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『恋人』歴史解説④消滅の危機にある言語を蘇らせた徹底した時代考証

  • 2026.7.15

テレビ東京で放送中の『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』。過酷な戦乱に翻弄されながらも、互いへの愛を貫こうとする男女の姿を描いた本作は、韓国放送時、最高視聴率12.9%を記録した傑作である。

胸を打つ究極のラブロマンスや重厚な歴史ドラマとしての魅力はもちろんだが、本作の大ヒットの裏には「言語」というもう一つの大きな要素が隠されている。それが、劇中で効果的に使用された「満州語」だ。

消滅の危機にある言語を蘇らせた徹底した時代考証 

時代劇において、時代考証ほど重要なものはない。1636年に勃発した「丙子の乱」を背景とし、清(しん)と密接に関わる人物が数多く登場する本作において、制作陣は劇の没入度を高めるために満州語の導入を決断した。

 満州語とは、かつて金王朝を建てた女真(じょしん)族の子孫であり、清を建国した満州族が使っていた言語。現在は一部の少数民族のみが使用し、急速に使用者が減って消滅の危機に瀕しているという。

キム・ソンヨン監督は「リアルな作風を極めよう」という強い意志のもと、衣装や美術だけでなく言語においても専門家にアドバイスを求めた。 

満州語の監修を担当したキム・ギョンナ教授は、台本を満州語に翻訳する作業において少なくとも4、5回の校正を重ねたという。

17~19世紀に使われた資料を基に単語を選定し、発音を俳優たちに伝え、キャラクターごとのトーンまで議論して決定するという徹底ぶりであった。さらに、韓国語の中に強烈なインパクトを与える目的でモンゴル語も部分的に採用し、当時のリアルな情勢を見事に再現している。

1年以上にわたる俳優たちの熱き挑戦 

この不慣れな言語の壁を乗り越えられたのは、俳優たちの並々ならぬ努力のおかげだ。ナムグン・ミン演じる主人公イ・ジャンヒョンは、優れた商才を持つ通訳官という役柄もあり、流暢な満州語を駆使して清の人々と堂々と渡り合う姿を見せた。

ヒロインのユ・ギルチェを演じたアン・ウンジンによれば、「俳優のほとんどが満州語の教授から直接授業を受けた」という。 

特に驚かされるのは、清の人物を演じた俳優たちの献身だ。すべての台詞が満州語だったチェ・ヨンウは、「少数言語なので知っている方が多くなかった」と語り、役作りのために約14カ月間も満州語を学び続けた。また、キム・ジュンウォンも1年前から授業を受けて本番に臨んでいる。

言語がもたらした「本物」の緊張感 

昨今の韓国ドラマでは、劇中で英語や日本語、中国語などの外国語を自然に駆使することは基本となりつつある。しかし、すでに日常的に使われていない古代の言語をここまで徹底して再現したことは、本作のクオリティを底上げする大きな要因となった。 

異国の言葉が飛び交う戦場や、人質として連行された清の首都・瀋陽(しんよう)での苛酷な日々。そこで響くリアルな満州語は、主人公たちが直面する「言葉の通じない異国への恐怖」や「絶望的な状況」を視聴者に生々しく疑似体験させた。

『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』より(写真= ©2023MBC)

この徹底した時代考証と言語へのこだわりがあったからこそ、過酷な世界で育まれるジャンヒョンとギルチェの純愛が、より一層の真実味と深い感動を伴って私たちの胸に迫ってくる。

もちろん、日本語吹き替え版でも心揺さぶられる作品だが、副音声チャンネルに切り替えてオリジナル音声で楽しめば『恋人』の世界観がお茶の間でもさらに広がるに違いない。

構成=韓ドラLIFE

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