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仕事が楽しくなるカギは「3つの心理的欲求」にあった

  • 2026.7.9
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

仕事が楽しくてやりがいを感じている人と、ただただ辛くて疲労や退屈を感じている人。

その違いは、単に仕事内容や給料だけでは説明できないかもしれません。

最近の心理学研究では、人が仕事でいきいきと力を発揮するには、ある「3つの心理的欲求」が重要であると示されました。

その3つとは「自律性」「有能感」「関係性」です。

具体的に、その3つはどんなことを指しているのでしょうか?

研究の詳細は、豪カーティン大学(Curtin University)により、2026年3月19日付で学術誌『Journal of Business Research』に掲載されています。

目次

  • 仕事を楽しくする「3つの心理的欲求」とは
  • AI・リモート時代こそ「心の燃料」が問われる

仕事を楽しくする「3つの心理的欲求」とは

多くの職場では、「どうすれば社員にもっと頑張ってもらえるか」が考えられます。

ボーナスを出す、ノルマを設定する、細かく進捗を管理する。

こうした方法は、一時的に人を動かすことはあるかもしれません。

しかし、35年分の研究(1989年〜2024年までに発表された1192本の論文)を分析した今回のレビューが示すのは、より根本的な問いです。

それは「仕事への自発的なモチベーションは、何によって決まるか」という問いです。

そして調査の結果、チームは仕事のやりがいや充実度を高めるには「3つの心理的欲求」が必要であることを明らかにしました。

その1「自律性」

自律性とは、ルールを無視して好き勝手に働くことではありません。

大切なのは、「自分で選んでいる」「自分の意思で関わっている」と感じられることです。

同じ仕事でも、ただ命令されたからやる場合と、その意義を理解し、自分なりの工夫を入れられる場合では、感じ方が変わります。

周りにプレッシャーをかけられ、細かく監視され、常に管理され、判断の余地がない仕事は、自律性を奪いやすいものです。

反対に、信頼され、意味のある選択肢を与えられると、人はその仕事を「自分ごと」として受け止めやすくなります。

その2「有能感」

これは「自分にはできる」「前よりうまくなっている」と感じられることです。

有能感とは、最初から完璧にこなせることではありません。

むしろ、少し難しい課題に取り組み、フィードバックを受け、少しずつ上達している実感に近いものです。

仕事があまりに曖昧で、何をすればよいのかわからない。

努力しても成長を感じられない。

あるいは、失敗ばかりが強調され、改善の手がかりが与えられない。

こうした環境では、人は「自分は役に立っている」という感覚を失いやすくなります。

反対に、学ぶ機会があり、手応えがあり、上達が見える仕事は、人を前向きにします。

その3「関係性」

これは職場で人と意味のあるつながりを感じられることです。

人は、給料や肩書きだけで働いているわけではありません。

支えてくれる同僚がいる。

話を聞いてくれる上司がいる。

自分がチームの一員として受け入れられていると感じられる。

こうした関係性は、働く人のモチベーションやウェルビーイングに深く関わるのです。

仕事が楽しいと感じるとき、私たちは単に「ラクをしている」わけではありません。

自分で選び、成長を感じ、人とつながっているからこそ、仕事がエネルギーの源になるのです。

AI・リモート時代こそ「心の燃料」が問われる

この3つの心理的欲求は、これからの働き方を考えるうえでも重要です。

リモートワークやハイブリッドワークは、働く場所や時間の自由度を高めます。

これは、自律性を支える可能性があります。

しかし一方で、人との雑談や偶然の相談が減れば、関係性は弱まりやすくなります。

AIやアルゴリズムによる管理も同じです。

AIが仕事を助けてくれれば、有能感は高まるかもしれません。

しかし、評価や指示が見えない仕組みによって決められるようになれば、「自分でコントロールできていない」という感覚が強まる可能性もあります。

チームも、今後の課題として、テクノロジーの変化や新しい働き方が、自律性・有能感・関係性にどう影響するのかを検討する必要があると述べています。

この視点に立つと、職場づくりの問いは少し変わります。

「その制度は効率的か」だけではありません。

「その制度は、働く人に選択の余地を与えているか」

「その制度は、成長や手応えを感じさせているか」

「その制度は、人とのつながりを支えているか」

こうした問いが重要になります。

同じリモートワークでも、孤独に放置される働き方と、必要な支援や交流が設計された働き方では、心理的な意味が大きく違います。

同じAI導入でも、人を監視するために使うのか、人の能力を広げるために使うのかで、職場の体験は変わります。

つまり、仕事を楽しくする鍵は、最新ツールや福利厚生そのものではありません。

それらが、働く人の3つの心理的欲求を支えているかどうかなのです。

まとめ

今回の研究は、「仕事を楽しむには好きな仕事に就けばいい」といった単純な話ではありません。

どんな職場でも、人は自分で選んでいると感じ、成長を実感し、人とつながっていると感じるとき、よりいきいきと働きやすくなるのです。

反対に、支配され、無力感を抱き、孤立していると感じる職場では、同じ仕事でも消耗しやすくなります。

仕事を楽しくする3つの心理的欲求とは、自律性、有能感、関係性です。

この3つは、働く人の心を動かす「見えない燃料」のようなものです。

仕事をもっと楽しく、健康的で、意味のあるものにするには、私たちの職場がこの燃料を満たしているかどうかを見直す必要があるのです。

参考文献

The Secret to Enjoying Work More
https://www.psychologytoday.com/us/blog/getting-up-on-monday-morning/202607/the-secret-to-enjoying-work-more

元論文

Self-determination theory in the workplace: the evolution, present, and beyond
https://doi.org/10.1016/j.jbusres.2026.116146

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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