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病院に向かう車内で突然…高齢女性「降ろしてください!」説明しても“収まらない不安”に介護士が取った対応とは…

  • 2026.9.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

病院へ向かう車内で、突然「降ろしてください」と訴え始めた利用者様。

通院だと何度説明しても、不安はなかなか和らぎません。走行中ですぐには車を降りられないなか、介護士は利用者様が安心できる“ある話題”を持ち出しました。

認知症のある方の言葉の奥にある気持ちに気づいた出来事です。

病院へ向かっていた車内で

わたしが有料老人ホームで働いていたときの出来事です。

ある日、利用者様の通院に同行することになりました。施設の車に女性利用者様、運転手、わたしの3人が乗り、病院へ向かいました。

利用者様には数日前から通院の予定をお伝えし、当日も出発前に説明していました。

ところが、施設を出て数分経ったころです。利用者様が尋ねました。

「どこに連れて行くつもりですか!」

利用者様の表情はかたく、緊張されている様子でした。

「いつもの先生に診てもらうために病院へ向かっています」とお伝えすると、いったんは安心された様子でした。

しかし、数分後には再び「どこへ行くんですか」と尋ねられ、

やがて、

「降ろしてくださいよ!」

と強い口調で訴えられるようになりました。

何度説明しても不安は消えず

利用者様には認知症があり、説明されたことを覚えておくのが難しい状態でした。

通院だとお伝えした直後は安心されても、しばらくするとなぜ車に乗っているのか分からなくなり、不安を感じているようでした。

やがて利用者様は、運転手に対しても、

「運転手さん、どこに連れて行くのですか」

と訴え始めました。

幸い、シートベルトを外したり、ドアを開けようとしたりする様子はありませんでした。

それでも車は動いているため、安全に気を配りながら、利用者様の様子を見守る必要がありました。

不安を和らげるために 

走行中のため、すぐに安全な場所へ車を停められる状況ではありませんでした。

このまま通院だと説明し続けても、再び忘れてしまえば、不安を繰り返すことになります。 

そこでわたしは、乗車の目的や行き先を繰り返し説明するのではなく、 

いったん通院とは関係ない「別の話」をしてみることにしました。

なじみのある話題に笑顔が戻った

利用者様が普段からよく話していたご家族や、以前飼っていたペットについて話し掛けてみました。

すると、こわばっていた表情が少しずつ和らぎました。

「孫たちが今度の夏休みに遊びに来るって言ってるのよ」

うれしそうにご家族の話をされるうちに、利用者様の笑顔が戻ってきたのです。

運転手も会話に加わり、車内は次第に穏やかな雰囲気へと変わっていきました。

その後、「降ろしてください」という訴えは聞かれなくなり、無事病院へ到着しました。

言葉の裏にある気持ちに寄り添う 

利用者様にとって久しぶりの通院には、不安や緊張があったのかもしれません。

認知症のある方に予定を繰り返し説明することが、必ずしも安心につながるとは限りません。説明を重ねることで、不安を大きくしてしまうこともあります。

今回は、普段の利用者様の様子や生活歴を知っていたからこそ、その方が安心できる話題を選べました。

「降ろしてください」という言葉だけを受け取るのではなく、その奥にある不安に目を向けること。そして、なじみのある話題を通して、安心できることへ自然に意識を向けてもらうこと。

こうした関わり方も、認知症のある方を支えるうえで大切な介護の技術なのだと、改めて感じた出来事でした。 


文:しまむら けいこ/介護福祉士・Webライター 

介護福祉士として10年以上、デイサービスや入所施設などさまざまな介護現場で経験を積む。現在も介護職として働くかたわら、Webライターとして活動。介護や暮らし、働き方について発信している。二児を育てるワーキングマザー。


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