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家柄だけでも実力だけでも通用しない! 複雑な小学校受験に挑む保護者たちの葛藤【著者対談】

  • 2026.9.6

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「小受」。就学前の子どもたちが、名門小学校への入学を目指す小学校受験のことだ。未就学児たちの進学塾とも言える幼児教室の送迎や、親子揃っての面接など、保護者がかかわるタスクの多い小受は、家族全員にとっての戦いでもある。しかし、中学受験や高校受験に比べると受験者は少ないため、小受とはどんなものなのか詳しく知る人は多くないだろう。

『君の背中に見た夢は』(外山薫:原作、たちばな豊可:漫画/KADOKAWA)は、そんな小学校受験に挑む家族の物語である。「子どもの将来の選択肢を増やせるのは自分だけ」という責任を感じながら、仕事との両立や夫との関係で葛藤する母親・茜の姿は共感必至だ。

原作小説の著者であり、慶應義塾大学出身という経歴を生かして教育分野での発信を続ける作家の外山薫さんと、3人の子どもを育てながら漫画家として活躍するコミカライズ版の著者・たちばな豊可さんのふたりに、本作に込めた想いや制作の裏話について伺った。

※個人の体験、お話をもとにインタビューを行っています。ご了承の上お読みください。

——小学校受験を考えたときに「我が子はお受験に向いているのか」「うちの家族は子どものお受験に耐えられるのか」と考える人も多いと思います。お話の中では、主人公の娘・結衣がお受験に向いていることがわかり、母親である茜が小学校受験に没頭していく…という流れが描かれていました。

外山薫さん(以下、外山):茜の娘の結衣ちゃんは運動も得意で物怖じせず、頭の回転も早いお受験向きな子なんだけれども、小学校受験は本人の能力だけで合否が決まるものじゃないところをしっかり描きたくて。娘はすごくできているのに私はちゃんとできているだろうか、私のせいで娘が不合格になってしまったら…と悩む、母親の苦しみを表現したいと思いました。

ちなみに、小受経験者からは「結衣ちゃんみたいに素直な子はいないよ」と言われます。実際には親と子どもの衝突が結構あるらしくて。

お受験って知れば知るほど不条理な世界だなと思うので、個人的には無理かなと思ってしまいます。たとえば、中学受験って偏差値とペーパーテストだけですべてが決まるから、ある意味すごくフェア。家柄なんかは一切問われない。最近の大学入試で流行っている推薦入試では、能力だけじゃなくてバックグラウンドが問われますけど。

小学校受験では、問われるバックグラウンドが本人だけではなく家族にまで拡大されて、家柄や母親の献身性なども課題になってくる。女性の社会進出が当たり前の時代に、「母親がどれだけ子どもの教育に手をかけているか」みたいなことを問われるところなんかは時代錯誤だと思いますし、傍から見るとそのギャップが面白いなと感じます。

——茜のママ友として登場するのは、子どもをお受験させることが生まれつき決まっているような富裕層の麗佳や、事業で大成功した資産家の妻である寛子。彼女たちは専業主婦で、お金も時間もたっぷりお受験に使えるような人たちです。そんなふたりにも悩みや葛藤があって、コミカライズ版ではそれがオムニバス形式に近い形で描かれていました。

たちばな豊可さん:コミカライズ化が決まったあとの打ち合わせで、外山先生から小説に入りきらなかった麗佳や寛子のバックボーンをお聞きして、そこを広げたいね、という話になったんです。

表向きはキラキラして完璧そうに見えるふたりにも、実は深い悩みがある。漫画では「小受の成功例を見せる」というよりは、「いろんな家庭の姿があるし、子育てにはいろんな正解があることをテーマにしたいよね」と。

外山:コミカライズ版で彼女たちそれぞれの悩みや選択が描かれたことで、物語に深みが出たなと思いますね。3人のお母さんの人物像は、お受験の経験者や幼児教室の先生を取材する中で作っていきました。取材ではパワーカップル(夫婦の双方がともに高い収入を得ている共働き夫婦)の話がよく出ていたので、主人公の茜は高収入のワーママに。

麗佳の嫁ぎ先のモデルは、家族が歴代、慶應義塾幼稚舎に通っているというご家庭。その家庭では“幼稚舎あらずんば慶應にあらず”みたいな価値観があるらしく、お嫁さん(大学から外部生として慶應に入った)は玉の輿に乗ったはいいけどすごく大変な思いをしたそうです。ただ、そのままだと名門大学出身の茜と属性がかぶるため、物語の中では麗佳の実家もお金持ちで名門校出身という経歴に変えました。

寛子は新興のお金持ちのご家庭の話を参考にしました。彼女らはなんとなく名門校のブランドに惹かれて子どもを有名小学校に入れたがるんだけど、お金持ちの間でもヒエラルキーがあるようで…。

普通に生きていたら全然視界に入ってこないけど、話を聞いたら興味深い部分をフィクションの要素として入れていきました。

取材・文=吉田あき

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