1. トップ
  2. エピソード
  3. 「焼肉だ、今夜も庭でやるぞ」毎晩十時を過ぎても続く隣家の宴会の騒音を、自治会が動いて止めた夜

「焼肉だ、今夜も庭でやるぞ」毎晩十時を過ぎても続く隣家の宴会の騒音を、自治会が動いて止めた夜

  • 2026.8.6
「焼肉だ、今夜も庭でやるぞ」隣人の夜中まで続く宴会。我が家が眠れず耐え抜いた夏の夜

毎晩十時からの庭

我が家の隣は、庭の広い一戸建てでした。

夏になると、その家の庭からは毎晩のように、香ばしい煙が立ちのぼるのです。

「焼肉だ、今夜も庭でやるぞ」

家族四人に、犬が二匹。

それはもう、慣れた手つきの本格派でした。炭をおこす道具から取り皿まできちんと揃え、夜風にあたりながらの外飲みです。

休日ならまだしも、それが毎晩のことなのですから、たまりません。

「肉が焼けたぞ、どんどん食え」

「ビールもう一本、持ってこい」

問題は、時計が夜の十時を回っても、宴がいっこうに終わらないことでした。

「がはは、まだまだこれからだ」

笑い声は壁を越えて、寝ようとしている我が家の窓を、遠慮なく叩いてきます。犬が興奮して吠えはじめると、今度はそれを上回る大声が返ってくるのです。

「うるさいっ、こら、静かにしろ」

犬を叱りつける怒号のほうが、よほど夜更けに響きました。

眠れぬまま、幾夏

壁時計の針が十一時を指しても、庭の明かりは消えません。

「ねえ、そろそろ寝たいのだけれど」

家族でそうこぼしても、声はもちろん隣までは届きません。

窓を閉めれば、今度は寝苦しい夜になります。かといって、正面から乗り込んでいくのも気が引けました。あちらは家族総出、こちらは寝間着のひとりです。

「明日も早いのに、参ったわね」

角を立てて、この先ずっと隣同士でいるのかと思うと、どうしても二の足を踏んでしまう。

結局、我が家は毎晩、枕に耳を押しあてて、宴がお開きになるのをただ待つしかありませんでした。それが、あの夏のかたちだったのです。

夏が来るたびに、同じことの繰り返しでした。窓を開ければ煙のにおいと肉の脂の香りが忍び込み、閉めきれば今度は熱帯夜に汗をかく。

網の上でじゅうじゅうと肉のはぜる音まで、寝入りばなの耳が拾ってしまうのです。それでも隣は、こちらの寝不足など知る由もありません。

ところが何年か経つうちに、いつの間にか、あの庭の焼肉はぱたりと開かれなくなっていました。煙も、笑い声も、怒号も、ふっと途絶えたのです。

「どうしたのかしらね、肉に飽きたのかしらね」

家族はそんな軽口を叩いて、急に訪れた静けさを持て余しています。

理由を確かめたわけでも、こちらが何かをしたわけでもありません。ただ耐えているうちに、嵐のような夏がいつの間にか過ぎ去っていた。今も隣の庭は、投光器を煌々と灯していたあの頃が嘘のように、しんと暗いままです。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ