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「相続の話だ、お前は黙ってなさい」法事の席で母を追い詰めた叔父。だが、別の親族がその場で止めた正論とは

  • 2026.8.5

三回忌の膳が並んだ座敷で

父が亡くなって二年、三回忌の法要には親族が集まりました。

読経が終わり、仕出しの膳が並ぶと、座敷にようやく話し声が戻ってきたのです。

「久しぶりだな。元気にしてたか」

父の弟にあたる叔父が、私の肩を叩きました。悪気のない人だと、そのときまでは思っていたのです。

母は末席の近くに座り、親族一人ひとりに頭を下げて回っていました。

父の入院中、着替えを抱えて毎日病室に通い詰めていたのはこの人です。最後の半年は、泊まり込みの日も少なくありませんでした。

「お義姉さん、座ってなさいよ。今日くらい」

叔母がそう声をかけ、母をようやく席に戻したところでした。膳が半分ほど減った頃、叔父が箸を置きました。

「実家の土地、これからどうするか決めておかないとな」

座敷の話し声が、ぴたりとやみました。

「今日は父の法事ですから、その話はまた今度に」

私がそう返しても、叔父は聞いていませんでした。母のほうへ身を乗り出して、続けたのです。

「相続の話だ、お前は黙ってなさい」

母に向かって「お前」と言い放ったのです。母は湯呑みに伸ばしかけた手を、そのまま膝に戻しました。

「この家のことは血のつながった者で決める。あんたは口を出す立場じゃない」

誰も何も言えず、膳の上で箸だけが止まっていました。徳利を回そうとした手も、注ぎかけたまま宙で止まっています。

親族の年長者が挟んだ正論

沈黙を破ったのは、床の間を背にして座っていた、父のいとこでした。

親族のなかでいちばんの年長者です。

「今日は法事だ。その話は後日にしなさい」

叔父の顔つきが、目に見えて変わりました。

「……いや、こういうのは早いほうが」

「兄さんの位牌の前で、奥さんに黙ってろと言うのか」

叔父は言い返そうとして、言葉が続きませんでした。

「二年、兄さんの世話をしたのは義姉さんですよ」

叔母がそう言うと、座敷のあちこちで小さくうなずく気配がしました。叔父は徳利に手を伸ばしかけ、そのまま引っ込めて、畳の目を見つめていました。

「土地のことは、日をあらためて全員で話します。母も同席します」

私が言い切ると、叔父は返事をせずに膳へ向き直りました。それきり、土地の話は出ませんでした。

帰り際、叔父は母の前で足を止め、目を合わせないまま頭を下げました。

「さっきのは、言い過ぎた」

母は「いえ」とだけ返し、まっすぐ背を伸ばして見送りました。父を送った席で、母が黙らされずに済んだ。それだけで、あの日は救われたのだと思っています。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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