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「自分の“身の程”を知らせてくれる人がいなかった」ニコラス・エドワーズさんが日本で見失ったもの、取り戻したもの【ターニングポイント#2】

  • 2026.8.14

「自分の“身の程”を知らせてくれる人がいなかった」ニコラス・エドワーズさんが日本で見失ったもの、取り戻したもの【ターニングポイント#2】

「日本で歌手になりたい」と17歳で単身来日し、歌番組「のどじまんTHEワールド!」で注目を集め、21歳でメジャーデビュー。夢を次々と叶えてきたように見えたニコラス・エドワーズさん。その裏では「自分が何者なのか分からなくなった」と悩んだ時期もあったそうです。コロナ禍を経て、自分自身と向き合ったニコラスさんが見つけたものとは。(3記事中2記事目)

お話を伺ったのは
ニコラス・エドワーズさん 歌手

Nicholas Edwards●1992年、アメリカ・オレゴン州生まれ。高校時代に日本語と出合い、J-POPや日本のドラマに魅了され、17歳で単身来日。外国人が日本の歌を歌う番組「のどじまんTHEワールド!」に長く出演し、最多優勝記録を持つ。2013年にメジャーデビュー。高い歌唱力と表現力で多くのファンを魅了している歌手活動のみならず、日本語能力試験1級を持つ流ちょうな日本語と日本文化への深い理解にも定評がある。最近は人気YouTubeチャンネル「MrFuji from Japan」への出演でも注目を集めている。

「日本で歌手になりたい」17歳。何も決まっていない中、単身日本へ

「歌手になる」という夢を叶えるため、高校の卒業式の翌日に日本にやって来たニコラスさん。本当に何も決まっていない中で来日した17歳は、インターネットで調べた芸能事務所や音楽レーベルの所在地を手掛かりに“突撃”訪問し、頭を下げる日々。ビザの関係で働けず、高校時代のアルバイトで貯めた資金も尽きそうになった頃、大きな転機が訪れた。

「カラオケで日本の歌を歌うのを撮ってYouTubeに上げていたら、当時は今ほどYouTubeが盛んではなかったんですが、それを見たテレビ局のプロデューサーの方から連絡があって。最初は怪しいな…と無視していたんですが、何度もメッセージをいただいて」

当時、東京でお世話になっていたホストマザー的“お母さん”に相談し、そのテレビ局の方に「外で会うなら」と伝えて広場で待っていると、大掛かりな撮影カメラ機材を担いだ人物が現れた。その姿に驚いたと笑うが、同時に本気度も感じたという。

「新しく番組を立ち上げるにあたり出場者を探している中で声をかけてくれて、それが『のどじまんTHEワールド!』(日本テレビ系)だったんです。若くて日本語がしゃべれる僕が印象に残ったようです」

人気番組となった第2回で初優勝すると、“美しすぎる18歳”と一躍時の人に。「のどじまん~」では最多優勝記録(3回)も打ち立て、外国人タレントとしてのメディア出演も増えた。

インディーズレーベルでの活動を経て、2013年、21歳の誕生日についにメジャーデビューも果たす。

夢を叶えたはずなのに、自分が何者なのかが分からなくなった

夢を叶え、順風満帆に見えたニコラスさんだったが、心は大きな壁にぶつかっていた。

「当時、自分の“身の程”を知らせてくれる人が周りにいなくて。初心を忘れてしまうというか。自分が人からどう見られるのか?ということが気になり、意識しすぎてました。芸能の仕事では大切なことのはずなのに、自我が薄れていき、何を見てもらいたいのかが分からなくなって…」

彼の言う「身の程」とは、能力や立場をわきまえるという意味ではない。17歳で故郷を離れたニコラスさんの周りには、幼い頃からの自分を知る家族や友人がいなかった。

「昔からあなたはこういう人だったよね」と言ってくれる人が誰もいない環境で周囲の注目を集めるにつれ、自分が人からどう見られているのかを過剰に意識するようになっていった。それゆえ遠慮や萎縮をしてしまい、「悪い意味で失敗してこなかった」と言う。

そんな自分を変えたのは、コロナ禍だった。

「あの頃は自分と仲良くするしかなかったというか。日本に来て10年経ってましたが、あんなに長い期間、毎日自分だけに向き合ったのは初めてでした。もちろんそれまでにもさまざまなことを学んできましたし、年齢も20代後半になっていたこともあって、『自分は何者なのか』『何がしたいのか』、改めて見つめ直すことができました。自分のYouTubeチャンネルを立ち上げたことも大きかったです。日本語を学び始めた時に感じた“化学反応”がまた起こっているような感覚がありました」

反骨心は消えたのではなく、今は「ロジカルに突破したい」

30代になり、より客観的に、そして穏やかに自分のことを受け入れられるようになった。

「20代前半の頃は、例えば『お酒を飲みに行きました』ってブログに書いたら、『飲まないでほしい』とコメントが来たり、事務所からも『イメージと違うから』と止められたりすることもあって。仕事とプライベートを分けて考える術も持っていなかった。でも今思うと、あれこれ周りから言われるのは注目されている証拠じゃないですか。つまらないことで悩んでいたんだなって今なら思えます」

自分を見失っていた時期を脱し、「むしろ当時の自分、かわいいなとすら思える」くらい、客観視できるようになった。

「高校時代の『日本語選択を反対され、カッチーンときて頑張った』話に戻ると、20代後半の頃は『そんな反骨精神で何かをやるタイプじゃないんです』なんて答えていたと思うんですけど(笑)、今は『性格は昔から変わってなくて、やり方が変わっただけ』って言えます」

今でも逆境に燃えるタイプかと聞くと、「いい大人なので、やっぱりロジカルに突破したいですけどね」と余裕の表情。

「逆境というより、『やりたいことをやれないことはない』と思えるようになった気がします。結局は、自分に勝たなきゃいけないだけだと思うんです。難しいことってたぶん、やる気を出せるかどうかが一番重要で、やればできちゃうことが多いと思っているんです。だから今は、『やりたいと思ったら、それはもうできる』って思っています」

17歳のニコラスさんは「日本で歌いたい」という夢を抱いて日本にやって来て、30代の今、「自分がやりたいことに向かって、自分を信じて進むこと」と思えるに至った。
次回は、見失っていた自分を取り戻して起こった自身の役割や活動の変化、見据えている未来について語る。

撮影/島田香 取材・文/四戸咲子


【ニコラス・エドワーズさんの出演情報】

・8/4(火)~BSCラジオPresents「Music&Culture Lab.」パーソナリティ
・8/11(火)~「news23」不定期出演
・9/20(日)「Anything Allright Festival Vol.136」ゲスト出演
・10/4(日)「SOUND IN THE CIRCLE 2026」スペシャルゲストライブ出演
・12/12(土)クリスマスライブ決定


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