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「産地を全部、教えてよ」混雑のなか質問と席替えを何度も重ねた客。だが、店員の対応に感心した瞬間

  • 2026.8.8

レジで続いた終わりのない質問

昼どきの飲食店は、どのテーブルも埋まり、入口には順番を待つ人が列をつくっていた。

私も注文を済ませようと、レジの前でひとつ後ろに並んでいた。

私の前にいたのは、四十がらみの男性客だった。会計の列がなかなか進まないと思って見ると、その人が店員をつかまえて、次から次へと質問を重ねている。

「産地を全部、教えてよ」

メニューの材料はどこ産か、調理法はどうか。

ひとつずつ細かく確かめていく。店員は嫌な顔ひとつせず、丁寧に答えていた。

「はい、こちらの定食のお野菜は、地元の農家さんから届く旬のものを使っております」

「じゃあ、この魚はどこの海のものなの。焼き方も知りたいな」

「日本海で獲れたもので、塩を振って香ばしく焼き上げております」

「その煮物は、どうやって味つけしてるの。だしの素材まで知りたいんだよ」

「かつお節と昆布で、じっくりだしをとっております。お口に合いましたら幸いです」

店員は一つ一つの問いに、少しも面倒がる様子を見せなかった。

それでも、質問は途切れる気配がない。

ようやく会計が終わったかと思えば、今度は席への注文が始まった。

「この席は風が当たるから嫌だ。それに、隣の人が近い気がするな」

後ろに並んだ客たちの待ち時間は、じわじわと延びていく。私の前の女性がちらりと腕時計に目を落とし、その後ろの人も小さく息をついた。

困ったような空気が、列全体にそっと漂いはじめていた。

店員が見せた鮮やかなさばき方

それでも店員は、少しも慌てなかった。てきぱきと、しかし丁寧に、男性の求めにひとつずつ応えていく。

「かしこまりました。それでしたら、風の当たらない奥の落ち着いたお席へご案内いたします」

言うが早いか、さっと通路を抜けて奥の席へ手を差し伸べ、男性を導いていく。迷いのない身のこなしだった。

「こちらでしたら、お隣との間も広めにとってございます。ごゆっくりお過ごしください」

あれほど注文を重ねていた男性が、案内された席に腰を下ろすと、張っていた肩からふっと力が抜けた。

とがっていた表情がゆるみ、目もとがやわらいでいく。

「……ああ、ここならいいな」

店員は軽く頭を下げ、そのまま止まっていた会計へと戻っていった。

長引いていた列が、すっと動きだす。

待たされていた周りの客たちも、どこかほっとした顔で肩の力を抜いていた。混み合う店の中で、ひとりも無下にせず、すべてをさばききった手際。私はその落ち着きぶりに、思わず見入ってしまった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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