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服からジュエリーまで“サステナブル”は当たり前?次世代デザイナーが描くファッションの未来

  • 2026.8.27
Alicja Bokina, Ben Mönks, BUZIGAHILL, Celine Witon, Harry Miller, luciesphoto, malaikaraiss, RenéLohse, societe__angelique

デザイナーたちのクリエイティビティとサステナビリティの両立を後押しすることが特徴のベルリン・ファッションウィーク。2027春夏シーズンのサステナビリティ体制はさらにパワーアップ!

「クリエイティビティとサステナビリティは本当に両立できる?」「これからのファッション業界はどうあるべき?」など、デザイナーとドイツ・ファッション協会CEO スコット・リピンスキーさんにインタビュー!

年々、進化を遂げるベルリン・ファッションウィークとは?

Ben Mönks, Celine Witon, FlorianReimann

「自由・包摂性・多様性への責任あるムーブメント」を掲げるドイツ・ファッション協会が主催する、ベルリン・ファッションウィーク。7月に開催された2027年春夏のランウェイショーの数は53、サイドイベントは62と開催規模は年々拡大傾向にある。

今シーズンの大きなトピックの一つは、参加ブランドに対しコペンハーゲン・ファッションウィークと同等のサステナビリティ要件を満たすことを初めて必須化した点だ。では、サステナビリティ要件とは具体的にどのような内容だろうか。

必須化されたのは、以下の例のようなブランドの戦略策定からショーの運営にいたるまでの6分野19項目。そのなかには小規模ブランドが免除の対象となる要件も一部ある。これらの他に努力目標である追加要件も合わせると、参加ブランドが対応を迫られるチェック項目は全部で約120項目にものぼる。

【サステナビリティ要件の例】
・修理可能性やリサイクル可能性を踏まえたデザインを取り入れること
・コレクションの最低60%以上が認証済み素材やデッドストックの生地で構成されていること
・組織体制において多様性とインクルージョンを促進するためガイドラインや体制を整備すること
・ショーでは使い捨てのプラスチック包装を使用しないこと など

こうした体制強化がデザイナーたちのクリエイティビティにどう影響するのかは、気になるところ。

徹底したゼロウェイストな服づくり

ブランド「ナターシャ フォン ヒルスハウゼン」デザイナーのナターシャさん(左)。2027春夏のコレクションはプレゼンテーション形式で披露された(右) Natascha von Hirschhausen

最低要件をクリアしたうえで、デザイナーそれぞれが重要視しているポイントはさまざま。例えば、「ナターシャ フォン ヒルスハウゼン(Natascha von Hirschhausen)」のデザイナー ナターシャさんが表現しているのは、徹底したゼロウェイストな服づくり。

ファッションは“1+1が3以上”になり得る

「私はもともと物理学を専攻していましたが、途中からファッションに転向しました。物理学では1+1は常に2ですが、1+1が3以上になり得る業界に移りたかったからです。私がつくったコートの一つは、分解してスカートとジャケットとして着ることができたり、ジャケットの袖も調節できたりと、まったく違う着方が可能。一着で何通りもの組み合わせがあり、長く楽しめるようになっています。

ゼロウェイストの鍵はデザイン。そう思い、私は型紙(パターン)のカッティング方法も独自に考えました。その結果、コレクション全体の廃棄物は生地全体の1%未満に抑えられています」(ナターシャさん)

一着のスーツから出る余りの生地はイヤリング一つ分におさまる程度(左)。コートはパーツがボタンでつながっていて、トップスやボトムスとしても着用できるなど何通りも楽しめる(右) Hearst Owned

「この技術を他ブランドに共有することも大事にしています。ファッション産業から出る生地や糸をはじめとする廃棄物の量はとても多く、環境汚染に加担している大きな産業の一つ。こうした業界の課題を解決するためには多くの人が変わる必要があり、私が一人でやるよりもみんなで取り組めば大きなインパクトを生み出せるはずだからです」(ナターシャさん)

多様なモデルから発信されるメッセージ

「フルシェ」2027春夏のコレクションに登場した木彫りのボディス(右)。デザイナーのフランク・アグノさん(左) James Cochrane

ランウェイショー上でもサステナビリティへのメッセージは色濃く映し出されていた。今シーズンのベルリンを象徴していたのは、“自分らしさ”の多面性をひもとくコンセプトの数々。サステナビリティ要件の必須化も追い風となり、近年の世界的な多様性減退のトレンドを覆すように、人種や年齢はもちろん、低身長のモデルや、前回はあまり見られなかったプラスサイズモデルが堂々とランウェイをかっ歩した。そのなかでもコレクションテーマを“多様な美の探求”と掲げたのは、今回ベルリンでランウェイデビューを果たした「フルシェ(FRUCHÉ)」だ。

デザイナーのフランク・アグノさんは「一般的な美の基準とは異なるさまざまな形、サイズ、肌の色をした身体を称賛することをテーマにしています。例えば、コレクションの一つである木彫りのボディスは、完璧なバストや腹筋、左右対称といった非現実的なものではなく、できる限り自然なプラスサイズの身体をリアルに表現しています」と、服を通して自分の身体とどう向き合うかを問いかける。

「クララ コレット ミラモン(<a href="https://www.claracolettemiramon.com/" target="_blank" rel="nofollow">CLARA COLETTE MIRAMON</a>)」は、社会が押し付ける女性像にあらがい自立した強さを称賛(左端)。単一のイメージを拒絶しメキシコの複合的なアイデンティティを提示する「バラガン(<a href="https://barragannnn.com/" target="_blank" rel="nofollow">BARRAGAN</a>)」は、コレクション名である「SS30」に、アメリカのドナルド・トランプ大統領の現在の任期が終了すると予測される時期(2030年)の、政治的かつ象徴的な時間枠を直接的に表現した(左から2番目)。「ウィリアム ファン(<a href="https://williamfan.com/" target="_blank" rel="nofollow">WILLIAM FAN</a>)」(左から3番目)や「マリー ルイーズ ミュラー (<a href="https://marielouisemueller.com/" target="_blank" rel="nofollow" data-vars-ga-ux-element="Hyperlink" data-node-id="56.1"><u>MARIE-LOUISE MÜLLER</u></a>)」(右端)のランウェイにおいても人種や年齢、体形の多様なモデルたちが登場した Boris Marberg, James Cochrane, WILLIAM FAN
「フルシェ」の2027年春夏のコレクション Alicja_Bokina

サステナビリティは、枠にとらわれない服づくりのチャンス

「手織り布“アソ・オケ”や染め技術“アディレ”など、母国のナイジェリアには地域ごとに多様な織物や染め文化があり、コレクションにそれらを取り入れています。

私のような若手デザイナーにとってサステナビリティは決して安価なものではありません。素材調達も制作もすべてナイジェリアの地元で実施することにこだわっていますが、それには時間もお金もかかります。それでもこのアプローチを続ける理由は、枠にとらわれずに地元で見つけたもので工夫して服をつくるという“クリエイティビティの挑戦”を与えてくれるからです」(フランクさん)

いまの時代に選びたいジュエリーとは

アフリカの鉱山における深刻な人権問題への危機感を原点に持つ、ベルリン発のジュエリーブランド「イン ジュエルズ(<a href="https://www.in-jewels.com/?srsltid=AfmBOorBpwtxe-K0xlduv4e4i-Re6aEaOIZ5HDQSFXpZiHusmFNxB8Ya" target="_blank" rel="nofollow">InJewels</a>)」。デザイナーのステラさんは古いジュエリーや電子機器などから回収された貴金属のみを原料にデザイン。家族から受け継いだ形見やクローゼットで眠る貴金属を、新しい結婚指輪や現代的なジュエリーへと生まれ変わらせるサービス「<a href="https://www.in-jewels.com/pages/bridal-mymetal-familiengold" target="_blank" rel="nofollow">MyMetal</a>」も展開している RenéLohse

スタイリングの仕上げとなるジュエリーも“かわいい”、“美しい”という価値を超えて、その生産背景にある物語にまで共感して選びたくなる、いまの時代にふさわしいブランドたちが登場。

ブランド「マライカライス」のプレイフルな色使いの服を際立たせたビーズイヤリング(右)。デザイナーのマライカさん(左) malaikaraiss, MarcKrause

「マライカライス(MALAIKARAISS)」のコレクションで存在感を放ったビーズイヤリングは、その一つひとつがすべて手作り。他のジュエリーラインも含めて、可能な限りドイツ国内で製造。国際団体である責任あるジュエリー協議会(Responsible Jewellery Council)が定めた認証を取得したサプライチェーンと連携している。さらにジュエリーラインで使用されている金属および素材の割合も公表し、主にリサイクルゴールド(35%)やリサイクルブラス(30%)、リサイクルシルバー(13%)などリサイクル素材選びを心がけている。

サステナビリティの取り組みについて聞くと、「今シーズンに注力したことは、これまで取り組んできたことをすべてを文書化し、それをお客さんや公にオープンにすること」と、デザイナーのマライカさんは笑顔で答えた。

malaikaraiss

取り組みが不完全であってもいい。真摯に努力している姿をオープンに

「私のブランドサイトでは、製品に関するすべての情報を可能な限り公開しています。私たちがまだ十分な基準に達していないサステナビリティの部分についても正直に公開しています。

こうしたオープンなコミュニケーションは大企業であればあるほど難易度が高くなっていますが、少なくとも私たちはオープンであるべきだと思っています。取り組みが不完全であってもいい。それでも真摯に努力しているヒーローのような存在を目指すべきではないでしょうか」(マライカさん)

伝統文化と融合する一着

輸送距離を短くし、CO2排出量の削減を目指すことも、環境に負荷の低い素材を選ぶことも、もちろんサステナビリティの重要な要素。ただそれだけにはとどまらない、社会的な付加価値をもたらすデザイナーのアプローチにも注目したい。

ブランド「ブジガヒル」デザイナーのボビー・コラドさん(右)。刺しゅうが施された2027年春夏コレクションの一部(左) HarryMiller, ken.dumevi

「ブジガヒル(BUZIGAHILL)」のブランドコンセプトは「Return to Sender」。欧米から送られてきた古着をウガンダで解体・再構築し、再び“送り主”である先進国へ送り戻すという意味だ。ウガンダやケニアなどの国では、欧米のような先進国から着られなくなった大量の古着が輸入され、廃棄処分や国内繊維産業に悪影響を与えている。パリの「メゾン マルジェラ」と「バレンシアガ」で経験を積んだデザイナーのボビー・コラドさんは、そのような現状から着想を得たという。

“制約”と“クリエイティビティ”は表裏一体

「最初は、古着だけを材料に服をつくることに限界を感じていました。ですが、チームとともに新しいデザインの仕方を考え抜き、いまではこれ以外の方法で服をつくることは考えられないくらいになりました。“制約”と“クリエイティビティ”は表裏一体。先進国で“過剰さ”が引き起こしている現在の混沌を見れば、それは明らかです」(ボビーさん)

南スーダンの伝統刺しゅう“ミラヤ”を受け継ぐ女性難民たち(上)。一つひとつ女性たちの手作業で完成される刺しゅう文字(下) BUZIGAHILL, Nora Lorek

「私たちはいつも伝統的な職人技を私たちのアップサイクル技術に融合させる方法を探しています。『ザ ミラヤ プロジェクト(The Milaya Project)』というNPOとのコラボレーションを通じて、南スーダンの伝統刺しゅう“ミラヤ”を受け継ぐ女性難民に手仕事を依頼。彼女たちの収入源の一つになっているこのパートナーシップは、私にとって最もやりがいの感じられるものになっています。

刺しゅうの中には完成までに3日程度かかるものもありますが、こうした時間をかけることには美しさがあります。『ブジガヒル』の服も効率化できない情熱を込めた作業の積み重ねで完成するものだからです」(ボビーさん)

チーム・ベルリンで目指す、サステナビリティ

「通過点」——。サステナビリティを根幹に据えるデザイナーたちにとって、今回必須化された要件は、そのような位置づけかもしれない。

「ソシエテ アンジェリーク(<a href="https://www.instagram.com/societe__angelique/" target="_blank" rel="nofollow">SOCIÉTÉ ANGELIQUE</a>)」の服のタグにはQRコードがついており、どこで作られ、どこから来たか、素材の出どころがわかるようになっている societe__angelique, luciesphoto

ただし、すべてのブランドの取り組みが完璧であるわけではなく、また一度要件をクリアすればそこで終わりというものでもない。サステナビリティ要件は排除のためのルールではなく、ブランドの成長を促すための指針だ。つまり、デザイナーたちは要件と照らし合わせて、現在の立ち位置を確認しつつ、次にチャレンジするサステナビリティの目標を明確にし、それぞれに成長していく。その目標が環境負荷の低い包装材の選択になるブランドもあれば、トレーサビリティの確保になるブランドもあるというわけだ。

また、一からサステナビリティ要件の対応を進めてきた小さいブランドもあれば、海外進出に向けて生産規模が今後拡大していくブランドもあり、成長フェーズによってもサステナビリティへの挑戦は変わってくるだろう。こうしたブランドそれぞれの挑戦を支えるためには業界全体として取り組むのが鍵だと、ドイツ・ファッション協会CEOのスコットさんは話す。

ドイツ・ファッション協会にとって、サステナビリティ要件はデザイナーを排除するためのツールではなく、伴走するためのツールであることを強調するスコットさん(一番左) Jeremy Möller

“オープンであること”、“友情”、そして“自由の精神”

「サステナビリティ要件の必須化にあたっては、参加ブランド向けにウェビナーやセミナーを開催しました。彼らのすべての疑問に対応できるような短い動画や書類テンプレートを用意したり、コペンハーゲン・ファッションウィークからのサポートも得たりと、彼らからの知見も共有してもらいました。

私たちは“完璧なサステナビリティ”という万能薬のような解決策は持ち合わせていません。ですが、他の国や他のブランドと交流をはかり、オープンになり、彼らがどのように挑戦しているのか学ぶことはできます」(スコットさん)

ドイツ・ファッション協会はデザイナー、サプライヤー、バイヤー、メディア、各国のファッション協会など業種を横断したファッションのコミュニティとオープンな対話の場を醸成している Celine Witon, Tonya Matyu

「今シーズンのランウェイやプレゼンテーションでは、“オープンであること”や“友情”、“自由の精神”というテーマが際立っていました。デザイナー同士だけでなく、私たちやメディア、バイヤーなど、その場に集まる人たちの間にも、お互いに敬意があるようにも感じました。ドイツ語に“auf Augenhöhe(アオフ・アウゲンヘーエ) ”、つまり対等な目線という意味の言葉がありますが、まさにそれです。そこにはヒエラルキー(階層)はありません。それがベルリン・ファッションウィークが一貫して表現し続けたいことです」(スコットさん)

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