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中島健人が『SとX』で見つめた、セックスと心の相関関係

  • 2026.8.17
MAI KISE

世界最大規模の世論調査会社イプソス株式会社によると、日本人の「恋愛・性生活」に関する満足度は世界29ヵ国の中で最下位だという。多くの人が不満や悩みを抱えているのに、それらがオープンに語られる場は極めて少ない。日本では、性に関する話題はどこかタブーのように扱われている。

その風潮に一石を投じるのが、Netflixシリーズ『SとX』だ。登場するキャラクターはそれぞれ性にまつわる悩みを抱えている。セックス依存症、性的同意、バーチャルセックス。一つひとつのケースを見れば特殊かもしれない。でもそこには、誰しもが感じたことのある孤独や痛みがある。

そんな性の悩みに真っ向から向き合うセックスセラピスト・霜鳥壱人を中島健人が演じている。なぜ私たちはこんなにもセックスというものに悩んでしまうのか。どうすればもっとパートナーと深い心と体の結びつきを築くことができるのか。

中島の答えから見えてきたのは、「自己受容」という心のウェルネスだった。

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よりよいセックスに必要なのは、お互いが心を預けられること

――個人的な話になりますが、私自身ができる限りセックスをせずに生きていきたいと思っているので、すごく当事者性をもってドラマを拝見しました。

まずはそうやってご自分のことを言ってくださることがうれしいです。やっぱり話しづらいテーマだと思うんです。それが『SとX』という作品があることで議題のテーブルに載せやすくなる。「ケンティー」というアイコンとしてエンタメ業界を生きている僕がこの作品に出演することで、みんなが性について話せる場所が増えるのなら、僕がやった意味があるなと思いました。

――劇中の「セックスに悩んでいない人なんていませんよ」という台詞の通り、悩みや違和感を持っている人はいっぱいいる気がします。でもそれをなかなか言えない。

僕はこのドラマに対して「信頼」「コミュニケーション」「自己受容」「愛」「孤独」という5つのテーマを持っているのですが、5つ目の「孤独」というのは物理的にひとりということに限らなくて。パートナーがいたとしても「自分は生殖行為にあまり興味がないからセックスをしたくない」とか、逆に「もっとセックスがしたい」ということを伝えられない状況は、孤独だと思うんですよ。そして、そういう孤独を抱えた人はおっしゃる通り多くいらっしゃるんじゃないかと思います。

――中島さん自身は本作を通じて、性に関する価値観が更新された部分はありますか。

これはあくまで僕の定義として受け取ってほしいのですが、僕自身はセックスというものはそこにパッションが備わっているものだと認識していますし、身体を通してエネルギーの交換や愛情の伝達が行われることを尊く思っています。

ただ、僕は身体的接触のみに快楽を感じる人間ではありません。お互いが心を預けられる状態にあることで、よりよいセックスができる。身体的快楽に精神的な心地よさが相乗していなければ、虚しさを感じるときもあるのだろうなと考えていたので、その認識はこのドラマを通してより深まったように思います。

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自己開示よりも大切なのは「自己受容」

――中島さんのおっしゃる通り、セックスというのは心と体が深く結びついて初めて愛や悦びを感じられるのかなと思います。でも、たとえば自分自身のコンプレックスなんてものは相手がパートナーでもなかなか口にできるものではありません。どうやったらパートナーと心と体が深く結びつくような関係を築けると思いますか。

僕は無理して自己開示をする必要はないんじゃないかと思います。僕も32歳の男性ですから、それなりにいろいろ思うことはあるし、身の回りにも何かしらコンプレックスを抱えた人はいます。そのすべてをパートナーだからといって打ち明けられるとは限らないですよね。逆に、赤の他人だから言える場合もある。それこそ僕の演じた霜鳥のようなセックスセラピストに相談するのもひとつの道筋だと思うので、第三者に頼ってみるのもいいんじゃないでしょうか。

――距離が近い相手だからこそ、つい隠したり見栄を張りたくなるんですよね。

そうなんですよね。だから大事なのは、自己開示ではなく「自己受容」だと思います。今はまだここの扉をあなたの前で開けることはできない。でもいつか時期が来たら話したいと思っているし、そのときは受け止めてほしい。そう伝えるだけで、お互いの信頼関係も違ったものになると思うし、孤独が浄化されていく気がします。

――なるほど。扉を開けることはまだできなくても、開けることのできない扉があることを伝えるだけで、コミュニケーションは変わってきますもんね。

人が孤独を感じる理由のほとんどが、僕はコミュニケーション不足だと思っています。どんなに一緒にいようと、会話がなければ孤独です。もちろん口を開くことで喧嘩になるケースもあると思いますけど、お互い言いたいことを言い合うことができれば、その先に何か見えるものがある。特にそういったセンシティブな悩みであればあるほど、ちゃんとコミュニケーションをとらないとトラブルになりかねません。

このことはセックスに限らず、あらゆる人間関係にも通じることですね。たとえば今回の撮影でもインティマシーシーンがあります。そこに対して何のコミュニケーションもとらないまま臨んだら、やっぱりお互い不安が残ります。

だからこそちゃんと話をすることが大切。いきなり全部を打ち明ける必要はないので、まずは自分の心を守った上で、伝えられる事柄から少しずつ相手に伝えていけたらいいのかなと。

――セックスに関しては、自身のコンプレックスに加えて、伝統的な性規範みたいなものも妨げになっている気がします。自分は男性ですが、男性がリードをしなきゃいけないという規範がプレッシャーになったり。あるいは女性からすると、女性が性欲を持つことに対してはしたないという世間の目があったりして。

女性がセックスが好きと言っても全然いいですよね。少しずつ男尊女卑も薄らいでいるとは思いますが、まだまだコアの部分でそういった考え方がこの社会に根強く染みついているんだと思います。それを覆すには、相当な時間がかかるだろうなというのが今の現実。だからこそ、こういった作品を通して性に関する価値観を再定義していくことが大事なんだと思います。

僕たちは今そんな時代の分岐点をつくっている。もし古来からの規範に苦しめられている人がいるなら、このドラマを通して100凝り固まっていたものが97くらいまで落ちたらうれしいです。

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30歳になって、やっと自己受容できるようになった

――自己受容についても聞かせてください。なかなか自分を受け入れることができない人も多いと思いますが、中島さんはどうやったら自己受容ができるようになると思いますか。

10代の多感なうちからいきなり自己受容をしろと言われても、それは難しいと思います。やっぱり一定の精神年齢は必要だと思っていて。

僕自身がどうやって自己受容をしてきたかというと、まずは自分の中で今何が起きているかを記述して見えるようにすることから始めました。要は内省ですね。自分の心を見つめて、整理して、自分の状態を定義づける。それが僕の考える自己受容であり、その先に自分はどういう人間であるかを相手に伝える、もしくは今はまだ伝えないという選択肢が生まれるんじゃないかなと思います。

――一定の精神年齢が必要ということですが、中島さんはいつくらいにちゃんと自己受容ができるようになったのでしょうか。

30歳くらいですね。

――意外です。メディアで見る中島さんは、もっと前から自分というものを上手にプロデュースして、受け入れている印象があったので。

僕はアイドルとして世に出させてもらいましたが、20代の頃は「俺は俳優だから。アイドルの仕事は別に……」という時期も正直ありました。同世代の俳優たちと話をしていると、みんなは次のクールはこの作品に出るんだという話で盛り上がっているのに、僕は何も次の出演作が決まっていなくて、すごく悔しかったんですよ。俳優として結果を出したいのに、待てども待てども芝居の話は来ない。僕の20代はずっと路頭に迷っていました。

そんなときに、自分を見つめ直してみたんです。僕がこんなにも俳優をやりたいと思っているのはなぜなんだろうって。もしかしたらそれはアイドルという職業に対するアンチテーゼなんじゃないだろうか。僕はアイドルという枠から脱却したくて、そのために俳優として認知されたがっているだけなのかもしれない。もう考えれば考えるほどわからなくて、20代のうちは答えが見えてきませんでした。

――見られ方に悩む、というのはわかる気がします。

それこそNetflixさんと前回ご一緒させていただいた『桜のような僕の恋人』という作品を撮っているときは、「俺は俳優だから」期の真っ只中でした(笑)。事前に何パターンも演技プランを練り込んで、何を言われても対応できますと自信を持って現場に入ったんですけど、深川(栄洋)監督の求めるものが僕の想定していた方向性とまったく違って、いきなりつまずいたんです。でもそこで思いました、ここで絶対自分を変えるんだって。

そもそも『桜のような僕の恋人』は、僕が渋谷のジュンク堂書店でたまたま原作を見つけて、絶対にこの作品を映像化したいと自分で企画書を書いて提案した作品でした。だからこそ、一度すべてを投げ捨てて丸裸になってもいいから、殻を破らなきゃいけないと思った。それで、監督にすべて委ねることにしたんです。

今でもよく覚えているのが、泣きのシーンがあって、でも僕は泣く芝居が得意ではなくて、それを初めて監督に正直に言ったんです、「泣くのが苦手で、もし泣けなかったらすみません」って。今まではプライドもあってそんなこと絶対言えなかった。でも、そうやって弱い部分をさらけ出せたおかげで、自分でも驚くくらいボロボロ泣けたんです。たぶん僕はそれまでずっと俳優という職業のうわべだけ見て憧れて、自分を取り繕っていたんでしょうね。それがやっとほどけた瞬間でした。

――まさに自分の弱さを受容できたわけですね。

そうやって少しずつ自分が変わっていく中で、大きな転機になったのが30歳のとき。これまでの自分を振り返ってみたんですけど、そこで浮かんできたのが、高校の授業中にプリントに歌詞を書いていた自分だったんですね。大学生のときも、ふとメロディがよぎったら、すぐお手洗いに行って録音したりしていて。そうか、僕は音楽をつくるのが好きなんだ。アイドルというフィルターを通して音楽を届けることが好きなんだということに気づいたんです。

ちょうどその頃から環境的にも自分で曲をつくって、ライブで歌って届けるということができるようになって。それをU:nity(中島健人のファンネーム)のみんなが受け入れてくれたことで、僕もアイドルである自分を自己受容できた。だから、自分がこういう人間なんだとわかったのは本当につい最近のこと。まだまだ新人です(笑)。

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Netflixシリーズ『SとX』
8月20日(木)より世界独占配信

PROFILE

KENTO NAKAJIMA 1994年生まれ、東京出身。2011年、男性アイドルグループSexy Zoneのメンバーとしてデビュー。2013年、『BAD BOYS J』でドラマ初主演、『劇場版BAD BOYS J 〜最後に守るもの〜』で映画初主演を果たし、数々の作品で俳優としても活躍。Sexy Zoneを卒業し、2024年4月1日よりソロアーティストとして活動を開始。2026年2月にリリースした2ndアルバム『IDOL1ST』では、自身初のオリコン週間アルバムランキング1位を獲得し、デジタル、合算を含む3冠を達成。音楽シーンにおいても確かな実績を築いている。

サカス PR 03-6447-2762

photo : MAI KISE styling : MAYU KAWAHARA hair & makeup : CHIE ISHIZU text : YOSHIAKI YOKOGAWA editor : NAOTO OKADA/ELLE

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