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染谷将太さんと唐田えりかさんが語る「ホラーが教えてくれること」生きている実感が持てないのは、いま、幸せである証拠なのかも

  • 2026.7.15

ホラー作品、好きですか?

一口にホラーといっても、オカルトやサイコ、クリーチャー(=非実在の生物。転じて、それが登場する作品)、隔絶された場所で起こる恐怖を描いた「村もの」など、近年、そのカラーは実に多彩。フィジカルに衝撃を与える作品があれば、ストーリーを追いながらじわじわと恐ろしさが沁みるタイプの作品もあり、いっそう充実したジャンルになりつつあります。

7月17日に公開される映画『チルド』もまた、現代人なら誰もが実感する、ある“恐怖”を通して現代社会の暗部を射抜いた作品。出演した染谷将太さん、唐田えりかさんが、作品独自の世界観について語ります。

怖さの裏に、鋭さとおかしみがある。 身近な場所で、人間の本質に迫った作品

初共演の唐田さんは「立っているだけでエネルギーが伝わってくる人。そして、スイッチが入ってからの瞬発力もすごい」と染谷さん。唐田さんは「染谷さんは役と普段との垣根がなく、ご自身のままで話しているようで、とてもナチュラル。向き合うシーンでは、染谷さんがお芝居するように私も演じようと思っていました」と実感を振り返った。

「ホラー映画、好きですね。幽霊が出てくるものも、クリーチャーものも、人間が恐ろしいものも、おもしろい作品だったら何でも。ホラーを見ていると、怖いけれど、どこか笑ってしまうような瞬間もあったりして、そういう紙一重なところも魅力だと思っています」(染谷さん)

染谷将太さんがホラーを見るのは、もっぱら劇場で。おひとりでも、ときには妻で俳優の菊地凛子さんとも鑑賞することがあるそうです。

「あるアメリカの監督作品を劇場で観たときは、ファンの方がたくさん来ていて、上映中もたびたび笑い声が上がっていた。終わった後は客席から拍手が起こって、とても盛り上がったのが印象に残っています」(染谷さん)

同じく、ホラー好きを自認するのが、唐田えりかさん。

「幽霊系は少し苦手ですが、『CURE』(1997年・黒沢清監督)や『哭声/コクソン』(2016年・ナ・ホンジン監督)のように人間の恐ろしさを描いた作品は、すごく好き。昔の名作はどうしても家のモニターで見ることになりますが、私もなるべく映画館で観られたらいいなと思っています」(唐田さん)

おふたりの初共演作として7月17日に公開される映画『チルド』は、コンビニエンスストアを舞台に展開するモダンホラー。接客も運営も高度にマニュアル化されたシステマティックな場で働く人々、その動きや感情までもが次第にルールに支配され歪んでいく様子がクールに描かれています。

「ホラー映画という前置きだけを聞いて脚本を読ませていただきましたが、見慣れたコンビニを舞台にして、こんなにも新しく、そして鋭く現代を描けるんだなと。ホラーでありながら、人間という生き物の本質に迫っている作品だと感じました」(染谷さん)

「まず最初に『おもしろっ!』と興奮しました。ほぼ毎日通っているような身近な場所で恐ろしいことが起こっていくというのも興味深かったし、怖さの中にあるおかしみの具合もとても好みで、楽しく読みました」(唐田さん)

どんな時も冷静に〝無〟であろうとする主人公は自分と近いかもしれない(染谷さん)

有形無形のルールに屈していく人間のありさまに震え上がる『チルド』。しかし、撮影中は「すごく穏やか。同世代が多くて和気あいあいとした、笑いが絶えない現場でした」と染谷さん。「変な緊張感がなく、無言でいても大丈夫なくらいの雰囲気。空気感が似ている人が多かったのかもしれません」と、唐田さんも終始、リラックスして過ごせたという。

作品のキャッチフレーズは、《生きながら、死んでいる》。染谷さん演じるコンビニ店員の堺は、まさにそれを体現する人物といえます。静かな狂気を滲ませて店を支配するオーナー(西村まさ彦・演)と店のルールに逆らわず、ただ1日を無事にやり過ごす。そんな彼を、染谷さんは「〝無〟の人」と捉えました。

「周りで何が起きても、それをしっかりと受け止めることをしないし、自分からは何もしない。徹底的にシステムの中で生きていく人で、そこにそら恐ろしさもありますが、逃げているようで逃げていないという微妙なスタンスもとっている。ある種、器用な人間にも思えるし、どんな環境でも冷静を保っていられる部分には、少なからず共感も覚えました。自分自身が、撮影現場にいるときの居方に近いところがあるというか……とくに緊張しやすい場面では、僕もなるべく無の状態でありたいと思っているので」(染谷さん)

冷温停止の状態にある堺とは対照的に、唐田さん演じる小河は〝熱〟を発する人。堺の働くコンビニにアルバイトとしてやってきた彼女は、人としてまっとうな正義感を発揮し、淀んだ店の空気を動かしはじめます。

「唯一、意志をしっかり持った人間なので、まずは物語にスパイスを与える存在になろうと思いました。私と似ているところは、意見をはっきり言うところ? どんな場面でも自分の言葉で語りたい、彼女とのそういう共通項を大事にしながら、小河というキャラクターに挑んでいきました」(唐田さん)

いまでも新人のように緊張する。でも、それを楽しめばいいんですね(唐田さん)

いつでも、何でも必要なものが手に入るコンビニが象徴するように、便利で整ったシステムに守られて暮らしている私たち。しかし、その中で、本当に自分の意志と力で動いている実感を、知らず知らずのうちに削り取られているのかもしれない……本作で、堺がある人物から投げかけられる「生きている実感、ありますか」「いま、生きていますか」という問いは、観る側の胸に刺さります。

「自分はシンプルに、おいしいものを食べたときに感じたり、あとは楽しいとき、逆に、大変だなと思うときにも、明確ではないけれど感じたりしているかもしれません。逆に『生きている』という実感を持たなくていいくらい、いま、幸せでいるということなのかな?とも感じます」(染谷さん)

「たしかに、そうですね。生きていけるのか?という状況でいるときのほうが、より生きている実感は持てるのかも。私も、日々の生活の中で友だちと笑い合っていたり、あるいは、何かに腹を立てていたり、感情が動いているときに、意識的ではないにせよ『生きててよかった』と感じているような気がします。でも、お芝居をしながら自分が想像していなかったような感情に出合えた瞬間には、より達成感がありますね」(唐田さん)

「いま」から目を逸らさないこと。そして、どんなことに対しても、あたりまえだと慣れきってしまわないこと。作品の中で自らのあり方を模索する堺と小河は、そんなメッセージを発しているように感じます。

「自分はもう、日々、慣れない感じです(笑)。なにごとも自分が思い描いたようには進まないですし……。ただ、仕事柄、毎回会う人が変われば、座組の雰囲気も違って、それが楽しいということもある。だから、慣れないことも、楽しみのひとつではあるんじゃないかなと」(染谷さん)

「私は、いつまでもこの世界の新人のような気持ちでいるので、いまのお話を聞いて『あ、染谷さんでも慣れないんだ』と、ちょっと心強くなりました(笑)。『チルド』でもそうでしたが、現場で最初にお芝居をするときは、いつも心臓がバクバクするし、緊張するし……でも、それを楽しめばいいんですよね」(唐田さん)

PROFILE

染谷将太(そめたに・しょうた)
1992年東京都出身。子役として活動ののち、2009年、『パンドラの匣』で映画初主演。11年公開の『ヒミズ』でヴェネチア国際映画祭の新人俳優賞であるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。最近の出演作に映画『廃用身』『教場 Requiem』、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』、テレビドラマ『田鎖ブラザーズ』、Netflix配信ドラマ『イクサガミ』など。『チルド』に続き、7月24日には学園ホラー『だぁれかさんとアソぼ?』が公開される。

唐田えりか(からた・えりか)
1997年千葉県出身。2015年に俳優デビュー。18年公開の映画『寝ても覚めても』で山路ふみ子映画祭新人女優賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞する。2026年は『チルド』をはじめ、『禍禍女』『モブ子の恋』『Man』の4本の出演作が公開。ほか、最近作にテレビドラマ『君が死刑になる前に』『102回目のプロポーズ』『浮浪雲』、Netflix配信ドラマ『グラスハート』などがある。

唐田さん:ジャケット¥104,500/KANAKO SAKAI、トップス¥107,800、スカート¥122,100/ともにディーゼル(ディーゼル ジャパン)、イヤカフ¥23,100、ネックレス¥209,000、ロングネックレス¥93,500/すべてジョージ ジェンセン(ジョージ ジェンセン ジャパン) その他/スタイリスト私物
●問い合わせ先
KANAKO SAKAI info@kanakosakai.com
ジョージ ジェンセン ジャパン 0120-637-146
ディーゼル ジャパン 0120-55-1978

[映画]チルド

どこの街角にもある平凡なコンビニ「AnyMart」。24時間灯り続ける店内、補充され続ける商品、繰り返される機械的な挨拶と応対。惰性と習慣に染まった堺は、職場に現れた小河の熱に触れ、凍りかけた心を徐々に開いていくが……。破滅ではなく、終わらない「恐怖」にじわじわと蝕まれる、戦慄の心理ホラー。数々のCMを手がけ、2024年に短編映画『VOID』で注目を集めた岩崎裕介監督の長編デビュー作。実父がコンビニを経営していたルーツに基づき脚本も手がけた本作は、第76回ベルリン国際映画賞国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞に輝き、数々の国際映画祭に招待された。

監督・脚本:岩崎裕介
出演:染谷将太 唐田えりか 西村まさ彦 くるま(令和ロマン) 長島竜也ほか
配給:NOTHING NEW
2026年7月17日(金)よりテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田ほか全国で公開

@『チルド』製作委員会(NOTHING NEW・東北新社)

撮影/白井裕介 スタイリング/清水奈緒美(染谷さん)、丸山 晃(唐田さん) ヘアメイク/光野ひとみ(染谷さん)、江指明美[mod’s hair](唐田さん) 取材・文/大谷道子

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

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