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SNS用に大量注文→ほぼ残しする客…店員の「完食して」は法的に強制できる?弁護士に聞いてみた

  • 2026.8.30
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

飲食店で料理を注文したものの、食べきれずに残してしまった経験がある人もいるでしょう。体調や料理の量など、やむを得ない事情がある一方で、SNSでは、写真や動画を撮ることなどを目的に大量の料理を注文し、ほとんど手をつけずに残すといった行為が話題になることもあります。

こうした行為に対しては、「食べ物を粗末にするべきではない」という声がある一方、「代金を支払っているのだから、注文した料理をどうするかは客の自由なのでは」と考える人もいるかもしれません。また、食べ残しを防ぐため、店側が「完食」をルールとして設けたり、追加料金を請求したりするケースもあります。

では、代金を支払った料理であれば、意図的に大量に残しても法的には問題ないのでしょうか。また、飲食店は客に完食を求めたり、食べ残しに対して追加料金を請求したりできるのでしょうか。弁護士の寺林智栄さんに、飲食店での食べ残しをめぐる法的な考え方について伺いました。

「代金を払ったから自由」は通用する?意図的な食べ残しの法的な問題

---「代金を支払っているのだから、注文した料理をどうするかは自由」と考える人もいますが、最初から食べる意思なく大量に注文し、意図的に残す行為は法的に問題となる可能性があるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「『代金を支払っているのだから、注文した料理をどうするかは自由だ』と考える人もいるかもしれません。しかし、注文した料理を意図的に大量に残す行為が、常に法的に問題がないわけではありません。

通常の飲食店では、料理を注文して代金を支払うことで、料理をその場で飲食することを内容とする契約が成立すると考えられます。単に食べきれなかったというだけで、直ちに消費者が損害賠償責任を負うわけではありません。しかし、例えば『食べきれる量だけ注文する』といった店のルールを明確に示しているにもかかわらず、最初から食べる意思なく大量に注文し、意図的に廃棄させるような行為であれば、契約上の義務違反や、店に生じた損害について賠償責任が問題となる可能性があります。

特に、食べ放題などで、食べきれない量を意図的に取り分けて残す行為については、利用規約や店内のルールに違反する可能性があります。一方、通常の食事で体調不良や料理の量が多かったために結果として残してしまった場合まで、直ちに違法となるわけではありません。

消費者庁も、外食時には『食べきれる分だけ注文し、食べきる』ことを食品ロス削減の基本的な行動として示しています。

したがって、『代金を払ったから何をしてもよい』とまではいえず、具体的な契約内容や店のルール、食べ残しに至った事情などを踏まえて判断する必要があります。」

「完食してください」店側がルールを設けることはできる?

---飲食店が「注文した料理は完食してください」「食べきれる量だけ注文してください」といったルールを設け、客に守るよう求めることはできるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「飲食店が『注文した料理は完食してください』『食べきれる量だけ注文してください』といったルールを設け、客に守るよう求めること自体は、原則として可能です。先ほども述べたように、消費者庁も、外食時には『食べきれる分だけ注文』し、『食べきる』ことを食品ロス削減の基本的な行動として示しています。

もっとも、『完食』というルールを設けたからといって、客が食べきれなかった場合に、飲食店がどのような措置でも自由に取れるわけではありません。例えば、完食できなかったことを理由として、料理代とは別に著しく高額な違約金を請求するなど、消費者に過大な負担を課す条項は、消費者契約法上、無効となる可能性があります。

また、完食できなかった事情も重要です。最初から食べる意思なく大量に注文した場合と、注文時には食べきれると思っていたものの、体調不良や料理の量が想定以上だったため残してしまった場合とでは、同じように扱うのは適切ではありません。

したがって、飲食店としては、『食べきれる量だけ注文する』『食べ残しを減らす』といったルールを明確に示すことはできますが、違反した客に過度な経済的負担を課したり、体調不良などやむを得ない事情まで一律にペナルティの対象としたりすることには慎重な対応が必要です。」

食べ残したら「追加料金」「罰金」…店側は請求できる?

---食べ残した客に対して、飲食店が追加料金や「罰金」を請求するルールを設けることは、法的に問題ないのでしょうか?

寺林智栄さん:

「食べ残した場合に追加料金や『罰金』を請求するルールを飲食店が設けること自体が、直ちに違法となるわけではありません。例えば、食べ放題で『食べ残しがあった場合は追加料金を請求する』と事前に明確に告知し、その金額が食材の廃棄など、実際に生じる損害との関係で合理的な範囲に設定されているのであれば、一定の合理性があると考えられます。

一方、実際の損害を大きく上回るような高額な『罰金』を一律に課す場合には、問題となる可能性があります。消費者契約法10条は、消費者の権利を制限し、又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。

また、追加料金が『違約金』として設定されている場合には、その法的性質や発生条件によっては、消費者契約法9条などの規制との関係も検討する必要があります。同条は、一定の違約金等について、事業者に生じる『平均的な損害』を超える部分を無効としています。

したがって、飲食店が食べ残し対策として追加料金を設定する場合には、事前に分かりやすく表示した上で、食べ残しによって生じる実際の損害との均衡が取れた金額とすることが重要です。特に『罰金』という名称だけで高額な金銭を徴収することは、慎重に検討する必要があります。」

食べ残した事情によっても判断は異なる

料理を残したからといって、それだけで直ちに法的な責任を問われるわけではありません。一方で、「代金を払っているから自由」というわけでもなく、最初から食べる意思なく大量に注文するなど、具体的な事情によっては契約上の義務違反や損害賠償責任が問題となる可能性があるとのことです。

また、飲食店側が「食べきれる量だけ注文する」といったルールを設けること自体は原則として可能ですが、食べ残した客に過度な負担を課せるわけではありません。追加料金を設ける場合にも、事前に分かりやすく示したうえで、実際の損害とのバランスを考える必要があります。

体調不良や想定以上の量だったために食べきれなかった場合と、最初から食べる意思なく大量に注文した場合とでは事情が異なります。客側も店側も、こうした違いを踏まえて考えることが、食べ残しをめぐるトラブルを防ぐことにつながるでしょう。


監修者:寺林智栄

2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位獲得。読む方にとってわかりやすい解説を心がけています。

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