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【ムッシュ ディオール 大阪】アンヌ=ソフィー・ピックが料理で描くメゾンの世界|日本初のレストランがオープン

  • 2026.7.9
〈左〉撮影=高嶋克郎 〈右〉©Dior

2026年5月21日(木)、大阪・心斎橋に誕生した「ハウス オブ ディオール 心斎橋」。ファッションやライフスタイルなど4つのフロアから構成され、メゾンの多彩な世界観を表現するこちらの4階には日本初となるアンヌ=ソフィー・ピックさんによる 「ディオール」のレストラン「ムッシュ ディオール 大阪」がオープンしました。

撮影=高嶋克郎

料理のビジョンを考案したピックさんは、女性シェフとして現在世界で最も多くのミシュランの星を獲得しています。メゾンのアーカイブが保管されたアトリエを何度も訪れ、クリスチャン・ディオールが手がけた素晴らしいオートクチュールの作品、そして彼の人生や美意識を紐解き、大切にしながらメニューを考えたといいます。

「日本でレストランを開くことは35年来の夢だった」と笑顔を見せる彼女に、「ムッシュ ディオール 大阪」や料理に対する思いを伺いました。

インタビューの前に、まずはフランス料理の伝統とピックさんの感性、日本の食材が融合した「ムッシュ ディオール 大阪」でしか味わえない料理をご覧いただきましょう。

現代的な感性で表現したクリスチャン・ディオールの美学

フランス語で“ヒトデ”を指す「レトワール ドゥ メール(L 撮影=高嶋克郎

ディナーコースにスターターとして登場するのは、「レトワール ドゥ メール」。北海道産うにを用いたうにとそば茶のババロア、キューブ状にカットした酸味の強いマンダリンオレンジとディル、香ばしい香りと食感も楽しいそば茶を重ね、ナスタチウムとわさびのソースを合わせることでうにの濃厚な甘みを引き出しています。

クリスチャン・ディオールが幸運のモチーフとして愛した“星”と、彼の故郷である海辺のリゾート地・グランヴィルの海辺に生息するヒトデを重ね合わせています。

「レ ベルランゴ レオパード(Les Berlingots Léopard)」 撮影=高嶋克郎

パスタは、ピックさんのスペシャリテ「ベルランゴ」を、ディオールのコードで再構築した「レ ベルランゴ レオパード」。

24カ月熟成したコンテチーズを詰めたパスタに、竹炭やカカオを練り込んだ黒い生地を重ねて“レオパード柄”を表現していますが、これはクリスチャン・ディオールの親友でありミューズでもあった、ミッツァ・ブリカールへのオマージュ。誰よりも早くファッションに“レオパード柄”を取り入れた女性です。

少量のわさびで清涼感を加えたセロリのソースがチーズのコクを引き締め、濃厚な味わいながらも余韻は軽やかな一品となっています。

「ル カレ(Le Carré)」 撮影=高嶋克郎

メイン料理の「ル カレ」。やわらかくローストして甘さを引き出したポロネギの上で輝くキャビアは、まるでオートクチュールドレスに縫い付けられたビーズのよう。

冷燻後に炙り焼きにしたサバは火入れも見事で、だしの旨み、抹茶のほろ苦さ、シェリービネガーの酸味を活かした「フランス的でありながら、日本の食材を生かす味わい」に仕上げたソースがそっと寄り添います。繊細な盛り付けに“手仕事の美学”を感じる、感動に満ちた一皿です。

「ル ミルフィーユ ブラン(Le Millefeuille Blanc)」。ワインは華やかなマスカットとミントのアロマ、ハチミツのようなリッチな味わいを持つデザートワイン、ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズを合わせて。 撮影=高嶋克郎

デザートは、アイコニックな千鳥格子をまとった「ル ミルフィーユ ブラン」。ピックさんが愛するバニラとジャスミンの香りを組み合わせ、バニラクリームの中には7層に重ねたジャスミンのジュレと薄く焼きあげたパイ生地が潜んでいます。

横に添えられたのは、香りの輪郭を引き締める胡椒のエスプーマ。提供温度まで緻密に計算され、バニラとジャスミンの香りと余韻が最も引き立つタイミングで届けてくれます。

コースの幕開けを飾るのはピスタチオとコンテチーズというそれぞれの個性を際立たせた2種のタルト。 撮影=高嶋克郎
プライベートダイニングルーム(利用料33,000円)。奥に飾られているのはスペイン出身の画家、ホルヘ・ガリンドの作品。 撮影=高嶋克郎

メインダイニングは、クリスチャン・ディオールが愛した庭園や花々へのオマージュが散りばめられた、とてもエレガントで心ときめく空間。

ほかにも、ライブ感あふれる食体験が味わえるシェフズルームや、約1,400本のワインを眺めながら食事を楽しむワインセラールーム、プライベートダイニングルームといった3つの個室も用意されています。

「ディオール」の世界観と美食に身を委ね、かけがえのない時間を過ごしてみてください。

アンヌ=ソフィー・ピックさんインタビュー「クリスチャン・ディオールの人生を、料理で紡ぐ」

撮影=高嶋克郎

─「ムッシュ ディオール 大阪」のプロジェクトが決まった時の気持ちはいかがでしたか?

35年前に初めて日本を訪れ、とても感動しました。日本は私にインスピレーションを与えてくれるし、素晴らしい食材にも出合える場所です。

また、食材への敬意があり、素晴らしい器を作る職人もいて、季節を慈しむ美意識もある。これらは、私が料理で表現したいものとも深く共鳴しています。ですから、日本でレストランを持つのは長年の夢でしたし、実現したことはとても感慨深いですね。

─日本、そして大阪にはどんな印象をお持ちですか?

10年ほど前に、調理師専門学校からお招きいただいて、若いシェフたちに料理のデモンストレーションをしたことを覚えています。大阪は海も近く、食材も豊かで、とても魅力的な街だと感じています。

やはり日本の食材は格別で、今回の「レトワール ドゥ メール」という料理にうにを使用していますが、日本産のうには繊細でありながら、豊かな旨みと甘みがあります。また、そば茶や抹茶、わさびなども非常に興味深い食材です。私はそれらを“和の要素”として使うのではなく、新たな香りの表現として捉えて、料理に取り入れることで、フランス料理の世界がさらに広がっていきます。

─このお店にどんな未来を期待していますか。

まず、この空間そのものが本当に素晴らしいと思っています。素材の選び方も美しいですし、仕上げの細やかさも、まるでオートクチュールの作品のようです。アーティストの作品も飾られていて、アーティストの才能を信じ、尊重してきたクリスチャン・ディオールの精神が息づいていると思います。

ですから、料理だけでなく、この空間全体を体験していただきたいですね。もちろん、料理がおいしくなければ意味がありません。「ムッシュ ディオール 大阪」のシェフたちとはとてもいい関係を築けていますし、彼らはフランス料理に深い愛情を持っているので、きっとお客様に愛されるよいお店にしてくれるでしょう。

撮影=高嶋克郎

─オファーを受けてから、クリスチャン・ディオールという存在に向き合うため、深く学ばれたと聞きました。

ディオールは単なるファッションブランドではなく、オートクチュールを象徴する存在で、フランス文化そのものを体現するメゾンでもあります。だからこそ、私はまずクリスチャン・ディオールという人物を理解したいと思いました。

パリのディオール・アーカイブを訪ね、担当者からもたくさんのお話を聞きましたし、彼が愛した料理について書かれたレシピ本『La Cuisine Cousu-Main (手縫いの料理)』も読みました。

クリスチャン・ディオールのオートクチュールを見ていると、布地の質感や刺繍、細部へのこだわりが伝わってきますが、そこに料理との共通点を感じます。料理にも軽さや重さがあり、余韻や繊細さがある。それを知らなければ、本当の意味で自分の料理に落とし込むことができなかったと思います。

─クリスチャン・ディオールは、どんな人物だと感じましたか?

まず間違いなく、美意識にあふれた人でした。そして本当に食べることが好きだった、フランス語で言うところの、エピキュリアンですね。人生の喜びを知っている人だと思いました。シャンパンソースやブールブランなど、アルコールを使ったソースがとても好きだったこと、野菜を愛していたこと、海辺育ちなので海の幸への愛着も強かったようです。

レシピ本を読みながら「ああ、この人はこういうものに心を動かされていたんだな」と感じる瞬間が何度もありました。

シェフズテーブルには、ムッシュ ディオールとシェフの2ショット写真が飾られている。 撮影=高嶋克郎

─ご自身のルーツとも重なる部分があったそうですね。

そうなんです。クリスチャン・ディオールが活躍した時代は、私の祖父アンドレ・ピックとほぼ同じ時代。記録こそ残っていませんが、彼が祖父のレストランを訪れていた可能性は十分にあると言われています。『La Cuisine Cousu-Main (手縫いの料理)』を読んでいると、彼が好んだ料理と、祖父から聞いていた昔のフランス料理の記憶が重なる部分がたくさんありました。

─家族で代々経営するフランス東部にある「メゾン・ピック」、パリの「ラ・ダム・ド・ピック」、スイス・ローザンヌの「ピック・ボー・リヴァージュ・パレス」、バンコクの「ル・ノルマンディー by アンヌ=ソフィー・ピック」、香港の「クリスタル ルーム by アンヌ=ソフィー・ピック」など、世界各国でミシュランの星を取るピックさん。ご自身を支えている原動力は何でしょうか?

隣に寄り添うのは、レストランの経営を担当する夫のデイヴィッド・シナピアンさん。レストランの壁面に描かれたムッシュ・ディオールの別荘「ラ コル ノワール城」の前で。 撮影=高嶋克郎

私は料理人として、誠実でありたいと思っています。誠実さとは、食材を尊重することです。そのためには、まず理解をしなければいけません。

私は日本茶を理解するために、日本の専門家からお茶の淹れ方を教わりました。日本人にとって当たり前のことでも、フランス人にはわからないことがたくさんあります。だから文化そのものを学ぶ必要があるんです。食材を理解するということは、その背景にある土地や人々、文化を理解することでもあります。

私は好奇心の塊なので、もっと知りたい、もっと理解したいと常に思っていて、そのことが原動力にもなっています。すべてを知り尽くすことはできないけれど、少しでも前に進みたい。その気持ちを抱きながら、これからも料理を作り続けていきます。

DATA
料金/ランチ12,000円~、ディナー30,000円~(ともに税込、サービス料15%別途要)
営業時間/ランチ 11時30分~15時(L.O. 13時30分)、ディナー 18時~22時30分(L.O. 20時)
※要事前予約。予約はTablecheckより受付。
定休日/月・火曜
tel. 06-7632-1450
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大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-9-17 ハウス オブ ディオール 心斎橋4F

ムッシュ ディオール 大阪

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