1. トップ
  2. エンタメ
  3. ゾワゾワではなくワクワクするホラー!?『インビジブルハーフ』をホラー作家・背筋も参加するユニット「バミューダ3」が語る

ゾワゾワではなくワクワクするホラー!?『インビジブルハーフ』をホラー作家・背筋も参加するユニット「バミューダ3」が語る

  • 2026.7.31

昨年、ホラー体験型展覧会「1999展-存在しないあの日の記憶-」を成功させたクリエイティブ・ユニット「バミューダ3」。このユニットを構成するのは、現在公開中の映画『口に関するアンケート』の原作者で作家の背筋、「SILENT HILL」「SIREN」など人気ホラーゲームを数多く手がけるクリエイター兼脚本家の佐藤直子、待望の長編映画『インビジブルハーフ』(公開中)を手掛けた監督の西山将貴だ。今回、そんな気鋭のクリエイター3人の鼎談が実現した!

【写真を見る】『インビジブルハーフ』でミックスルーツを持つ主人公エレナを演じたのは映画監督、俳優、モデルとしてグローバルに活躍するシエラ璃砂

ミックスルーツを持つ高校生のエレナ(シエラ璃砂)がスマホに“触れている時だけ見える透明な怪物”と戦いながら自らの内面とも向き合う新感覚のスクリーンタイム・ホラームービー『インビジブルハーフ』において、西山監督が目指した“恐怖”とはなんだったのか?2人の気鋭クリエイターはそんな若き異才のデビュー作をどう観たのか、熱いトークは「バミューダ3」の誕生の経緯を佐藤が振り返るところから始まった。

「Jホラーの文脈とは無関係のところから生まれた新しい才能だと感じた」(佐藤)

【写真を見る】『インビジブルハーフ』でミックスルーツを持つ主人公エレナを演じたのは映画監督、俳優、モデルとしてグローバルに活躍するシエラ璃砂 [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.
【写真を見る】『インビジブルハーフ』でミックスルーツを持つ主人公エレナを演じたのは映画監督、俳優、モデルとしてグローバルに活躍するシエラ璃砂 [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.

佐藤「共通の知人であるプロデューサーから『SIRENを映像化したがっているすごい才能を持った若い監督がいる』と紹介されたのが始まりです。西山くんとはそこから年の離れたクリエイティブ仲間みたいな感じで交流が始まったんですけど、その1年後くらいに今度は、複数の友人から『ものすごく怖いWeb小説がある。佐藤さんは絶対好きだから読んだほうがいい!』って熱く言われたのが背筋さんの『近畿地方のある場所について』でした。読んでみたらめちゃくちゃおもしろいし、怖いし、なんなら自分と文化的遺伝子が近いところにいる人だな~ぐらいのことを思っていたら、私のXを背筋さんがフォローされていたんです(笑)。それで『この人、ゲーマーだ!私が手がけた『SIREN』も絶対に好きに違いない!』ってピンときて、DMを送ったところから背筋さんとも連絡を取り合うようになり意気投合し、この3人で何か生み出せないかという野望から『バミューダ3』というクリエイティブ・ユニットを立ち上げました。昨年の『1999展-存在しないあの日の記憶-』はそんな私たちの最初のクリエイティブ企画だったのですが、西山くんも背筋さんもアウトプットのプロだし、ジャズのセッションのようにノリだけでバンバンわかり合えるクリエイティブの関係性を築くことができて。年齢も性別もバラバラの3人で1つのクリエイティブを成立させるのは難しいと思うんですけど、私がギャグで『バンドを組んでいるみたい』と言ったくらい、しっくりくる奇跡的なユニットを組むことができて。それで現在に至っている感じです」

――そんな佐藤さんと背筋さんに、『インビジブルハーフ』をご覧になった感想を語っていただくところから本題に入っていけたらと思います。

佐藤「私は観て最初に“うますぎる!”って思いました(笑)。映画学校に行ったわけでもなく、助監督の経験もない。そんな突然出てきた“野良”の才能が撮った作品にしては完成度が高すぎましたから」

西山「うれしいですね(笑)」

佐藤「それと、いわゆるJホラーの文脈とは無関係のところから生まれた新しい才能だなということも感じて。国境を越えても理解されるノンバーバル(非言語)なメッセージやアイデアを抱えた、ゲーム世代の感性がものすごく伝わってきたんです」

西山「ゲーム世代のなかにもいろいろな世代があると思うんですけど、僕が学生のころはPlayStationなどのゲームが映画的な表現を目指していた時だったんです。要はゲームに最初に触れた瞬間から映画的な表現を体験することができたから、僕はゲーム的なものを映画に取り入れたい、という逆の発想をしているところがあって。佐藤さんが脚本を書かれたホラーゲーム『SIREN』がめちゃくちゃ好きだったこともあるんですけど、観客がより体験に近い没入感で主人公になったり、応援できたりするようなものにしたいと思っていました。だから、ゲーム的なギミックを駆使した映画になったのかもしれません」

背筋「僕もすごくおもしろく観させていただいたんですけど、西山さんに自分の感想を“なんて伝えたらいいんだろう?”ってすごく迷った時に、『おもしろい』という言葉の表現のなかにそれを閉じ込めるのは勿体ないな、という想いが個人的にあったんです。まさに新しい体験でしたし、西山さんがこの作品に込めた熱量みたいなものをものすごく感じたからこそ、つぶさに魅力を語れば語るほど大きな魅力が損なわれちゃうような気がして。そこが歯がゆいというか、感想を伝えるボキャブラリーを持ち合わせていない自分が悔しいと思ったぐらいおもしろい映画でした(笑)」

初の長編作品 『インビジブルハーフ』を手掛けた西山監督。高校卒業後にイギリスへ単独で渡航し映画制作を経験した 撮影/黒羽政士
初の長編作品 『インビジブルハーフ』を手掛けた西山監督。高校卒業後にイギリスへ単独で渡航し映画制作を経験した 撮影/黒羽政士

――本作の最大にして秀逸なアイデアは“スマホに触れている時だけ透明な怪物が見える”という設定ですが、西山監督はこれをどこから発想されたのですか?

西山「僕が10代のころの、当時の中学生は『親が子どもに携帯電話を買っちゃダメ!』と言われていた最後の世代で。そこから親が子どもにスマホを与えだして、今度は『SNSをやっているのはヤバい奴だ』って言っていたのに、誰もがインスタをやるようになって、SNSに触れる若い人たちが増えていくなかで“炎上”もたくさん生まれた。投稿のリプライ欄で膨大な数の匿名の人たちが最初の投稿者を一斉に叩く現象が当たり前のようになっていきましたからね。そんな現象を見て、僕は“匿名のシルエットだけの存在”に襲われる映画って怖いんじゃないかな?ってまず最初に思ったんです。と同時に、人と人が繋がるために開発されたスマホが、人を遠ざけたり攻撃したりする逆のツールになっているテクノロジーの皮肉な展開におもしろさを感じて。その2つの要素をホラーの形で描きたいと考えたんです」

――佐藤さんは先ほど「うますぎる!」って言われましたが、どのあたりに西山監督の“うまさ”を感じられました?

佐藤「西山くんは『見たことのない映像を撮りたい。見たことのない画を作りたい』ってよく言うんですけど、映像に対する偏執的なこだわりが映像に表れているんですよね。それこそ、主演のシエラ璃砂さんをクラスメイトが囲んでいるポスターやチラシのメインビジュアルも、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の構図をなぞっていて。同じように、なんとなく撮ったかのように見える風景にも精密に設計された西山くんのビジュアル・イメージが感じられるから、気持ち悪いし、怖いんです(笑)」

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた名画「最後の晩餐」の構図を彷彿とさせるシーン(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.
レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた名画「最後の晩餐」の構図を彷彿とさせるシーン(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.

――背筋さんはいかがですか? 先ほど「つぶさに語るのは勿体ない」とは言われましたけど…(笑)。

背筋「いえいえ(笑)。小説などの文字で起こせる表現にはたぶん限界があって、その最たるものが“空気感”だと思うんです。映像表現は空気だけを伝えることができるし、“世界観に下支えされていない空気”も受け手である観客にはわかると思うんですけど、西山さんの映画は本作に限らず、脚本やテーマに裏打ちされた空気感を撮りたいという明確な意思が感じられる。醸す空気感が作品全体のテーマを伝える役割を担っていて、そこは書くことでは表現しようのないところなので、観ていてステキだなと思いました」

西山「僕自身、セリフで伝えることより、映像を通してなにかを訴えることをやりたいタイプなんだろうなって思っています。お2人にいま言っていただいた『映像や音響からその場の空気がわかる』『そのショットにこういう意図が感じられる』といったところは、日本語などの言語に縛られずに映画を遠くまで届けたいという自分の思いとも繫がっているので、それが伝わってよかったなと思います」

エレナは夢の中なのか現実なのかわからない不思議な世界を体験する(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.
エレナは夢の中なのか現実なのかわからない不思議な世界を体験する(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.

――西山監督が恐怖表現でこだわったところも教えてください。

西山「“ホラーを作っていて何を言っているんだ?”と思われるかもしれないんですけど、僕は“ジャンプスケア(大音響や衝撃的な映像で驚かせる演出手法)”が好きじゃないんです(笑)。なんか即物的な感じがするというか、絶対に聞こえるはずがない大音響や見ることのない映像で驚かすのは嘘じゃん!って思いますし、怖いんだけど、映画館を出る時に“騙された~”という嫌な気持ちになることが多かったんです。なので、ジャンプスケアを使ってもいい設定を作ろうということを最初に考えました。それが“スマホのイヤホンをつけると怪物の音が聞こえる”というギミックです。イヤホンを通してなら音が大きくなってもおかしくないし、怖いシーンで音が大きくなる通常のホラーとは違って、イヤホンを外して無音になった時に怖いことが起こるという逆の表現もできる。その落差をイヤホンの音でやるのは、ほかの映画がやっていない“恐怖”の表現だと思います」

佐藤「ヘンな言い方ですけど、彼の恐怖表現は品がいいんですよ。観る人を怖がらせたり、脅かしたりすることを目的としたものではない。美しいホラーシーンを作ってくれるから私はそこが好きなんです」

西山「『インビジブル ハーフ』はアイデンティティをめぐる物語でもあるし、ミックスルーツの女の子が主人公の、ほかではあまり見かけないホラー映画ですからね。ミックスルーツを持つ人は日本に住んでいて、日本語ももちろん話せる日本人なのに外国人のように扱われることもある。そんな人たちの視点で、彼女の揺れ動く感情をホラーとして描いたら、ほかの作品にはない怖さを出せるのかなと考えたんです」

背筋「トンネルで怪異が現れる、といったピンポイントの表現も恐怖の発露としては必要ですけど、この作品にとって重要なのはそれよりも文脈で、人が描けているかどうか。この人はいまこういう状況にある。だから怖い!という文脈の上で成り立っているホラー表現なんですよね。例えば、クラスメイトが主人公のスマホを奪って、パスワードになっているアメリカのスラングを解読しようとする描写がこの映画では効いている。怪異が直接出てくるわけではないけれど、私は単純にそこが怖かったです。余所者に対しての冷たい眼差しや好奇心が表現されていました。お化けなどで驚かすのではなく、空気感を醸成する形での恐怖表現になっていたので、そこにすごく感情移入したし、恐ろしかったですね」

いじめの標的となっていたクラスメイト。常に耳に付けていたイヤホンを失ったことで、不可解な行動をとり始める(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.
いじめの標的となっていたクラスメイト。常に耳に付けていたイヤホンを失ったことで、不可解な行動をとり始める(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.

――西山監督はほかのインタビューで「日本ならではのゾワゾワした恐怖ではなく、ワクワクする恐怖をやりたい」という発言もされていましたね。

西山「僕は映画ももちろん好きでめちゃくちゃ観ていますけど、ゲームで育ったから“モンスターを倒したい!”という気持ちが常にあるんです。主人公たちが逃げ場のないところにどんどん追い詰められていくのがJホラーの怖さだとしたら、ホラーゲームでは異形の存在の怪物がそこにいるとわかっていても、プレイヤーは逃げずに立ち向かっていくじゃないですか。そのことに気づいて、映画だったら自分も絶対に逃げているはずなのに、ゲームでは立ち向かっていけるのはなぜだろう?と考えた時があって。と同時に、ホラーゲームはワクワクする怖さの中で、どうしたら怪物に勝てるんだろう?どうやってその恐怖を乗り越えたらいいんだろう?って考えるところにおもしろさがあって、自分はそこが好きなんだなと気付いたんです。だから、本作もただ逃げ惑う話ではなく、主人公がそこに立ち向かい、克服していく映画にしたかった。けっこう長尺なバトルシーンはワクワクしながら怖がれるゾーンを目指して作ったので、Jホラーの文脈からはちょっと外れた映画になっているかもしれません」

「小説では限界がきてしまうような問題も、映画では容易く突破できる」(背筋)

西山監督の才能について熱く語る背筋と佐藤直子。取材ではホラー映画の趣味趣向が似通った、仲睦まじい3人の姿が伺えた 撮影/黒羽政士
西山監督の才能について熱く語る背筋と佐藤直子。取材ではホラー映画の趣味趣向が似通った、仲睦まじい3人の姿が伺えた 撮影/黒羽政士

――ところで、背筋さんは文字で、佐藤さんはゲームで恐怖を表現されていますが、文字による恐怖とゲームでの恐怖、映画や映像で見せていく恐怖をどのように捉えられていますか?

背筋「映画は小説と違って、関わる人数が段違いに多いですよね。小説では1つの言葉で解決できることが、映画だと1日、2日、1週間もかかったりする。だから“大変だな~”とも思うけれど、違う側面では“総合芸術”という見方ができる。小説では限界がきてしまうような問題も、脚本や音楽、カメラワークや光の当て方などの総力を結集して1つの作品を作る映画では容易く突破できるから、表現できる幅が確実に大きいような気がします。ただ、それは小説が映画よりもダメという優劣の話ではなくて。小説は文字という記号の連なりだけで表現する分、読む方々に余白を委ねることができる。みなさんの各々の物語にしてもらえるよさがあるし、そこが映画と小説の大きな違いなのかなと思っています」

佐藤「ゲームが小説や映画と決定的に違うのはインタラクションで成り立っていて、プレイヤーに操作を渡してしまうところ。それがあるからホラーゲームを作るのは大変で、ここで驚いてほしいのにプレイヤーがそのタイミングで来てくれないとか、いろいろな難題があるんです。でも、作り手がコントロールできないところが逆にホラーゲームのおもしろさだなとも思っていて。制作者が仕掛けたギミックからユーザーたちがこちらの想像していない怖さをどんどん見つけ出して、ユーザーの数だけ恐怖のバリエーションが増えていくのが魅力でもあるんですよ」

見えない敵と対峙するエレナ、決着の行方は…(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.
見えない敵と対峙するエレナ、決着の行方は…(『インビジブルハーフ』) [c] 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.

――みなさんがそもそも“怖いもの”に惹かれて、それを表現しようとするのはなぜですか?

背筋「わからないですね。それが理由です。たぶん、それがわかったら怖い小説を書いてないような気がします。すごく哲学的な話ですけど、わからないから、書いているんだと思いますね」

佐藤「私は単純に不思議なことが好きで、奇跡を見てみたいからなんですけど、そう思った時に一番身近にあったのがホラーというジャンルだったんです。神様を見ることも宇宙人に会うことも簡単にはできない。だけど、ホラーというジャンルのなかではその時に感じるであろう自分の未知の感覚を味わって、活性化させることが出来ますからね(笑)」

西山「僕は怖いものは実は苦手で。苦手だからこそ、さっきもお話したように、恐怖を乗り越える瞬間にカタルシスを感じるホラーが好きなんです。そのなかで描かれる登場人物の成長みたいなものにグッと惹かれたりもするから、その要素は自分の映画にも入れたいといつも思っているんです」

――話は変わりますが、背筋さんの同名小説を清水崇監督が映画化した『口に関するアンケート』もちょうど現在公開中なので、ご覧になった感想をお聞きしたいです。

背筋のホラー小説を映画化した『口に関するアンケート』(公開中) [c] 2026映画「口に関するアンケート」製作委員会
背筋のホラー小説を映画化した『口に関するアンケート』(公開中) [c] 2026映画「口に関するアンケート」製作委員会

佐藤「私は度肝を抜かれました。なんだろう? 原作ももちろん読んでいますけど、清水崇監督のパンク魂を見たような気がして。『近畿地方のある場所について』の時の背筋さんと白石晃士監督のシナジーもすごく楽しかったけれど、清水監督との今回のシナジーもまたこちらの予想を遥かに超えた斜め上のおもしろさで。想像しているものよりもぶっ飛んだ映画になっていました(笑)」

西山「僕も原作を拝読してから観たんですけど、もちろん怖かったです。しかも、清水さんの近年の例えば『犬鳴村』を始めたとした“恐怖の村”シリーズや『あのコはだぁれ?』などのラインとはまた違う世界観になっていて…」

佐藤「なんか、清水監督の初期の雰囲気を感じるよね」

西山「そう。そんなJホラーの原点的な表現もありながら、すごく新しい俳優陣がキャスティングされているし、背筋さんの作品自体の新しさもあるから、その新旧のかけ算で未知の恐怖に変換されている。それに、蝉の鳴き声とかがいい意味でイヤ~な感じで(笑)。映画館から出てきた時に蝉の鳴き声が聞こえてきたら最悪だな~と。それって表現としては最高におもしろいから、めちゃくちゃいいなって感心している自分もいて。僕が監督したドラマにも出演してくれた綱啓永さんも出ているので、そこも楽しみだったんですけど、キャストのみなさんのお芝居もすごく魅力的で。寄りの画が多いので、ある種の演劇を観ているような感覚にもなりました」

佐藤「確かに、前衛的な演劇みたいなところもあったね」

背筋「私はもともと清水監督のファンだったので、こんなふうに仕上げていただけたんだという喜びがまずありました。小説をただなぞるのではなく、ご自身の世界観のなかに原作の要素を取り込んで、清水崇監督らしさみたいなものが随所に感じられる作品にしていただけたのがすごくうれしかったんです」

心霊スポットとして有名な墓地の呪われた木の噂とは?(『口に関するアンケート』) [c] 2026映画「口に関するアンケート」製作委員会
心霊スポットとして有名な墓地の呪われた木の噂とは?(『口に関するアンケート』) [c] 2026映画「口に関するアンケート」製作委員会

――具体的な映像表現でうまいなと思ったところや、こう来たか!?っと唸ったり、驚かされたりしたところもありましたか?

背筋「先ほどの『インビジブルハーフ』の話とも重なるんですけど、細かい表現がどうこうではなく、奇妙な空気感で作品全体を構築していますよね。“なにかがおかしくなってきている”と思うようなことをたぶん意図的にされている。しかもそれを作劇ではなく、第四の壁(現実世界とは違う概念上の目に見えない壁)を突破してくるような壊れ方を随所に散りばめる形でされていたから驚きました。小説では文字の色や大きさを変えることで表現していた“歪み”を空気感で再現していただいていて、これこそが映像の力のなせる技だとも思いましたね」

――最後に、みなさんがリスペクトしている一番怖かったホラー映画を1本ずつ教えてください。

西山「(瞬時に)僕はスペイン映画の『REC/レック』。1作目です」

背筋「え~、ズルっ!」

西山「えっ、なんで?」

背筋「いや、あれはおもしろいから」

西山「本当にいいんですよ、あれ。めちゃくちゃ怖い、あの話。ヤバ過ぎる!」

背筋「私もそれにしとこうかな(笑)」

西山「『REC/レック』は作品全体を通して怖いんだけど、僕は後半の、屋根裏部屋に行ってからがけっこう衝撃で。暗くてマジで何も見えない暗闇の映像のなかにあの女の人の顔がずっと映っていて…」

背筋「でも、あれってジャンプスケアじゃない?」

西山「そうなんだけど(笑)。リバイバルの時に映画館であのシーンを観て、マジで帰りたいと思ったから。それぐらい耐えられなかったし、嫌だった。映画館から本当に帰りたいと思った唯一のホラー映画なんです」

背筋「リスペクトとはちょっと違うかもしれないけれど、私が本当に帰りたいと思ったホラー映画は『ゴーストランドの惨劇』かな」

西山「ああ!」

背筋「『マーターズ』のパスカル・ロジェ監督が撮ったあの作品は本当に途中で帰りたいと思った」

佐藤「『マーターズ』が一番嫌だけど、フレンチホラーは描写が最悪だからね」

背筋「そう、フレンチホラーの嫌な部分がすべて入っていたから我慢の限界だったんですよ」

佐藤「私がリスペクトしているのは『死霊のはらわた』と『死霊のはらわたII』。サム・ライミは私が一番愛してやまない監督なので(と言いながらサム・ライミの名刺を見せて)、いつかまたお会いできることを願いお守り代わりに持ち歩いているんですよ(笑)」

文/イソガイマサト

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ