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高速回転で“透明化”する新型ドローン「ファントムツイスト」

  • 2026.7.20
高速回転する新型ドローン。半透明に見える / Credit:Michael Rubenstein(Northwestern University)

高速で回転する扇風機の羽根が、まるで半透明になったように見えることがあります。

米ノースウェスタン大学(Northwestern University)の研究チームは、この身近な現象を利用して、飛行中に姿が見えにくくなる新型ドローンを開発しました。

「ファントムツイスト(Phantom Twist)」と名付けられたこの機体は、全身を毎秒最大25回転させることで、背景に浮かぶ淡い”もや”のような姿へと変化します。

研究成果は2026年7月16日、オーストラリアのシドニーで開催された国際会議「Robotics: Science and Systems 2026」で発表されました。

目次

  • 機体全体を毎秒25回転させ、機体を「半透明」に見せる
  • 約2万通りから「最も見えにくい部品配置」を探し出す

機体全体を毎秒25回転させ、機体を「半透明」に見せる

これまでドローンやロボットを見えにくくする研究では、背景に似た色や模様を使う迷彩、透明な材料、光を利用した仕組みなどが検討されてきました。

これに対してファントムツイストは、機体の外見を背景へ近づけるのではなく、人間が高速運動をどのように見るかを利用しています。

私たちの目と脳は、ごく短い時間に入ってきた光の情報をまとめて処理します。

そのため、高速回転する扇風機やプロペラの羽根は、輪郭を失って半透明に見えることがあります。

とはいえ、一般的なクアッドコプターでは、4枚のプロペラが回っても、中央の胴体やアームはほぼ静止しているため、機体本体は見えたままです。

そこで、ファントムツイストでは、搭載するモーターとプロペラは1基だけにしています。

プロペラが一方向へ回ると、その反作用で、バッテリーや制御基板を含む機体本体が反対方向へ高速回転します。

高速回転により透けて見える / Credit:Michael Rubenstein(Northwestern University)

回転速度は毎秒15〜25回に達し、個々の部品の像が時間的に平均化されることで、飛行中の機体は薄い輪やもやのように見えるのです。

この回転は、コマのように姿勢を安定させる働きも持っています。

さらに機体は、1回転の中でモーターへの2回の出力指令を切り替え、平均出力で高度を調整し、出力差とタイミングで機体を傾けて水平方向へ移動することも可能です。

ただし、機体全体を高速回転させれば、どのような形でも目立たなくなるわけではありません。

次項で、透明化のための更なる工夫も見てみましょう。

約2万通りから「最も見えにくい部品配置」を探し出す

単に期待を高速回転させるだけだと、複数の部品が同じ軌道を通ることで、像が重なって濃い同心円が生まれます。

そこで研究チームは、モーター、プロペラ、制御基板、2個のバッテリー、カウンターウェイトの位置や角度を変え、安定飛行に必要な10種類の条件を満たす約2万通りの設計を計算機上で得ました。

次に10種類の上下方向の角度ごとに、1回転を120分割して画像化し、その平均から動きによるブレ・残像を再現。

その像を100種類の背景に重ね、人間の画像類似判断と比較的よく合う指標で、背景との差を評価しました。

さらに可視性スコアが低かった500種類のデザインを選び、部品の位置や向きを微調整しました。

最終設計では、部品を回転中心から離し、異なる高さや角度へ分散させることで、回転時の像が同じ場所へ重ならないようにしています。

一見すると不規則な配置ですが、回転すれば濃い輪郭が薄まり、全体が淡い半透明の雲のように広がるのです。

こうして完成したファントムツイストは、一般的なクアッドコプターに比べて「約10倍見えにくい」と説明されています。

また、実際に製作した3種類の試作機は、いずれも約10分間の安定したホバリングを行えました。

もちろんプロペラ音は大きく、明るい場所ではちらつきが見える場合もあります。

それでも、人間や動物に与える視覚的な影響を抑えられるなら、野生動物の観察や環境調査、インフラ点検などに役立つ可能性があります。

このように「ファントムツイスト」は、透明な素材を使うのではなく、人間の「見え方」から逆算して姿を薄くした、新しいタイプのドローンなのです。

参考文献

New spinning drone hides in plain sight
https://news.northwestern.edu/stories/2026/07/new-spinning-drone-hides-in-plain-sight

元論文

Computational Design of a Low-Visibility UAV Using a Human-Aligned Perceptual Metric
https://roboticsconference.org/program/papers/196/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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