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「全部あなたのため」という言葉が息子を追い詰めていたーー習い事を見守る親の愛情が、「呪縛」に変わる境界線とは?【書評】

  • 2026.8.9

【漫画】本編を読む

子どもの成功を願う気持ちは、どこから「親自身の願望」へすり替わってしまうのか。『勝たないと意味がないでしょ? ~全部あなたのため・母の呪縛~』(みほはは/KADOKAWA)は、「子どものため」という親の愛情が、いつしか子どもを追い詰める呪縛へと変わっていく姿を描いたコミックエッセイだ。親子のすれ違いを通して、その難しさを問いかける。

主人公は、小さい頃から水泳が大好きだった息子・想太と、誰よりもその成長を願う母親・カナ。想太はスイミングクラブの選手クラスで実力を伸ばしていくが、比例するように、カナの「勝ってほしい」という思いも次第に強くなっていく。結果だけを求めるようになった彼女は、いつしか想太の努力や気持ちではなく、順位やタイムばかりを見るようになってしまう。そして追い詰められた想太は、水泳だけでなく学校にも行けなくなってしまう。

胸が苦しくなるのは、カナには悪意がまったくないことだ。もちろん、親同士のプライドや虚栄心はあるものの、だからといってカナは息子を傷つけようとしているわけではない。誰よりも成功してほしい、幸せになってほしいと願っている。だから「全部あなたのため」という言葉が想太にとっては逃げ場のない重圧へと変わってしまう。そのすれ違いが、読み手の胸を締めつける。

いつしかカナにとって、想太の結果は自分自身の評価そのものとなっていた。勝てば安心し、負ければ自分が否定された気持ちになる。カナは「良い母親でいなければならない」「子どもを成功に導かなければいけない」といった、自ら作り上げた「親の理想像」という呪縛に苦しんでいたのだった。

子どもの習い事や部活、受験勉強などは、時に親にも大きなプレッシャーになる。本作は、親子のどちらか一方を責めるものではなく、「子どものため」とはどういうことなのかを問いかけてくる。スポーツや習い事に打ち込む子どもを持つ親には特に読んでほしい、親の子に対する愛情について考えさせられる作品である。

文=おおぞら木馬

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