1. トップ
  2. トレンド
  3. 新幹線デッキで“折りたたみ椅子”を広げて満喫したら…?アディーレ法律事務所の見解は

新幹線デッキで“折りたたみ椅子”を広げて満喫したら…?アディーレ法律事務所の見解は

  • 2026.8.30
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)

新幹線が混雑し、席が空いていないため、デッキで過ごした経験がある方もいるでしょう。長時間の移動となれば、「少しでも座って体を休めたい」と感じることもあるかもしれません。

では、少しでも体を休めようと、折りたたみ式のアウトドアチェアなどを持ち込み、デッキに広げて座ることはできるのでしょうか。

今回は、新幹線のデッキでアウトドアチェアを使用する行為について、持ち込みと使用のルールの違いや、通行を妨げた場合の問題、事故が起きた際に問われる可能性のある責任などを、アディーレ法律事務所の大垣優希弁護士に伺いました。

持ち込みはできても「使用」は別?新幹線のデッキで椅子を広げる法的な問題

---折りたたみ式のアウトドアチェアを新幹線に持ち込み、デッキや通路で広げて座る行為は、法的に問題となる可能性があるのでしょうか?

大垣優希弁護士(第一東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所:

「状況によっては法的な問題となる可能性があります。

まず、折りたたみ式のアウトドアチェアを新幹線内へ持ち込むこと自体は、直ちに禁止されているわけではありません。JRの旅客営業規則では、『列車の状況により、運輸上支障を生ずるおそれがないと認められるとき』に限り、3辺の最大の和が250センチメートル以内、重量30キログラム以内、長さ2メートル以下の物品を手回り品として車内へ持ち込めると規定されています(308条1項)。一般的な折りたたみ椅子であればこの基準を満たすものが多いため、別途、特大荷物としての取扱いが必要となる場面はあるものの、収納した状態での持込み自体は原則として認められると考えられます。

もっとも、この規定はあくまで『持込み』を認めるものであり、『使用』を認めるものではありません。鉄道運輸規程では座席又は通路をふさぐおそれのある物品の持ち込みが禁止されています(23条1項8号)。また、JRも公式サイトにおいて、『他のお客さまにご迷惑をおかけするおそれがある場合や列車が大変混雑している場合などは、持込みをお断りする場合があります』と案内しており、手回り品については他の利用者や輸送の安全に配慮した取扱いが求められています。

新幹線のデッキや通路は、乗客の移動や乗降のための共有スペースであるとともに、事故や災害発生時には避難経路としての役割も担っています。そのため、持ち込んだ椅子をデッキで広げて使用し、通路を狭くしたり、他の乗客の通行や乗降を妨げたりする場合には、係員から移動や撤去を求められることがあります。

さらに、そのような状態を継続したり、乗務員の指示に従わなかったりする場合には、鉄道営業法において規制の対象となる、車内における秩序を乱す行為と評価される可能性があります(42条)。その結果、移動や撤去を求められるだけでなく、状況によっては車外への退去措置がとられることもあり得るでしょう。」

スーツケースを持って立つのはOKなのに、椅子に座るのはなぜ違う?

---混雑した新幹線のデッキでは、スーツケースを持ったまま立っている乗客もいます。荷物を持って立つ行為と、アウトドアチェアを広げて座る行為には、法的にどのような違いがあるのでしょうか?

大垣優希弁護士(第一東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所:

「混雑した新幹線のデッキでスーツケースを持って立つ行為と、椅子を広げて座る行為との最大の違いは、それが『通常想定される利用方法かどうか』という点にあります。

新幹線では、繁忙期や自由席の混雑時などに座席を確保できず、デッキで立って過ごす乗客がいることは当然に想定されています。また、旅行や出張に伴いスーツケースを携行することも一般的な利用形態です。そのため、手元でスーツケースを管理しながらデッキに立っていること自体は、運送契約上許容される通常の鉄道利用の範囲内の行為と考えられます。もっとも、スーツケースを通路上に放置したり、乗降口付近を塞いだりして、他の利用者の通行の妨げとなるような場合には、係員から移動を求められる可能性があります。

これに対し、アウトドアチェアなどをデッキで広げて座る行為は、本来は荷物として持ち込まれた物品を座席代わりに使用するものです。しかし、新幹線のデッキは乗客全員が利用する共有空間であり、座席としての利用が予定されている場所ではありません。そのため、椅子を広げれば、その分だけ一定のスペースを継続的に占有することになり、通行や乗降への支障が生じやすくなります。その結果、運送契約上の利用方法を逸脱していると判断され、スーツケースを持って立っている場合と比べて、係員から移動や撤去を求められる可能性が高まるといえるでしょう。」

通行を妨げたり事故が起きたりしたら?損害賠償や刑事責任の可能性も

---デッキに広げた椅子が他の乗客の通行や乗降を妨げたり、椅子が原因で転倒や接触事故が起きたりした場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか?

大垣優希弁護士(第一東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所:

「実際に、椅子によって他の乗客の通行や乗降に支障が生じている場合には、係員から移動や撤去を求められる可能性が高まりますし、車内における秩序を乱す行為に該当すると評価されて車外への退去を求められることも十分に考えられます。

さらに、通路をふさぐおそれのある物品については、運送の委託を受けた物品とみなされ、相当運賃を請求される可能性があります(鉄道運輸規程25条1項)。

また、新幹線では走行中の揺れや急ブレーキによって立っている乗客がバランスを崩すこともあります。通路上に置かれた椅子につまずいて乗客が転倒し、けがをした場合や、椅子が障害物となって乗客同士が接触し事故が発生したような場合には、椅子を置いていた人に過失が認められれば、不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

さらに、具体的な状況によっては過失致傷罪や重過失致傷罪、威力業務妨害罪など、刑事上の責任が問題となることもあるでしょう。特に他の乗客を負傷させたような場合には、単なるマナー違反にとどまらず、法的責任が問われる可能性が高まるといえます。

このように、新幹線のデッキや通路に椅子を置いて使用する行為は、その態様によっては民事上・刑事上の責任につながる可能性があります。

もっとも、本件は単に法的責任の問題に尽きるものではありません。新幹線のデッキや通路は、多くの乗客が共同で利用する空間であるとともに、非常時には重要な避難経路としての役割も担っています。そのような公共性を踏まえれば、他の利用者の安全や円滑な移動に配慮し、通行や乗降の妨げとなる行為を避けることが重要です。ルールだけでなくマナーの観点からも、節度ある利用が求められる場面であるといえるでしょう。」

新幹線のデッキは、乗客みんなが利用する共有スペース

折りたたみ式のアウトドアチェアは、一定の条件を満たせば新幹線へ持ち込むこと自体は原則として認められるものの、「持ち込めること」と「デッキで広げて使用できること」は別に考える必要があるようです。

特に、デッキや通路は乗客が移動したり乗り降りしたりする共有スペースです。椅子を広げることで通行や乗降を妨げれば、係員から移動や撤去を求められる可能性があります。また、椅子が原因で他の乗客が転倒するなどの事故が発生した場合には、損害賠償責任や、状況によっては刑事上の責任が問題となる可能性もあるとのこと。

混雑時に長時間立ち続けるのは大変ですが、新幹線のデッキは座席としての利用が予定された場所ではありません。自分だけでなく、周囲の乗客が安全かつ円滑に利用できるよう配慮することが大切といえるでしょう。


監修者:大垣優希弁護士(第一東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所

undefined
大垣優希弁護士(第一東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所

夫婦問題や遺産相続、債務整理など、多様な一般民事分野に関心を持つ。法律分野に留まらず、日本化粧品検定1級の資格も保有するなど、専門性のさらなる深化にも意欲的で、身近な悩みに根拠をもって寄り添う解説を志す。 アディーレ法律事務所は、依頼者が費用の負担で相談をためらわないよう、弁護士費用で損をさせない保証制度(保証事務所)を導入しています。「何もしない」から「弁護士に相談する」社会を目指しています。

弁護士法人AdIre法律事務所(第一東京弁護士会)

undefined
弁護士法人AdIre法律事務所(第一東京弁護士会)

メディア出演弁護士
保証制度

の記事をもっとみる

注目コンテンツ