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「ベビーカー、押さえておきますね」会計に手間取る若い母親。だが、店員の対応に場の空気が和んだ瞬間

  • 2026.8.8

混み合う朝のパン屋のレジで

朝の駅前にあるパン屋は、通勤前の客でいつも混み合っている。

焼きたての香りが漂う店内で、トレイを手にした人たちがレジに列をつくっていた。

私の前に並んでいたのは、ベビーカーを押した若いお母さんだった。

順番が来て、彼女がトレイをカウンターに置いたそのとき、ベビーカーの中の赤ちゃんがぐずり始めた。

小さな手足をばたつかせ、今にも泣き出しそうな声をあげる。お母さんは片手であやしながら、もう片方の手でバッグの中の財布を探していた。

「すみません、ちょっと待ってくださいね」

焦る指先が、なかなか小銭をつかめない。後ろに続く列を気にしてか、彼女の頬はみるみる赤くなっていった。

ぐずる声は少しずつ大きくなり、周りの視線が集まっていくのが、並んでいる私にも伝わってくる。

その空気を察したのだろう。レジに立つ店員さんが、落ち着いた声でこう言った。

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

そして、ぐらりと動きかけたベビーカーに、そっと手を添えた。

「ベビーカー、押さえておきますね」

お母さんが、はっと顔を上げる。張り詰めていた表情が、少しだけほどけたように見えた。

広がっていった優しさ

「すみません、ほんまにごめんなさい」

何度も頭を下げるお母さんに、店員さんは笑顔のまま、やわらかい声で返した。

「お子さんも頑張ってますからね」

その一言に、彼女の目もとがふっとゆるんだ。不思議なもので、店員さんの穏やかさは、その場にいた私たちにも伝わっていく。

後ろに並んでいた人たちが、急かすでもなく、ベビーカーのぶんだけ自然と少し距離を空けて待ち始めた。誰も、いらだった様子を見せなかった。

ようやく支払いを終えたお母さんに、店員さんはさらに気を配った。

「袋は持ちやすいように、二重にしておきますね」

片手がふさがっていても持てるように、という心づかいだった。お母さんは、パンの袋を受け取りながら、何度も何度も頭を下げて店を出ていった。ベビーカーの中の赤ちゃんも、いつのまにか泣きやんでいる。

次は私の番だった。トレイを差し出しながら、私は思わず「ありがとうございます」と口にしていた。自分が何かしてもらったわけでもないのに、なぜだかそう言いたくなったのだ。

店員さんは少し驚いた顔をして、それからにっこりと笑った。焼きたてのパンの香りと、その笑顔に包まれて、忙しいはずの朝が、ふっとあたたかくなる。私は軽くなった気持ちのまま、いつもの一日へと歩き出した。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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