託し、一線から退いた。

りんと直美が取り組んだ派出看護婦会は、恵風看護婦会以外にも増え始め、気軽に看護を受けられる環境が整ってきたようでありながらも、素人同然だったり、高額を請求したりするなど質の悪い派出看護婦会も出現し、広がりをみせるなりの問題も見受けられるような玉石混交の状態も生まれ、りんたちの恵風看護婦会もそれらと混同されたりする風評被害を被ることもあったりする状況だ。

かつてりんたちが正式な教育を受けたトレインドナースの第1号として働きはじめたころに病院で乏しい知識のまま患者の世話をしていた看病婦の存在も思い出されるが、これは悪質な存在であることが大きな問題だ。

新たに乱立する看護婦会のひとつである親和会を取り仕切っていたのが、直美との因縁も深い寛太(藤原季節)だった。
「看護は今、儲かる」
直美に向かって寛太はそう言った。寛太の視点では、看護は流行のビジネス、金になる職業である。かつて詐欺師として世を渡ってきた寛太らしい鼻の利かせ方であるが、これは「清風」とは違う。正論で咎める直美に、
「パンは分け合うのが教会の教えだろ」
と悪い意味で「うまい」言い回しをするところも、直美の人生において壁になったりときにはアウトローなりの力となったりする腐れ縁らしい。

この状況を打破するために、直美が思い出したのが、かつて赤痢が新潟で流行した際に自身も罹患し、直美たちの看護を受けた内務省の藤次(中村倫也)の存在だ。当時受け取った名刺を探し出し藤次のもとを訪れたところ、
「適切な看護を受けることが回復につながることはわかっている」
と理解する姿勢をみせ、調査を約束した。しかし、実際にはこの状況を内務省は把握しており、すでに動いていた。直美たちへの言葉と実態との〝ズレ〟のようなものがこの先何かを起こすかどうか、気になるところである。

しのぶという存在は本作の重要な柱のひとつである

そして、看護婦会の乱立と質の問題によって生じる歪みを表す場面で、セツ(村上穂乃佳)の存在を持ち出してきたところに、展開のうまさを感じる。寛太の親和会をふたたび訪れたところ、そこにいたのがセツだった。セツはかつてりんたちが看護した元女郎の「夕凪」であり、がんばって生きていくことを宣言したのだが、ここで資格を持たない看護婦として再会するという皮肉。看護の教育を受けず、当然知識もないセツは、患者に適切な処置を施すことができないこともある。

しかしそんなセツを、りんたちは責め立てたりしない。セツの患者が急変した際にりんが駆けつけ事なきを得たところ、セツが水を与えたことで軽い脱水症状ですんだという言い方をする。この件によって、あらためてセツは看護は患者の命に関わる仕事であることに向き合う。そして、何も学んでいない自分は辞めたほうがいいと考える。

しかし、りんたちはそんなセツに、恵風会で働かないかと声をかける。そう言われたセツは、
「私はあなたちとは違う」
と断る。字も読めず看護を学んでもいない自分には無理だというのである。そこに割って入ったのが、しのぶ(木越明)である。しのぶはもう一度一緒に働きたいと、恵風会の一員となり、りんと直美にとって頼もしい存在となっていた。しのぶはセツに言う。どんな女性でも生きていればいろいろなことがある。しかし、それを跳ね返していかないと、いつまでも女の立つ瀬がないとセツに語りかける。

これまでに何度も示してきているが、この作品で描かれる明治時代は、働く女性という存在自体が、男性と肩を並べるようになるよりはるかに前の時代である。そんな時代に働く女性の地位を築いていくことを目指した女性たちがいた。時代背景を考えればとても厳しい環境だったことは明らかである。しかしそれを実現するためには小さなことをひとつひとつ積み重ねていかなければならない。これこそが「歩々」、一歩一歩の小さな歩みである。そしてそれは、しのぶの言葉を経て、セツの心に清風を吹かせることとなる。

「つらいご身分を盾にやさぐれて……もったいない」
絶妙な言い回しである。自分だけがつらいわけではない。自分もりんも直美も、それぞれの事情を抱えながら、血のにじむ思いをして看護を学び、看護婦になったのだと。それを自分の境遇を理由にあきらめてしまうのは違うのではないかと気づかせてくれた。セツにだって、学がなければそれでできることがある。りんや直美ばかりでなく、セツにとってもやはり光を与えてくれるしのぶという存在は本作の重要な柱のひとつであることを実感させてくれた。

正しい道を、一歩ずつ、着実に進みながら現在を築いてきたりんたちが起こす風は、さらい清々しい空気をもたらせてくれる。そう信じられる今週であった。

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