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水に溶けたウランを「固体化」させる細菌の能力を新発見

  • 2026.7.13
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ウランは、人体や環境に悪影響を及ぼす有害な重金属です。

しかも、水に溶ける化学状態になると、地下水とともに移動し、もともとの汚染源から離れた場所へ広がる恐れがあります。

そのため、ウランで汚染された鉱山跡地や地下水では、ウランをどうやってその場に封じ込めるかが大きな課題となっています。

しかし最新研究で、鉱山の水にすむ細菌群集が、水に溶けたウランを移動しにくい固体へ変える働きを持つことが明らかになりました。

今後の研究次第では、汚染水中を移動するウランをその場に封じ込め、地下水への拡散を抑える新たな方法につながるかもしれません。

では、細菌はどうやってウランを「固体化」させたのでしょうか?

研究の詳細は、独ヘルムホルツ・ドレスデン・ロッセンドルフ研究センター(HZDR)により、2026年5月4日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。

目次

  • ウランを「水に溶けにくい」状態に変える
  • 細菌パワーで、水に溶けたウランが96%減少
  • 「一瞬しか存在しない」はずの5価ウランが安定していた

ウランを「水に溶けにくい」状態に変える

ウランは、周囲の酸素量や水質によって、異なる化学状態に変化します。

汚染水の中では、おもに「6価ウラン」と呼ばれる高い溶解性の状態で存在します。

6価ウランは水に溶けやすいため、地下水とともに移動しやすいという問題があります。

一方、電子を受け取って「4価ウラン」になると、水に溶けにくい鉱物を形成し、その場にとどまりやすくなります。

そのため、微生物の力で6価ウランを4価ウランへ変え、汚染地域から動かないようにする方法が研究されてきました。

これはウランそのものを消す方法ではありません。

水に溶けて移動できる状態から、固体として移動しにくい状態へ変えることで、汚染の拡大を防ぐという考え方です。

ウランの状態変化の図解イメージ/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

研究チームは今回、ドイツ東部のエルツ山地にあるシュレーマ=アルベローダ鉱山の坑内水を使用しました。

この鉱山は1990年まで世界有数のウラン採掘地でしたが、閉山後に地下坑道が水で満たされ、現在も坑内水の処理が必要になっています。

採取した水には、鉱山の地下環境に適応した天然の細菌群集が、最初から含まれていました。

チームは、この鉱山水に「グリセロール」という細菌の栄養源を加え、酸素のない暗所で130日間培養。

グリセロールは植物や動物の脂肪に含まれる成分であり、一部の細菌にとって炭素源やエネルギー源になります。

つまり、もともと坑内水にいた細菌たちに「エサ」を与え、その活動を活発にしたのです。

なお、今回新種の細菌が発見されたわけではありません。

鉱山の水に生息する複数の細菌が協力することで、ウランを固定する働きが生じると示された研究です。

細菌パワーで、水に溶けたウランが96%減少

実験開始時、坑内水には1リットルあたり約1ミリグラムの6価ウランが溶けていました。

ところがグリセロールを加えて細菌を活性化すると、130日後には0.04ミリグラムまで低下しました。

水中の6価ウランが、約96%も減少したことになります。

一方、グリセロールを加えなかった試料での減少は約25%、細菌を死滅させてからグリセロールを加えた試料では約36%でした。

対照実験でもウランが多少減っているのは、容器の表面や水中の鉱物粒子などに吸着したためと考えられます。

しかし、生きた細菌とグリセロールを組み合わせた試料で最も大きく減少したことから、細菌群集の活動がウランの固定を強く促したと判断できます。

実験を進めると、水中には黒い沈殿物が現れました。

電子顕微鏡で調べたところ、細菌の表面にはウランを含む、ごく小さな粒子が集まっていました。

こちらが、細菌の表面に形成されたウランの微小粒子の画像

その大きさは、おもに直径2~3ナノメートルです。

1ナノメートルは100万分の1ミリメートルなので、肉眼では到底見えない小ささです。

分析の結果、4価ウランは「ウラニナイト」と呼ばれる鉱物のナノ粒子になっていました。

さらに、ウランが鉄や酸素と結びついた「FeU(V)O₄」という別のナノ粒子も形成されていました。

つまり、細菌はウランを食べて消してしまったのではなく、化学状態を変化させ、細胞表面や沈殿物の中に固定していたのです。

「一瞬しか存在しない」はずの5価ウランが安定していた

しかし今回、研究者らを最も驚かせたのは、ウランが「5価ウラン」と呼ばれる状態で大量に残っていたことです。

従来、ウランは水に溶けやすい6価から、水に溶けにくい4価へ変化すると考えられてきました。

その途中で5価ウランが生じることは知られていましたが、通常は不安定で、すぐに6価または4価へ変化する一時的な状態だとみなされていました。

ところが今回、黒い沈殿物に含まれるウランの20~30%が、5価ウランの状態で存在していました。

水中のウランが約90%減少した段階では、沈殿物に6価ウランは検出されず、約70%が4価、約30%が5価になっていました。

5価ウランは、炭酸イオンと結びついた状態と、鉄や酸素と結びついたFeU(V)O₄という状態で確認されています。

特にFeU(V)O₄は、鉄を含む丈夫な構造の中にウランが組み込まれるため、5価ウランを安定させていると考えられます。

さらにチームは、ウランを含む沈殿物を空気中に4週間置き、酸素に触れさせる実験も行いました。

酸素に触れると、固体化した4価ウランは再び水に溶けやすい6価へ戻る可能性があります。

実際、空気にさらした後の試料では、4価ウランの割合が約7%まで減少し、6価ウランが約40%に増加しました。

それにもかかわらず、5価ウランは全体の約53%を占めていました。

この結果は、5価ウランの一部が酸素に触れても簡単には壊れず、ウランの再移動を遅らせる「中間的な固定状態」として働く可能性を示しています。

5価ウランの図解イメージ/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

今回の成果は、ウラン汚染の現場ですぐに利用できる浄化技術が完成したことを意味するものでもありません。

実験は1カ所の鉱山から採取した水を用いて、実験室内で行われたものです。

実際の地下環境では、水温や酸素量、酸性度、鉄や炭酸塩の量などが変動するため、同じ結果が長期間続くとは限りません。

また、ウランを固体化しても、ウランそのものや放射能が消えるわけではありません。

将来の実用化には、固体化したウランが数年から数十年後も安定しているのか、環境変化によって再び水中へ溶け出さないのかを確かめる必要があります。

まとめ

今回の研究が示したのは、細菌に有毒なウランを魔法のように消す能力があるということではありません。

細菌群集の活動によって、水に溶けて移動しやすいウランを、鉱物に近い固体へ変え、その場に縛りつけられる可能性です。

特に、これまで一時的な存在と考えられていた5価ウランが、鉄を含む化合物として安定化したことは、ウランの浄化方法を考えるうえで重要な発見です。

地中に生きる小さな細菌たちが作り出す化学環境を上手に利用できれば、将来、鉱山跡地やウラン汚染水の拡大を抑える新たな手段になるかもしれません。

参考文献

Bacteria turn dissolved uranium into stable compound in 130 days, study finds
https://phys.org/news/2026-07-bacteria-dissolved-uranium-stable-compound.html

Bacteria Turn Toxic Uranium Into a Surprisingly Stable Compound
https://scitechdaily.com/bacteria-turn-toxic-uranium-into-a-surprisingly-stable-compound/

元論文

Pentavalent and tetravalent uranium formation via glycerol-stimulated bacteria in mine water
https://doi.org/10.1038/s41467-026-72560-z

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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