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「その絵を買わせてほしい」窓越しから始まった出会いが、その日暮らしの青年の人生を描き変えていく。「創作とは何か」を問いかけるヒューマンドラマ【書評】

  • 2026.8.18

【漫画】本編を読む

『いつか死ぬなら絵を売ってから』(ぱらり/秋田書店)は、ネットカフェで暮らす青年が、「絵を描くこと」を通して人生を変えていく姿を描いたヒューマンドラマだ。貧困や孤独、芸術の価値といった重いテーマを扱いつつ、「創作とは何か」という問いを真正面から描いた作品である。

主人公の霧生一希は、ネットカフェで暮らしながら清掃員として働く青年。もちろん毎日の生活に余裕などはなく、寝食を確保するだけで精いっぱいの日々を送っている。彼にとって唯一の救いが、仕事の合間に絵を描くことだった。そんなある日、商業ビルの清掃の合間、テラスで小さなスケッチブックに風景画を描いていると、窓越しにその絵を見つめる謎の青年・透が現れ、一希に「その絵を買わせてほしい」と声を掛けてくる。ここから一希の人生が大きく動き始めるのだった。

一希は、自分の絵に価値があるとは思っていない。それでも描かずにはいられない衝動を抱え、迷いながら筆を走らせる。その姿は、絵に限らず何かを創ることに情熱を注いだ経験のある人なら強く共感できるだろう。

本作は「才能がある者」が成功するというだけの単純なサクセスストーリーではない。芸術の世界の厳しさも容赦なく描かれる。作品の価値は誰が決めるのか、芸術はお金で測れるものなのか、評価される作品と埋もれていく作品の違いとは何なのか……。創作をめぐるさまざまな問いが、一希と周囲の人物たちを通して投げかけられる。

好きなことをしているだけではもちろん生きていけない。そんな現実を知っているからこそ、それでも描き続ける一希の姿は胸を打つ。2026年8月17日には第9巻が発売予定だ。一希と透、ふたりの過去が交わる緊迫のエピソードに突入し大きく動き出していく展開から、ますます目が離せない。

本作は、夢を追うことの苦しさだけでなく、創作が人の人生を変える力ということを信じさせてくれる。特に、何かを創り表現することの喜びと苦しみを知っている人に手に取ってほしい作品である。

文=富野安彦

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