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渡邊圭祐×小林亮太×樋之津琳太郎、念願叶い稲葉賀恵と初タッグ 注目作『Yerma イェルマ』挑戦に意気込み

  • 2026.7.15
舞台『Yerma イェルマ』に出演する(左から)渡邊圭祐、小林亮太、樋之津琳太郎 撮影:皆川聡 width=
舞台『Yerma イェルマ』に出演する(左から)渡邊圭祐、小林亮太、樋之津琳太郎 撮影:皆川聡

1930年代スペインの閉塞的な寒村を舞台に抑圧された女性の苦悩と孤独が描かれた、詩人で劇作家であるフェデリコ・ガルシーア・ロルカによる戯曲『イェルマ』。この不朽の傑作を起点として、劇作家のオノマリコが脚本を書き、そして今年2月に第33回読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞したばかりの稲葉賀恵が演出を手がける舞台『Yerma イェルマ』が今秋シアタートラムにて上演される。注目のキャストは、主人公のイェルマ役にここ数年さまざまな方向性の作品への出演が続き目覚ましい活躍ぶりの咲妃みゆが扮するほか、妻との性的な関係や子作りに後ろ向きなイェルマの夫・フアン役を渡邊圭祐、イェルマの幼なじみで彼女と特別な関係でもあるビクトル役を小林亮太、フアンが秘密にしている同性の恋人であるらしい若い男役を樋之津琳太郎が演じることになった。本格的な稽古にはまだ間がある3月下旬、三人で顔を合わせるのはこの日が初めてとなる渡邊と小林と樋之津に今作への想いや意気込みを訊いた。

【写真】咲妃みゆ、渡辺いっけいら実力派キャストが顔をそろえる『Yerma イェルマ』メインビジュアル

◆稲葉賀恵の演出にあふれる期待

――まずは、今回この『Yerma イェルマ』という作品に出演が決まった時の率直な心境からお聞かせいただけますか。

渡邊:僕は初舞台が世田谷パブリックシアターだったこともあって、今度はシアタートラムのほうに立てるんだという喜びが、まず大きかったです。そして稲葉さんの演出を受けられるのが楽しみだな、とも思いました。自分としては久しぶり、約2年ぶりの舞台になるのでワクワクしています。

小林:舞台の仕事ではミュージカル作品を多くやらせていただいているのですが、ストレートプレイのほうにもぜひ足を踏み入れたいなという想いが強くありまして。そして僕もやはりシアタートラムという劇場が、特に自分自身もよく観に行く劇場でもあったので、あそこに立てることがとてもうれしかったですね。さらに渡邊さんと同じく僕にとっても稲葉さんとご一緒できるというのは、すごく大きいことでもありました。

樋之津:僕の場合は舞台に立つこと自体が初めてなので、まずはそこに対するワクワク感と、「どうなるんだろう?」という先の見えない不安な気持ちとがあったんですが。だけど、実は出演が決まってから日が経つにつれて徐々に事の重大さが分かってきたところでもあります(笑)。

「シアタートラムで、稲葉さんの演出? それってものすごいことだよ!」という周りの方々の反応から、ようやく「ヤバイヤバイ、自分は今、すごいことになってるんだ!」と分かってきたというか。大変光栄な場所にトライできる機会なんだと、今は身が引き締まる思いでいます。

――稲葉さんの演出を受けてみたいと思われたのは、それぞれ、たとえばどういうところに魅力を感じられたのでしょうか。

渡邊:そうですね。今だからこそまず言えるのは、読売演劇大賞の最優秀演出家賞を稲葉さんがとられたばかりじゃないですか。それに関してはある意味、ひとつの分かりやすいフックとして人に言いやすいのかな、と思ったりもしますが(笑)。とはいえ、それはこの作品への出演が決まった後の話ではあったんですけどね。

だけど本当に、実際にここ近年の面白いと言われる舞台をたくさん手がけていらっしゃる演出家さんであることには間違いなくて。この作品に出演する情報が解禁されてからは「稲葉さんとご一緒するんです」という話をすると、共演者の中にも稲葉さんの演出を経験された方が多くいらっしゃって。その方たちが言っていたのが「たとえば階段を降りる、たとえば袖から出て来る、そういったひとつひとつの動きに動機をくださる」ということでした。つまり、ものすごく丁寧な演出をされる方だと。「自分も、ぜひもう一度ご一緒したい」とみなさん、口を揃えて羨ましがってもくれましたしね。

そして前衛的なことをやるのがお好きな方だったりもするようなので、それはそれでまた楽しみになりました。だから今は、どんな台本があがってきて、それに稲葉さんがどんな演出をつけてくださるんだろうということ、この『イェルマ』という作品世界をどこまで現代に合わせて仕上げてくださるかということに、とてもワクワクしています。

――小林さんと樋之津さんは、既に稲葉さんと面談されているそうなので、その時の印象なども含めて伺えたらと思いますが。

小林:僕はまさにシアタートラムで拝見した『ブレイキング・ザ・コード』(2023年)という作品の時に、渡邊さんが今おっしゃっていた「役者にいろいろと動機をくださる」というのを感じた気がするんです。演じる役から見えてくるものが、稲葉さんが手がける作品からはとても大きいように思っています。それこそ僕、去年の年末に稲葉さん演出の『Downstate』を駅前劇場の最前列で観たんですが、終演後しばらく立ち上がれなかったですから。

――最前列であの作品を浴びるのは、強烈な体験になりそうですね。

小林:あまりにも強烈でした。もちろん取り扱っているテーマの重さのせいもあったでしょうけど、だけどやはり稲葉さんの演出の中で動く俳優たちがイキイキしていた、という言葉が正しいかどうかは分かりませんが、本当にその役の皮を一枚被っただけでは届けられないほどの人生を背負ってみなさん演じられていて。そこまでのものが、観客側にしっかり届いていた実感があったんですよね。

――舞台上の人々がみんな、生々しかったです。

小林:そう、すごく生々しいんです。だから見ている側が作品世界にすごく引き込まれる。と、こんな感じで去年、直接お会いした際もただただ僕は稲葉さんへのラブコールをペラペラ喋っていた気がします(笑)。僕も、ずっと前からぜひとも稲葉さんとご一緒したい!と願っていたものですから。

――その気持ちが届いたんですね(笑)。

小林:本当ですよ! あんなに語っておいて、願いが叶わなかったとしたらそのあと相当気まずいじゃないですか(笑)。いや、もう本当に感謝しています。

――良かったです(笑)。樋之津さんは、お会いした時はどんな感じでしたか?

樋之津:僕の場合は面談をさせていただいた時点では、お話をするということよりもまず、事前にいただいていた台本をその場で演じてみるということを中心にやらせていただいていました。それで、最初はうまくいかなかった場面を「じゃあ、次はこういう風にやってみようか」と提案してもらったり、そこでちょっとだけ感覚が掴めたら「次はこうやってみましょう」というようにどんどんブラッシュアップしながらさまざまな演出をつけてくださったんです。その上で「この役はこういうものを抱えているんだよ」ということを、すごく丁寧に細かく提示してくださって。

自分は俳優のキャリアはまだ浅いですが、それでも今までやってきた中で、ああいう経験をしたことがこれまでなかったので。稲葉さんがくれた言葉ひとつで、自分がそこに安心して乗っかっていけるという経験が初めてできたこと自体が、すごく印象的でした。だから稽古でまたお会いできるのが今からとても楽しみなんです。

――きっと、稽古もそういう感覚で進めていかれるんだろうと予想できますし。

樋之津:そうですよね。その稽古で、自分がまた成長していくことができるのではないかというのも楽しみであり、もちろん壁にもぶつかるでしょうけど、そこはなんとか気力で乗り切りたいなとも思っています(笑)。

◆渡邊圭祐、初対面で小林亮太の面白さを見抜く!?

――シアタートラムのような、客席との距離も近い小劇場で舞台に立つにあたっては、現時点ではたとえばどんなことを考えていらっしゃいますか。

渡邊:これまでにもトラムでお芝居を何本か拝見してきましたが、どれもやはり劇場空間の小ささというか濃密さをすごく感じて、その効果からもさらに濃い作品になるような、そんな力がある劇場だなと思っていたんです。その舞台に立つのはプレッシャーももちろんありますが、なんとかしてあそこに立てるくらいの役者になりたいという想いもあり、シンプルに「いい劇場だな、いつか自分も立ちたいな」とずっと思っていたわけなので、今は最高の気分です!

小林:トラムって僕の個人的な感覚ではある種、無機質にも感じる空間なんですが。そこでどの劇団がやるか、どういう作品をやるかによってその都度感じ方が変わるようにも思えて、温かい雰囲気を感じられる時もあれば、役者が提示したものが自分の中に残ったまま劇場を出る時もあったりする。舞台上の呼吸がダイレクトに客席に届くというのは、観る側もですけど、演じる側もあの距離の近さは怖いことなんです。その分、嘘はつけないわけですしね。それだけ俳優が心で感じていることが、直接的にお客様に届く空間だとも思うんです。

あの狭い、密な空間の中で、いかに作品の本質を捉えて、技術的にもいかにお客様に届けるか。そこがとても重要なポイントなんだろうな、とも思っています。

樋之津:舞台に立つ側の視点では今回が初めてなので、まだ語れることはあまりないのですが、昨年『キャプテン・アメイジング』という作品を観に行った時は、周りの観客の方たちが視界に入らないくらいに自分も舞台上の俳優と一体となって没入できる感覚を楽しむ経験ができて。やはりすごく魅力的な劇場だなと思いました。ですので、自分も舞台に立ってお芝居をする時には、あの時のように観客を惹きつけられるようなお芝居ができたらと思っています。

――この三人の関係性についてもお聞きしてみたいのですが、ちなみに小林さんと樋之津さんは所属事務所が一緒なので交流はありそうですよね。

渡邊:あ、そうなんですね?

小林・樋之津:そうなんです(笑)。

渡邊:僕は小林さんとは初めましてですが、樋之津くんとは『女神降臨』という映画で一度共演していまして。この年齢差だというのに一応、同級生をやらせてもらっています(笑)。

樋之津:普通に高校生でしたよ(笑)。

渡邊:ふふふ。当時から、樋之津くんは可愛らしいところがあって、いじりがいのある人だなと思っていたんです。そういう意味では今回、稽古がとても楽しみ。そして今日の取材の様子で、小林さんってちょっと面白そうだなと感じたので(笑)。さらに稽古が楽しくなりそうだ、と勝手に思っています。

小林:早くも伝わりましたか? 良かったです(笑)。

――まさに今が、初めましてだったんですか?

渡邊:はい、まさに。だけど、接しやすそうで安心しました。

小林:そう言っていただけてうれしいです。僕は渡邊さんと言えば『MIU404』でのイメージがすごく強くて。

渡邊:あの時はユーチューバー役でしたね。

小林:でも今日初めてお話ししてみて、こんなに柔らかい印象の方だったんだと新鮮に思っています。やっぱりあの役のイメージだとミステリアスというか、ご自身を出されないような方なのかなと勝手に思っていたので。僕も、稽古が今からとても楽しみです。樋之津とは、一緒にレッスンしたりしていた仲でもあるので。

樋之津:ハイ、そうですよね!

小林:現場でこうやって一緒にいるのが、なんかちょっとヘンな感じなんです(笑)。僕は、同じ事務所の俳優と共演する経験がそんなに多くなくて。しかもこれまで先輩とご一緒することばかりだったから、今回はどういう居方が正解なんだろうなとも思いながら。

――まだ落ち着かない感じなんですね。

小林:ちょっと恥ずかしいような気分になりつつ(笑)。稽古では、きっと僕もすごいダサいところを見せることになるだろうけど、樋之津も全部さらけ出してもらって、いろいろなことに気兼ねなくトライしていける空気にできればいいなと思っています。

――樋之津さんは、この先輩たちと一緒にお仕事をするということに関してはいかがですか。

樋之津:僕も、こうしてガッツリ先輩がたと絡むお仕事は初めてなので、学ぶところがすごく多いだろうなと覚悟しています。渡邊さんからも小林さんからもきっとずっと学んでばかりということになりそうですが、なんとかすべて吸収して自分のものにして、この作品の中で成長し、さらにそれを作品に還元できたらいいなと考えています。

◆稲葉から託された“各キャラクターに求めるもの”に真摯に向き合う

――この作品に参加するにあたって、自分の中にある目標とかテーマみたいなものがあれば聞かせてください。

渡邊:現時点ではまだ、原作のどの部分のエキスを、どこまで現代社会に落としこんで、それをどう解釈していくことになるのか、というのが見えていないので難しいところではあるんですが。

――オノマさんがどんな脚本を書き、稲葉さんがそれをどう受け止めて噛み砕いてくださるか、次第ではありますね。

渡邊:ナショナル・シアター・ライブで上演された『イェルマ』では、職業から全然違ったりしていたので「そういう視点からでも描けるんだ、なるほどな」と思っていたんですよね。そちらではロルカ自身が元々ゲイだったことも『イェルマ』の作品世界に落とし込まれていて、という解釈もされているみたいだったので。僕が演じる役にも、もしかしたらそうやってロルカ自身からもエッセンスをいただいてやれたらいいのかもしれないな、とも思っています。

――では、『イェルマ』以外の作品や資料に触れて勉強もしつつ、準備をされていくと。

渡邊:そのつもりです。

小林:僕が演じるビクトルの場合は、分かりやすい人間関係の役どころではないので。原作に近いところから考えると、曖昧な関係性、曖昧な距離というものが大事だとも思いますから、そういう視点でも考えてみたいと思っています。イェルマがビクトルのどういう部分に魅力を感じたのかという意味では、稲葉さんから僕に対して「色気だったり、けだるさみたいなものを表現してください」という言葉をいただいていまして……だけど僕ってそもそも、色気とかけだるさにはあまり縁がないというか、どちらかというと活発なほうなので(笑)。

――求められている方向性が意外だったと?(笑)

小林:そうなんです、特に演劇ではこれまでやってきていないキャラクターになるのかもしれません。その、けだるさという言葉ひとつとっても、それは何から来るけだるさで、どんなことに諦めがあるのかとか。女性がビクトルという人を見た時に魅かれる部分というものを、いかに自分と組み合わせて出していけるのか。ここは、新たな自分の扉を開かなければいけないのだろうなということは考えています。

――自分の違う面が出せるのかもしれないというのは、面白い体験にもなりそうです。

小林:稲葉さんとの面談の時にも、おそらくご自分の脳内にある言葉の中からどれを選べば相手に対して伝わるかということを、すごく考えてチョイスされている印象があったんですよね。そう考えると、稽古では果たしてどんな言葉をいただけるかということも、とても楽しみです。

樋之津:僕が今回演じる役は、原作に出てこないキャラクターなんです。イメージとしては稲葉さんから「純真さと清々しさを持って演じてほしい」という言葉をいただいていまして。そう考えると僕の場合は、その純真さと清々しさに関しては、まさに舞台に初めて挑むという意味では本当に真っ白な「今から行くぞ!」というこの想い、そこにちょうど重なりそうな気がしています。この物語の中での自分の役割に、初舞台というものに挑むという気持ちをうまく乗せてシンクロさせながら取り組んでみたいです。

――ちなみに、渡邊さんに稲葉さんが求めているものというのは「鋭敏さと繊細さ」だとコメントにはありましたね。そのことに関してはいかがですか?

渡邊:それは今、もう既に僕が持ち合わせているものではあるので(笑)。

一同:(笑)。

渡邊:いやいや、でもなんだか怖いですよね。こういう風に全員にそれぞれ、求めるものを言葉にしてくださることってこれまであまりなかった経験なので。

――でもちょっとうれしくないですか、イメージがしやすくなるというか。

渡邊:そうですね。ひとつ、指標ができるとキャラクターの外枠みたいなものが見える気がします。言葉自体は知っているけれども、念のため「鋭敏」という言葉を改めて辞書で調べておきました(笑)。

――では最後にお客様に向けて、お誘いメッセージを一言ずついただけますか。

渡邊:シアタートラムファンも多いと思いますが、あの劇場に負けないお芝居を作れたらと思っています、いや、作れていることと思います! そしてもちろん、トラムだけに限らず各都市の劇場で観ていただけたらとてもうれしいです。

小林:名作と言われるロルカの『イェルマ』をどう現代の物語として立ち上げて、観ていただいた方々に何を残せるかは僕ら自身も楽しみな部分ではあります。それがどう達成したか、ぜひ劇場で目撃していただけたらと思います。

樋之津:劇場でお芝居を観ていると、本当に時間があっという間に感じるんです。そういう、劇場ならではの楽しみもありますし、それぞれが観終わった後に自分の答えとしてさまざまなことを感じることができるはずですので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしく思います、よろしくお願いします!

(取材・文:田中里津子)

舞台『Yerma』は、9月21日〜10月12日東京・シアタートラム、10月17日・18日:兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、10月31日・11月1日:宮城・多賀城市民会館 大ホール、11月7日・8日:愛知・東海市芸術劇場 大ホールにて上演。

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