1. トップ
  2. エンタメ
  3. スターの死に翻弄される“幻の青春映画”『ジェームズ・ディーンにさよならを』約半世紀の時を経て劇場初公開!

スターの死に翻弄される“幻の青春映画”『ジェームズ・ディーンにさよならを』約半世紀の時を経て劇場初公開!

  • 2026.8.6

東京・墨田区にある映画館Strangerと映画上映企画グループ4AMによる共同上映企画「CULT CLASSICS(カルト・クラシックス)」が始動。これまで劇場公開の機会に恵まれなかった作品や、日本で十分に紹介されてこなかった映画を発掘する当企画の第1弾として、ジェームズ・ブリッジス監督の『ジェームズ・ディーンにさよならを』(77)が、10月16日(金)よりStrangerにて1週間限定上映されることが決定した。

【写真を見る】早逝の映画作家が自身の青春時代を投影!永遠のスター、ジェームズ・ディーンへのオマージュが息づく知られざる傑作

【写真を見る】早逝の映画作家が自身の青春時代を投影!永遠のスター、ジェームズ・ディーンへのオマージュが息づく知られざる傑作 Images courtesy of Park Circus/Universal
【写真を見る】早逝の映画作家が自身の青春時代を投影!永遠のスター、ジェームズ・ディーンへのオマージュが息づく知られざる傑作 Images courtesy of Park Circus/Universal

テレビ作品の脚本家を経て『受胎の契約 ベビー・メーカー』(70)で映画監督デビューを果たしたブリッジス監督は、1970年代から1980年代にかけて8本の長編映画を監督。自ら脚本も手掛けた『ペーパーチェイス』(73)と『チャイナ・シンドローム』(79)でアカデミー賞脚本賞にノミネートされ、1993年に57歳で早逝。長編第3作となる『ジェームズ・ディーンにさよならを』(原題『September 30, 1955』=ジェームズ・ディーンが他界した日)は、ブリッジス監督の青春時代が投影された、もっともパーソナルな自伝的作品として知られている。

舞台はアーカンソー州。1955年9月30日、若き映画俳優のジェームズ・ディーンが自動車事故で他界。彼を熱狂的に崇拝していた大学生のジミー・J(リチャード・トーマス)は、憧れのスターの唐突すぎる死に直面し、激しい喪失感に打ちのめされる。悲嘆に暮れて茫然自失、自暴自棄となり、居ても立ってもいられなくなった彼は、戸惑う恋人や学友も無理やり巻き込んで、酒を盗み、車を飛ばし、警察から逃げ、同じ痛みを共有するディーン信者の少女ビリー・ジーン(リサ・ブロント)と共に私的な追悼会を実現するべく奔走する。

1955年9月30日、熱狂的に崇拝していたジェームズ・ディーンの死に直面するジミー・J Images courtesy of Park Circus/Universal
1955年9月30日、熱狂的に崇拝していたジェームズ・ディーンの死に直面するジミー・J Images courtesy of Park Circus/Universal

主演を務めたのは往年の名作ドラマ「わが家は11人」やテレビ映画版「IT/イット」のリチャード・トーマス。『ゴングなき戦い』(72)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたスーザン・ティレルや『パラダイム』(87)のリサ・ブロントのほか、当時まだ駆け出しの俳優だったデニス・クエイドや『アマデウス』(84)のトム・ハルスも出演。また、撮影監督には「ゴッドファーザー」シリーズのゴードン・ウィリス、音楽はディーン主演作『エデンの東』(55)のレナード・ローゼンマンが担当。

上映決定とあわせて解禁されたメインビジュアルには、本作の象徴的存在であるジェームズ・ディーンの肖像を大胆に配置。鮮やかなブルーを基調とし、意図的にノイズを重ねたグラフィックによって、ディーンという存在が放つ危うい輝きとスターへの神格化、そして喪失が交錯する本作の世界観を現代的な感覚で表現。さらに劇中でニュースキャスターがディーンの死を伝えるセリフと場面写真が配置されている。また、宇多丸(RHYMESTER)や映画評論家の真魚八重子ら著名人からのコメントもあわせて到着した。

『ジェームズ・ディーンにさよならを』は10月16日(金)からStrangerにて1週間限定上映 Images courtesy of Park Circus/Universal
『ジェームズ・ディーンにさよならを』は10月16日(金)からStrangerにて1週間限定上映 Images courtesy of Park Circus/Universal

日本ではテレビ放送されたのみで、劇場公開はもちろんのことソフト化もされてこなかった“幻の青春映画”だった『ジェームズ・ディーンにさよならを』。製作からおよそ半世紀、ついに迎える待望の日本劇場初公開。この貴重な機会に、是非ともスクリーンで目撃してほしい。

<コメント>

●宇多丸(RHYMESTER)

「『ヤング・ゼネレーション』を偏愛する身としては、デニス・クリストファーとデニス・クエイドが揃って初々しい姿を見せるだけでもう、胸アツ!事程左様にと言うべきか、55年を舞台としながらも、実はむしろやはり、製作された70年代後半の気分こそが、より色濃く刻印された一本であるように思う。若者が、もはや『理由なき反抗』すらしなくなる時代の予感。その苦さが、本作を一際忘れ難いものにしている」

●真魚八重子(映画評論家)

「様々な若者が同じ場所に居ても、その点と線は交わることはない。永遠に誰も理解し合わない、マルチバースの『ブレックファスト・クラブ』のようだ。ジェームズ・ディーンは彼の後を追う青年のことなどお構いなしに、ただ漆黒の闇の中に去っていく」

●大川景子(映画編集)

「不思議なことに人は会ったこともない人物に心酔することがある。この映画の冒頭で主人公ジミーがスクリーンごしにジェームズ・ディーンを見つめる顔を見てほしい。人生を変える何かと出会ってしまった……そんな顔だ。スクリーンが自己を投影する鏡となる同一化の恐ろしさ。そんな映画の魔力とティーンエージャーの危うい輝きが結びついた、当惑の青春映画」

●済東鉄腸(作家、映画ライター)

「リチャード・トーマス演じる主人公ジミーが何かを見つめている、その顔が真正面から映し出されるっていう場面が前半と後半で1回ずつある。どっちも彼がいかにジェームズ・ディーンという存在を心から愛しているかが分かる場面だ。だけどそこに宿る感触はあまりにも違う風に見える。ジミーがまだ俺たち観客と同じこちら側にいるか、ディーンの亡霊に魅入られてもはや向こう側に行ってしまったか、それがありありと分かってしまうからだ。

『ジェームズ・ディーンにさよならを』の原題である“September 30, 1955”は、ジミーをそんな風に劇的に変えてしまう運命の日を指し示しているわけだ。そうして無軌道ながらも瑞々しい青春に、驚くほど濃密な闇と死への不穏な予感が入り混じるようなこの1作、不用意に観ると癒えない傷が心に残るかもしれない。だがそれでも、この切実な1作をぜひ観てほしいってそうも思う」

●冨塚亮平(アメリカ文学・映画研究者)

「ジミーがあらゆる些細な事柄にジェームス・ディーンとつながる“サイン”を見出し、スターを自分と完全に重ね合わせ続けられるのは、彼が映画館の暗闇のなかで孤独に何度も映画と向き合ってきたからだ。だからこそ、学生時代の思い出や余暇を充実させる推し活にはとどまらない、映画に本気で狂い狂わされた切実で滑稽な男の姿を目撃するのもまた、映画館でなければならない。劇場に集い、泥で作ったオスカー像に共に祈りを捧げよ」

●金子由里奈(映画監督)

「巨星の死への反抗。スクリーンから伸びた手が眼球を掴んで離さない恍惚。マジで最高の取り乱し映画。映画館に座ることは、降霊の儀式への参加なのだ」

文/久保田 和馬

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ