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洋画黎明期の 「生徒」と「先生」。東京藝術大学の講義とフォンタネージの展覧会

  • 2026.7.25
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黒田清輝《トゥルプ博士の解剖講義》1888年 東京藝術大学蔵 レンブラント・ファン・レイン原作

山口桂さん、河内タカさん、小崎哲哉さんが交代で担当している『婦人画報』のアートコーナー「アートの杜 賢者の深掘り」では、開催中の注目の美術展をピックアップ。

「クリスティーズジャパン」代表取締役社長の山口桂さんが今回ご紹介するのは、『藝大式 美術の “ミカタ”─この夏、藝大生になる─』と、『フォンタネージ─イタリアの光・心の風景』です。

藝大生になった気分で名画を読み解く

東京藝術大学は、言わずと知れた芸術家、若しくは芸術に携わる人材を育てる日本を代表する国立大学であるが、その内側を知る事は容易ではなく、特に授業内容や作品制作に於ける実地訓練がどの様に行われているかは、一般人に取っては想像するのも困難ではないだろうか。

そんな我々の疑問を解消してくれそうな展覧会が、7月24日から藝大美術館で開催される。この『藝大式美術の“ミカタ”—この夏、藝大生になる—』は今年から3年連続で夏に開催されるシリーズ展の第1回で、藝大現役講師陣が持つ12コマの講義を展覧会とする、大変面白い企画展だ。そして「講義」といってもスライドやパワポではなく、ホンモノの美術作品を使った展示により「履修」できるもので、夏休み企画らしく、子どもから大人まで楽しめる内容になっている。

そしてゴッホから藝大の旧教授陣、藤田嗣治ら卒業生の作品までバラエティに富むホンモノの「講義作品」の内、私が大好きな作品をここに紹介したい……黒田清輝の《トゥルプ博士の解剖講義》だ!この作品は実はハーグのマウリッツハイス美術館蔵、レンブラントが1632年に制作した作品の模写なのだが、当時22歳だった黒田が、このレンブラント初の集団肖像画の何に惹かれたのか?と考えたり、当時の美術教育における「模写」の重要性と黒田のそれへの取組みの真剣さ、また原作の持つ「明暗法」への果敢な挑戦も見て取れる、若き時代の黒田作品としての魅力に溢れる名品だと思う。この他にも原田直次郎の《靴屋の親爺》など、日本洋画黎明期の名品が学べる事も嬉しい展覧会だ。

アントニオ・フォンタネージ《朝》1855-58年トリノ市立近現代美術館 画像提供=トリノ博物館財団

さて今回ここで紹介するもう一点は、藝大の前々身である「工部美術学校」教師であった、アントニオ・フォンタネージの《朝》で、本作はバルビゾン派などからの影響を受けた、彼らしい詩情豊かな風景画だ。そして「お雇い外国人」として以外の彼の画業を知る事の出来る本展には、日伊国交樹立160周年記念展に相応しく、彼の弟子である浅井忠や次世代のイタリア作家の作品なども出展されるのも楽しみ。

日本洋画黎明期の「生徒」と「先生」……東京と京都の2つの展覧会でどちらを先に体験するかは、貴方次第だ!

藝大式 美術の “ミカタ”─この夏、藝大生になる─

美術の歴史、実技、表現、鑑賞、保存・修復など多様なテーマについて、黒田清輝、和田英作らの歴代教授や藤田嗣治など卒業生の作品、ゴッホや現役学生の作品まで、本物を教材として「聴講」するように鑑賞できる。

会期/~2026年9月23日(水・祝)
時間/10~17時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日/月曜(8月10、9月21日は開館)
料金/一般2,000円ほか
tel.050-5541-8600
会場/東京藝術大学大学美術館 本館 [東京・上野]
Google mapで確認する
東京都台東区上野公園12-8

東京藝術大学大学美術館 公式サイト

日本イタリア国交樹立 160周年記念・フォンタネージ来日 150周年記念
フォンタネージ─イタリアの光・心の風景

明治初期に来日し、「お雇い外国人」として2年間という短い期間ながら日本近代洋画の礎を築いたフォンタネージの画業を辿る展覧会。バルビゾン派やターナーらの影響を受けた詩情豊かな風景画200点以上を紹介する。

会期/~2026年10月4日(日)
時間/10時~18時(金曜~20時) ※入館は閉館の30分前まで
休館日/月曜(7月20日、9月21日は開館)、7月21日、9月24日
料金/一般2,000円ほか
tel.075-761-4111
会場/京都国立近代美術館[京都・岡崎]
Google mapで確認する
京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26-1

京都国立近代美術館

やまぐちかつら〇1963年東京都生まれ。世界で最も長い歴史を誇る美術品オークションハウスの日本支社「クリスティーズジャパン」代表取締役社長。長年、東洋美術部門インターナショナル・ディレクターを務めてきた古美術の目利き、日本美術のスペシャリスト。近著は『死ぬまでに知っておきたい日本美術』(集英社新書)。

文=山口桂 編集=吉岡尚美(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年8月号より

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