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「散歩の途中で、ホテルが分からへん」海辺の遊歩道で迷子になった兄妹。見かねた私たちが声をかけた結果

  • 2026.8.21

夕暮れの遊歩道で、二人だけが動かなかった

友人と二人で、海沿いの観光地へ出かけた。

旅の予定は細かく決めておらず、着いた日は海だけ見に行こうと話していた。

宿に荷物を置いてから、夕方の海辺の遊歩道をあてもなく歩いた。潮のにおいと、昼の熱がまだ残っている風。ゆるくカーブした道には、同じように散歩をする観光客が途切れずに続いていた。

その先に、小学生くらいの兄妹が立っていた。

周りの人がどんどん流れていくのに、そこだけが取り残されたように動かない。

妹は今にも泣きそうな顔で、兄の腕をつかんでいた。

兄は何度も、人の頭の向こうを見上げている。近くに、両親らしい大人の姿はなかった。

友人と目を見合わせた。

知らない大人が急に話しかければ、かえって怖がらせてしまうかもしれない。

少し迷ってから、できるだけゆっくり近づいて、しゃがんで目線を合わせた。

「どうしたん。誰か待ってるん」

兄が顔を上げた。

言葉を探すように口ごもってから、ようやく小さな声を出した。

「散歩の途中で、ホテルが分からへん」

「ホテルの名前、覚えてるか」

兄は首を横に振った。声はしっかりしていたのに、語尾だけがわずかに震えていた。

妹はうつむいたまま、兄の腕を離さない。夕方の遊歩道は人が多く、観光客の流れは途切れなかった。

この人波では、少し離れただけでもすぐに見えなくなる。二人はきっと、そのなかで流れに飲まれてしまったのだろう。

売店の店員さんが、すぐ無線を取ってくれた

「あそこの売店、聞いてみよか」

友人が指したほうに、遊歩道沿いの小さな売店があった。

「一緒に探そうか」

そう声をかけると、兄妹は顔を見合わせて、小さくうなずいた。妹の肩から力が抜けたのが、そばで見ていて分かった。

売店で事情を伝えると、店員さんは驚いた様子も見せず、まず二人のほうへ目を向けた。

それから話を最後まで聞いて、すぐに電話を手に取った。

「遊歩道の売店前で、お子さん二人お預かりしてます」

短いやりとりが何度か続いた。店員さんは屈んで、二人に言った。

「もうすぐ来はるからな」

ほどなくして、両親が人をよけながら駆けてきた。

妹はぱっと駆け出して、母親に飛びついた。父親は何度も店員さんに頭を下げていた。

私たちがしたのは、声をかけただけだ。

あとは店員さんが動いてくれた。会釈をして離れようとしたとき、兄がこちらを振り返り、何も言わずに小さく頭を下げた。

遊歩道の人の流れは、さっきと何も変わらないまま続いていた。あのお辞儀だけは、今でも忘れられない。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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