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アルゼンチン代表の「ダークブルー」W杯ユニフォーム、伝統美術へのオマージュに隠された深い意味とは?

  • 2026.7.19
David Ramos / Getty Images


2026年W杯の準決勝、アトランタのピッチに立つアルゼンチン代表の姿は、いつもの印象と少し違って見えるかもしれない。「ラ・アルビセレステ(白と空色)」の愛称で知られる彼らが、宿敵イングランドとの大一番に向けて、アウェイ用の「ダークブルー」ユニフォームの着用をFIFAに正式申請したからだ。アウェイキットを選ぶこと自体は珍しくないが、今回の決定にはサッカーファンなら誰もがニヤリとしてしまう、特別な理由が隠されている。

アルゼンチンを象徴する「白と空色」の歴史

Argentine center-back Cristian Romero during the quarterfinal against Egypt. Chris Brunskill/Fantasista / Getty Images

アルゼンチンのホームユニフォームといえば、世界中のサッカーファンがすぐに思い浮かべるデザインがある。20世紀初頭から受け継がれてきた、おなじみの「空色と白の縦縞」だ。これまでに成し遂げた3度のW杯優勝をはじめ、アルゼンチンサッカーの歴史的な名場面の多くはこのユニフォームと共に刻まれてきた。しかし今回、アウェイ用としてアディダス(Adidas)がデザインした1着は、これまでのネイビーとは一線を画す大胆な美しさを放っている。

ブエノスアイレス発祥の伝統美術「フィレテアード・ポルテーニョ」とは?

2026年のアウェイユニフォームは、アルゼンチンの伝統的な装飾美術「フィレテアード・ポルテーニョ(fileteado porteño)」からインスピレーションを得た、優美な曲線模様が特徴的だ。この美術は20世紀初頭、イタリア人移民がブエノスアイレスにやってきたことから始まった。手書きの美しい文字や花のディテール、渦巻く装飾ラインを組み合わせたこのアートは、アルゼンチンの文化的なアイデンティティを象徴する重要な一部となっている。

An example of fileteado porteño seen in Buenos Aires’s Boca neighborhood. Anadolu / Getty Images

弾圧を乗り越えてユネスコ無形文化遺産へ

「フィレテアードはもともと、商業的な広告ではなく、純粋な装飾アートとして始まったんだ」と、ブエノスアイレスを拠点に活動するアーティスト、グスタボ・フェラーリ氏は語る。かつては果物屋やパン屋、牛乳配達の荷車などがこの美しい装飾で彩られ、「近所で一番の男がやってきたぞ」といったユーモラスな言葉や、タンゴの歌詞が添えられていたという。1975年の軍事政権下で禁止されるなど政治的弾圧の歴史も経たが、2015年にはユネスコの無形文化遺産に登録された。

アウェイユニフォームを着用しなければならない

「大人の事情」FIFAの規定により、試合でのピッチ上の選手やテレビ観戦する視聴者が識別しやすいよう、両チームのユニフォームには明確なコントラストが必要とされる。日本でも代表ユニフォームの発表は毎回大きな注目を集めるが、アメリカやカナダのように毎年ホームとアウェイの両方をリニューアルする国もある。イングランドがホーム扱いとなる今回の準決勝では、イングランドが伝統的な純白のユニフォームを着用する権利がある。そのため、アルゼンチンのおなじみの空色と白のストライプでは区分けが難しく、必然的に「ダークブルー」のアウェイキットを着用する必要があったのだ。

アルゼンチン人が信じる勝利のジンクス「カバラ」

しかし、今回のブルーキット着用には単なるルールの話に留まらない、別の心理的ストーリーが存在する。南米、特にアルゼンチンのサッカー文化には「カバラ(cábala)」と呼ばれる、過去の成功に基づいたゲン担ぎ(ジンクス)が根強く存在する。実は、イングランドとの過去の対戦において、アルゼンチンがダークブルーのユニフォームを着用した試合では、信じられないほどの好成績を収めているのだ。

Maradona’s “Hand of God” moment at the 1986 World Cup. El Grafico / Getty Images

マラドーナの伝説「神の手」と「世紀のゴール」

最も有名なのが、1986年メキシコW杯準々決勝のイングランド戦だ。伝説の選手ディエゴ・マラドーナが、左手でボールをゴールに押し込んだとされる「神の手」ゴール。そして、ピッチ中央から5人のディフェンダーを抜き去りキーパーまでかわした「世紀のゴール」。あの歴史的瞬間にアルゼンチンの選手たちがまとっていたのが、まさにダークブルーだった。さらに、デイヴィッド・ベッカムの退場で記憶される1998年W杯のPK戦勝利でも、彼らは同じく青を着用していた。

David Beckham being sent off with a red card at the 1998 World Cup. Mirrorpix / Getty Images

ホームカラー着用時のほろ苦い敗戦の歴史

対照的に、W杯でイングランドを相手に通常の「空色と白の縦縞」で臨んだ2回は、いずれもアルゼンチンが敗北している。1回目はイングランドが唯一のW杯優勝を果たした1966年の準々決勝。2回目はベッカムが決定的なPKを決めた2002年大会のグループステージだ。このように勝敗が綺麗に分かれているからこそ、アルゼンチンのサポーターや選手たちにとって、イングランド戦の「ブルーのユニフォーム」は特別な意味を持つのだ。

Argentina v. England in 2005. Richard Sellers/Allstar / Getty Images

イングランドはアルゼンチンのジンクスを恐れるべき?

もちろん、ジンクスを信じるかどうかは自分次第。イングランドの一部メディアが「嫌な予兆か?」と報じてファンを動揺させているが、実はイングランド側にとって心強いデータもある。両国が最後に対戦した2005年の親善試合で、アルゼンチンはブルーを着用していたが、イングランドが3-2で逆転勝利を収めているのだ。迷信に振り回されず、今目の前のプレイに集中して全力を尽くす姿こそ、見る者にパワーを与えてくれるはず。

※この記事は『Town & Country』の翻訳をもとに、ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。

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