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創造の光と影を語る「スキャパレリ」。“生みの苦しみ”が導いたモードの最高峰

  • 2026.7.10
LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

時代をけん引するクリエイターにとって、真のライバルは他者ではなく、常に自分自身だ。称賛を浴びる作品を生み出した後、それを超える創造をいかに生み出すのか――。昨シーズン、「スキャパレリ」にとってブレークスルーともいえるコレクションを発表したダニエル・ローズベリーもまた、その問いと向き合った。

Courtesy of Schiaparelli / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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ショーノートには、その葛藤が率直に記されている。「昨シーズンにならって成功の方程式を再現しようとした結果、私は可能性を閉ざし、苦しみばかりを生む創作のサイクルに陥ってしまった。方程式は創造の魔法と相反する。魔法とは、未知へ完全に身を委ねたときにのみ見つかる……。おそらく、これこそが創業者エルザ・スキャパレリの最大の遺産なのだろう。真に長く残る創造は、確信からではなく、矛盾や直感、偶然、そしてまだ理解できないものを信じる勇気から生まれることを、彼女は知っていたのです。私がこのコレクション制作を本当に楽しめるようになったのは、“虚無”に身を委ねてからでした」

Courtesy of Schiaparelli / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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そうして生まれた“The Call of the Void(虚無の呼び声)”は、未知へ踏み出すという決意を、そのままオートクチュールへと昇華したものだった。ローズベリーは、シルクやサテン、ウールといった伝統的な素材をあえて手放し、ラテックスやシリコン、焼き固めた塗料など前例のない素材を採用した。

Courtesy of Schiaparelli / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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映画業界向けに写実的なシリコン製ベビーを制作する工房と協業し、人肌を思わせる質感のシリコンを開発。それをボレロやコルセットへと彫刻のように手で成形し、生物を思わせるつややかなフォルムを生み出した。目の前に現れたのは、美しい惑星にすむ未知の生命体か、それともSF映画に登場する魅惑的な女王か。魚のうろこや貝殻をまとったルックは、どこか不穏でえたいの知れない存在感を放ちながらも、不思議と目を奪われる美しさを宿していた。やがて、昨今の「スキャパレリ」では珍しいロブスターピンクやタンジェリン、サフラン、ペールミントといった鮮やかな色彩へと移行すると、その世界は一変する。

Courtesy of Schiaparelli / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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先ほどまで畏怖を感じさせていた異形の存在は、妖精や精霊のような軽やかさをまとい始める。コーンフラワーブルーからキャラメルへと繊細なグラデーションを描く花で覆われたドレスは、歩みに合わせて柔らかく揺れ、羽根を思わせるピンクの装飾をまとったルックは、今にも飛び立ちそうな躍動感を漂わせた。いくつかのシルエットは、建築家ガウディの『カサ・バトリョ』を思わせる有機的な曲線を描き、色彩豊かなモザイクタイルはドレスのグラデーション刺しゅうへと呼応する。さらに、装飾に用いられた花は布製ではなく、糖液で保存処理した本物の花を一輪ずつ刺しゅうして仕上げたものだ。最先端の素材と職人の技巧、ローズベリーにとって新たな挑戦である幻想的な色彩が融合したことで、過去と未来が交錯するシュルレアリスムな世界を描き出した。

Courtesy of Schiaparelli / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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フィナーレで姿を現したローズベリーには、ひときわ大きな喝采が送られた。それは、コレクションの完成度への賛辞であると同時に、自ら築いた成功の方程式を手放し、未知へ飛び込むことを選んだ創造者への拍手だったように思う。不確実さを受け入れる勇気こそが、新たな可能性を切り開く。ローズベリーは普遍的なメッセージを、オートクチュールという最高峰の表現で証明してみせた。



Hearst Owned
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