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ASDの人が「自己中心的」「他者視点がない」と誤解される理由とは?

  • 2026.7.21

ASD(自閉スペクトラム症)の人はしばしば「自分の話ばかりする」「人の気持ちが分からない」と言われることがあります。

しかし、ASDの人は他者への関心や思いやりが欠けているわけではありません。多くの場合、情報の受け取り方や伝え方に、生まれつきの特性による違いがあるだけなのです。

その違いが、周囲からは「自己中心的」に見えてしまうことがあります。神谷町カリスメンタルクリニック院長・松澤 美愛先生監修のもとお届けします。

ASDの人は「他者視点がない」と言われるのはなぜ?

「他者視点がない」という言葉は、心理学でいう「心の理論」という考え方と関係しています。心の理論とは、相手の気持ちや考えを推測する力のことです。

過去の研究では、ASDの人はこの力に特有の特徴があるとされてきました。相手が何を考えているかを直感的に読み取ることが苦手な場合があり、この特徴が「他者視点がない」という表現につながっていると考えられます。

ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。それは、「相手の気持ちを考えられない」ことと、「相手を思いやる気持ちがない」ことは、まったく別だという点です。

相手を大切に思う気持ちは高い

ASDの人の多くは、相手を大切に思う気持ちを強く持っています。ただ、その気持ちを察したり、表現したりする方法が、多数派の人とは異なるだけなのです。

近年の研究では、この認識にも見直しが進んでいます。すれ違いはASDの人だけの問題ではなく、特性の異なる者同士がコミュニケーションを取るときに、双方の側で理解のズレが生まれやすいという考え方が注目されています。

つまり「ASDの人が一方的に他者視点を欠いている」というより、「お互いの前提が違うために、うまく伝わらない」と捉えるほうが実態に近いといえます。

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ASDの人が「自己中心的」と誤解されやすい理由

ASDの人が自己中心的だと誤解されやすいのには、いくつかの理由があります。

興味のあることを話し続けるときがある

まず挙げられるのが、興味のあることを熱心に話す傾向です。好きなテーマについて詳しく、時に長く話し続けることがあり、これは知識欲の高さや物事への深い探究心の表れでもあります。

ただ、聞き手の反応に気づきにくいことがあるため、「一方的だ」と感じられてしまうことがあります。

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物言いが率直であることが多い

次に、率直な物言いも理由のひとつです。ASDの人は思ったことをそのまま伝える傾向があり、これは誠実さの表れでもあります。

しかし、相手の気持ちを気遣った婉曲的な言い方が少ないため「配慮がない」と受け取られてしまうことがあります。

急な予定変更などが苦手な傾向

また、変化への対応が苦手な特性も関係しています。決まった予定やルールを大切にする傾向があるため、急な予定変更などに強いストレスを感じやすく、周囲からは「わがまま」に見えてしまうこともあります。

実際は、見通しの立たない状況への不安が強いだけなのです。

表情やリアクションを表に出しにくい

さらに、表情やリアクションが控えめに見えることも、誤解を招きやすいポイントです。

内心では強く関心を持っていても、それが表情や相づちとして表に出にくいことがあり、「興味がなさそうだ」「冷たい」と受け取られてしまうことがあります。

これらはいずれも、悪意によるものではありません。情報の処理の仕方が多数派とは違うために生じる行動なのです。

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ASDの人によくある「コミュニケーションのすれ違い」とは

具体的なすれ違いの例も見ていきましょう。

会話のすれ違い

よくあるのが、言葉の受け取り方をめぐるすれ違いです。

ASDの人は言葉を文字通りに受け取る傾向があり、「適当にやっておいて」のような曖昧な指示は伝わりにくいことがあります。皮肉や冗談も、真に受けてしまうことがあります。

非言語的コミュニケーションのすれ違い

また、表情や声のトーン、場の空気といった、言葉にならない情報の読み取りが苦手な場合もあります。相手が不機嫌になっていることに気づかず、会話を続けてしまうようなケースです。

「暗黙の了解」に気づきにくいことも、すれ違いの原因になります。「今忙しいから話しかけないでほしい」といった、あえて言葉にされていない期待は、明示されない限り伝わりにくいのです。

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音や光、感覚に対するストレス度合いのすれ違い

そして、音や光、人混みなどへの感覚の敏感さも見過ごせません。強いストレスを感じてその場から距離を置いたり、会話への反応が薄くなったりすることがあり、これが「興味がない」と誤解されることもあります。

こうしたすれ違いは、どちらか一方だけの問題ではありません。お互いの伝え方や受け取り方の違いを理解することが、解決への第一歩になります。

ASDの人と円滑にコミュニケーションをとるための工夫

周囲の方が意識できる工夫を、3つご紹介します。

1つ目は、具体的に伝えることです。「早めに」「なるべく」といった曖昧な表現は避け、「15時までに」のように具体的な言葉で伝えると、誤解が減ります。

2つ目は、気持ちや意図を言葉にすることです。表情や態度で察してもらうのではなく、「今、少し困っている」と言葉で伝えてみると、状況が伝わりやすくなります。

3つ目は、決めつけずに確認することです。「わざとやっている」と判断する前に、「今のはどういうつもりだったか」を本人に聞いてみましょう。

多くの場合、悪意はなく、確認することで誤解を防ぐことができます。

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ASDの人が誤解されず人間関係を築くためのポイント

ASDの当事者の方が意識できるポイントも、3つご紹介します。

自分の特性を信頼できる人に伝えておく

1つ目は、自分の特性を信頼できる人に伝えておくことです。「率直に話してしまうことがある」など、あらかじめ伝えておくと、周囲も受け止めやすくなります。

もし自分の特性が分かりにくかったら、信頼できる近くにいる人に聞いてみましょう。「あなたにはこんな傾向やあんな傾向がある」と教えてくれることでしょう。

それを自分の特性と捉えて、周りの人に伝えていく意識を持つとコミュニケーションがスムーズになります。

わからないときは確認する

2つ目は、わからないときは遠慮せず確認することです。相手の反応が読み取りにくいときは、「今の話、大丈夫だった?」と聞いてみましょう。憶測で判断するより、誤解が少なくなります。

自分に合った伝え方にする

3つ目は、自分に合った伝え方を活用することです。話し言葉が苦手な場合は、メールやメモなど文字での伝達を活用してみると、気持ちが伝わりやすくなります。

「特性による違い」は性格の欠点ではない

ASDの特性の表れ方には個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。大切なのは「特性による違い」を性格の欠点として捉えないことです。

理解が広がることで、すれ違いは少しずつ減らしていけます。

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監修者プロフィール

神谷町カリスメンタルクリニック院長 松澤 美愛先生

東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め形態も地域も様々なところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業、院長。精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会
URL https://charis-mental.com/
InstagramURL https://www.instagram.com/charismentalclinic

<Text:外薗 拓 Edit:編集部>

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