1. トップ
  2. エンタメ
  3. 【ネタバレ有り解説】氷河期世代目線で語る『スワロウテイル 4Kリマスター』が超傑作な理由

【ネタバレ有り解説】氷河期世代目線で語る『スワロウテイル 4Kリマスター』が超傑作な理由

  • 2026.9.6

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、ネタバレ上等な私見&本音でおすすめしますよ〜。

よしひろさん、「きのう何観た?」 『スワロウテイル 4Kリマスター』

story 世界最強の通過・日本円を求め、移民たちが急増したイェンタウン。母を亡くした少女(伊藤歩)は娼婦グリコ(Chara)に引き取られアゲハと名付けられる。彼女はひょんなことで見つけたカセットテープによって、中国系マフィアに追われることに。
監督・脚本:岩井俊二/出演:三上博史、Chara、伊藤歩、江口洋介、アンディ・ホイ、渡部篤郎、山口智子、大塚寧々、桃井かおり ほか/配給:ポニーキャニオン/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
© SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE

傑作と呼ばれる理由のために昔話しますわ

大好物映画が4Kリマスターされたので、さっそくおかわりしました。っていうか、何度観たかしらんけど、『スワロウテイル』です。観るだけじゃなくて、主題歌の「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」と劇中歌の「マイ・ウェイ」もカラオケしまくったわ(観ると歌いたくなるのよね)。1996年の映画だから、知らない、観たことない、っていう方も多かろうと思います。岩井俊二監督が「巨匠」と呼ばれるゆえんとなった作品なんですよ〜。
 

とんでもなく照明暗いシーンが多いだけに、4K化はありがてぇ!

アラフィフ世代以上が今観ると、「あー、バブルが弾けてなかったらこうなってたかもね」っていう世界。お若い世代が観ると「なにこの異世界!」になるはず。物語はググってくで。さんざんこすり倒されているから。ここではこの映画が公開された当時、どういう時代でどういうマインドを持っていたかをお話します。そうすると、傑作の理由も分かるから。
 
実際には短かったバブル経済期間(1986〜91年)なので、この映画が公開された1996年はとっくにバブルが弾けて超不景気……と思うでしょう。ノンノン。違ったんですよ。知識だけでご存じの方にはピンとこないかもしれませんが、少なくとも20世紀の内は、その名残がムンムン残ってましてな。もちろんジュリアナや六本木のディスコはとっくに姿を消し、DCブランドブームも廃れ、不動産が大暴落して地上げ屋も来なくなり(ちなみにバブル期にあった地上げのトンデモ話はガチです)、分かりやすい景気のよさみたいなのはなくなってたんだけど、ふんわりと「近いうちに景気は戻るでしょ」みたいな期待感があったの。だから、『スワロウテイル』のイェン・タウンみたいに、出稼ぎの移民が増加した多国籍多文化の街のイメージが湧きやすかったのね。ぶっちゃけ上野あたりがそれに近い感じになってましたしね(中国語系ではなく中東系だったけど)。

しかも、今からすれば96年ってちょうど就職氷河期が始まったころ(急に求人がなくなった、という感じで当時は分かりませんでした)。この後、30年以上続く経済停滞期、いわゆる「失われた時代」とロストジェネレーション誕生につながるとは思ってもみなかったわけで。だもんで、この映画を当時観た人は、「好景気よ再び!」みたいな期待感とノスタルジーが入り乱れた感情になった方が多かったの。

ご覧ください、撮影時15歳だった伊藤歩さん。流暢な英語セリフで「英語圏育ち?」って思っちゃったわ。

グリコやアゲハが生活してたスラムや、アゲハがタトゥを入れる闇医者クリニックがある阿片街などなど、やりすぎ感ある設定はさすがに映画でしかありえねーだろ、とは思うものの、それがファンタジーには見えなかったのよね。なんせ東洋一の無法地帯と言われた香港・九龍城(『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』の舞台)が取り壊されてすぐくらいだったから、想像に易い微妙な距離感。
 
と、昔話をつらつら言ってますが、こんな時代だったからこそ『スワロウテイル』は、現実にかなり近いファンタジー、かつ「こうなっても悪くないし面白いかも」というちょっとした期待感もあったのよ。一見すると絶望的に治安の悪い舞台設定で物語も全員は幸福になれないデスゲーム抗争ものだけど、バカみたいに景気がよいところって、人が「バカになる」のよ。だって、景気のよさが名残どころか一般庶民には届いていないバブル崩壊直後の90年前後って無茶苦茶だったんだもん。それをめちゃくちゃ静観して、オリジナルの舞台とストーリーにして、映像にまでしちゃったから、岩井監督スゲー。改めて4Kの精細映像&音響で観ると、スクリーンデビューにして主演の伊藤歩さんのイノセント芝居と歌姫CHARA様による「マイ・ウェイ」が抱える意味が重いわ!

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ