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高橋李依×古川慎×白石晴香、互いに認め合う“役者魂”「表現に命を懸けている」

  • 2026.7.7
(左から)古川慎、高橋李依、白石晴香 クランクイン! 写真:吉野庫之介 width=
(左から)古川慎、高橋李依、白石晴香 クランクイン! 写真:吉野庫之介

自己否定を抱えながら生きてきた少女が、初めて自分をまっすぐに見つめてくれる存在と出会い、少しずつ本来の輝きを取り戻していく――。テレビアニメ『無自覚聖女は今日も無意識に力を垂れ流す』は、孤独や憎しみ、劣等感といった痛みを繊細にすくい取りながら、その先にある救いと成長を描く愛の物語だ。本作でカロリーナを演じる高橋李依、エドワードを演じる古川慎、フローラを演じる白石晴香にインタビュー。3人が感じた作品の魅力、キャラクターに込めた思い、そしてタイトルにちなみ、互いの“無自覚だけどすごいところ”について語り合ってもらった。

【写真】高橋李依×古川慎×白石晴香、インタビュー撮り下ろしカット(18枚)

■自己否定の先にある救い――3人が語る、痛みを抱えたキャラクターたちの魅力

――本作に触れた時の第一印象をお聞かせください。

高橋:私が最初に本作に触れたのは、PVのお話をいただいた時でした。その時から、カロリーナとエドワード、2人のピュアな距離感がすごく好きで。収録の際にも、「この2人の距離感が本当にいいですよね」と、すぐ古川さんにお話しした記憶があります。それくらい、2人の純粋さが愛おしかったんです。

一方で、それぞれが抱えている自己否定や自信のなさが、恋愛にも絡まっていくところが印象的でした。お互いに惹かれ合っているのに、なかなかうまくいかない。そのもどかしさに「どっちの気持ちもわかる」と思えて、だからこそ見守りたくなる。甘さだけではなく、痛みや不器用さも含めて丁寧に描かれているところに惹かれましたし、そうした繊細な塩梅が、この作品の面白さだと感じました。

古川:ジャンルとしては、いわゆる悪女もの、あるいは令嬢ものと言われる作品のひとつではあると思うんです。ただ、その中でも、他者に向けられる憎しみや、湿度のある感情の描写がすごく濃い作品だなと感じました。たとえばカロリーナは、そうした感情を受ける側として描かれますよね。その痛みや生々しさが強ければ強いほど、その先にある救済の道が、より華々しく、輝かしいものに見えてくる。

そこから這い上がっていく美しさのようなものが、この作品にはあると思いました。それぞれのキャラクターが、生々しい感情の中でどう変わっていくのか。あるいは、変われないことがどれほど悲しいことなのか。そういった部分も伝わってくるので、恋愛や成長の物語としてだけでなく、すごく多面的な読み方ができる作品だなと感じました。

白石:私が初めて原作を読ませていただいたのは、出演のお話をいただいた時でした。カロリーナは自己否定を抱えながら生きている人物ですが、そうした考え方って、これまで自分がどう生きてきたのか、どんな環境に置かれてきたのかによって形作られていくものだと思うんです。それは私自身、人生の中でも感じてきたことでしたし、この作品に触れて改めて考えさせられました。

ただ、その環境も、ひとつのきっかけや人との出会いによって変えていくことができる。カロリーナを見守る人たちは本当に温かくて、協力的で、愛にあふれているんですよね。一方で、フローラを中心に見ていくと、“完璧聖女”と呼ばれるがゆえの苦しみや、彼女が抱える苦悩も描かれています。そういう意味では、愛の物語でありながら、ラブロマンスだけではなく、人間の成長や、それぞれの戦いを描いた物語でもあると感じました。

――それぞれが演じるキャラクターについて紹介をお願いします。

高橋:カロリーナは、タイトルにもある通り、彼女の中に大きな力があることは、見ている方にもある程度想像していただけるキャラクターだと思うんです。ただ、彼女自身は第1話の時点で、そこにまったく気づけていない。むしろ、自分には力がないと思い込んでいるところから物語が始まっているんですよね。

そうなってしまったのは、やはり彼女が置かれてきた環境が大きいと思っています。人の考え方や発言って、周りからどんな言葉をかけられてきたのか、自分の力を発揮できる場所にいられたのかによって形作られていくものだと思っていて。そういう意味では、第1話時点のカロリーナは、まだ本来のカロリーナらしさを出せていない状態なのかなと感じました。

彼女の言葉には、自信のなさがベースにあります。でも、ただ悲しんでいるように聞かせたくはなかったんです。カロリーナにとって「自分には力がない」という感覚は、本当に信じていることだからこそ、そこに彼女の生い立ちや、これまで歩んできた時間がにじむように演じたいと思いました。

古川:エドワードは、ざっくり言うと頼もしいヒーローというのが最初の印象でした。ただ個人的にすごく好印象だったのは、彼の人間的な未熟さもしっかり描かれているところです。何でもできて、強くて、かっこよくて、頼りがいがあるだけの人って、やっぱり面白くないと思うんですよ。

エドワードは戦においては残酷無比とも言われるような人物ですが、一方で女性と接する時にはどうしていいかわからない。大事な対話の場面で、自分のような見た目の人間がどう声をかければ相手を怖がらせずに済むのか、そのやり方がわからないんです。そういうところまで含めて、人間的に未熟なキャラクターなんですよね。

だからこそ、そのアンバランスさにギャップがあって、魅力につながっているのだと思います。カロリーナを助けに行く時はすごく頼もしいのに、いざ自分が大切な存在として見初めたカロリーナを前にすると、何もできなくなってしまう。その初々しさには、傍から見ていて「頑張れ、頑張れ」と思わされますし、彼もまたカロリーナと一緒に少しずつ成長していく人なのだと感じています。

白石:フローラは、最初はこの作品の中で悪役ポジションのように受け取られるキャラクターだと思います。ただ彼女は、これまで“完璧”であることを背負わされてきたからこそ、弱音を吐けなかったり、小さい頃から涙を流すことができなかったりしたんですよね。

そんな中で、唯一手を差し伸べてくれたお母さんが亡くなってしまう。そのきっかけがカロリーナにあると彼女は思っているからこそ、そこに憎しみの感情が向かってしまったのだと思います。その思いが大きくなればなるほど、カロリーナに強く当たってしまう。本来のフローラは、きっとその出来事が起こる前とは違う人だったのではないかなと想像しています。

だからこそ、フローラがそうなってしまった背景や、背負ってきた苦しさを表現できたらいいなと思いながら演じていました。彼女にも見えないところでの努力や、「本当はこうなりたい」という強い思いがある。カロリーナ側の立場に共感される方も多いと思いますが、フローラにも理想の自分と今の自分が違うことへの苦しみがあるので、そういった部分も感じ取りながら見守っていただけたらうれしいです。

■長年積み重なった痛みと、初めて向けられたまっすぐなまなざし

――カロリーナとフローラのやり取りには、長年積み重なってきた感情がにじんでいるように感じました。お二人は姉妹の掛け合いを演じる上で、どのようなことを意識されていましたか?

高橋:フローラとのシーンで意識していたことを挙げるなら、受け方だったと思います。ひどいことを言われてびくっとする、という反応ももちろんあるのですが、それがその場で初めて起きたことではなく、半永久的に続いてきたものだと感じてもらえる空気になればいいなと思っていました。

日頃からそういう関係性があって、一言目を発する時点、あるいは自分の意見が頭によぎらないほど、最初の一歩目からすでにフローラとの関係性がにじんでいる。そういう佇まいの中に、カロリーナとフローラの“エピソードゼロ”のようなものも表現できるのではないかなと思ったので、フローラの言葉をどう受けるかは、すごく意識して演じていました。

白石:フローラ側としては、たぶんカロリーナが何を言っても腹が立ってしまうんです。だから、カロリーナが何を言っても自分の気持ちは変わらない、という思いで、常に食ってかかるような気持ちで演じていました。

改めて2人の掛け合いを見ると、姉妹同士でありながら、そこには常に憎しみのような感情があるんですよね。「あなたがいなければよかったのに」という思いを、移動中のような何気ない場面でも口にしてしまうほど、彼女の中にはずっとその感情がある。高橋さんがおっしゃった通り、それはここで急に生まれた感情ではないんです。

もし、これまで2人きりにされてしまうような環境ではなかったら、フローラはカロリーナと2人で話すこともなかったと思いますし、聞きたいこともなければ、存在自体が消えてほしいとすら思っている。普段の自分では抱くことのないような強い感情を、常に心の中に置きながら演じていました。

――エドワードは、カロリーナにとって初めて自分をまっすぐに見つめてくれる存在でもあります。古川さんは、2人の関係性の変化をどのように作っていきましたか?

古川:エドワードは、言ってしまえばかなり奥手な人なんですよね。自分から積極的に踏み込めるタイプではないけれど、カロリーナに対して好意はちゃんとあるし、伝えたい気持ちもある。でも、どうしていいかわからない。その不器用さや初々しさは、演じていてすごく共感できる部分でした。

カロリーナと出会って、彼はしっかり惹かれていくんです。そこから「この子のために自分ができることは何だろう」と一生懸命考える。その結果として、少しぎこちなかったり、空回りしてしまったりする行動につながっていくのですが、その“わかるけれど、うまくできない”感じは大事にしていました。

一方で、戦闘や自分がこれまでやってきたことに対しては、エドワードは自信を持って動ける人です。だからこそ、カロリーナを守る場面では頼もしく見える。でも恋愛になると急に不器用になる。そのギャップを意識しながら演じていました。

あとは、高橋さんが本当に受け上手だったので、すごく助けられました。こちらの芝居をきれいに受け取って、次につなげてくださるので、エドワードとしても自然に前に進ませてもらえた感覚があります。カロリーナとの距離が少しずつ近づいていく過程は、その掛け合いの中で作っていけたと思います。

■“無自覚だけどすごい”3人の役者魂

――本作のタイトルにちなみ、皆さんが感じるお互いの“無自覚だけどすごいところ”を教えてください。

高橋:私から見た古川さんは、アフレコスタジオでは職人で、表に立つ時はエンターテイナーなんです。その両方を持っているところが、本当にすごいなと思います。職人気質であることは、作品のクオリティを上げていく上でとても大切なことだと思うんです。でも、その職人気質100%でステージに上がっても、なかなか伝わりづらい瞬間もある。

でも古川さんは、作品に向き合う職人としての姿勢を持ちながら、宣伝稼働などで表に立つ時には、お客さんと一緒に作品を楽しめるエンターテイナーでもあるんです。今、アニメというものがどんどん大きく広がっている中で、声優業に必要なものをその都度取り入れている感じがして、すごいなと思います。声優という仕事も、これから10年、20年の中でいろいろな形に変化していくと思うのですが、古川さんは、その時代の声優に必要なものを常にアップデートしながら持っている方、という印象があります。

古川:高橋さんは、無自覚にお芝居へのハードルが高いですよね。自分の中で常に「もっと行けるんじゃないか」「もっと真ん中を狙えるんじゃないか」という感覚を持っている気がします。いろいろな現場で、もっとこうしたい、もう少しこちら側に寄せてみたい、という姿勢が見えるんです。自分からお芝居の核心を狙いに行くというか。その貪欲さは、どの現場でもすごいなと思って見ています。表現に命を懸けている感じがしますね。

白石:今のテイクでも十分素敵なのに、「実はこういう部分も表現したくて、もう一度チャレンジしてみてもいいですか?」とおっしゃることがあるんです。それを聞くと、「確かにその視点はなかった」「そちらも一度聞いてみたい」と思えるんですよね。作品の見え方を、より多面的にしてくださるところが本当に素晴らしいなと思います。

高橋:うれしいです! ありがとうございます。でも、やりすぎてしまうと現場のご迷惑になってしまうんじゃないかという不安もあって。お芝居が好きだという気持ちが、違うふうに見えてしまわないかな……と考えることもあるんです。

古川:いやいや、そんなふうに見えたことは一度もないです(笑)。むしろ、いつもすごく真摯にお芝居と向き合っている方だと思っています。

白石さんにも、高橋さんと似たものをずっと感じているんです。お二人とも、パフォーマンスに命を懸けているタイプだなと。表現することに全力を注ぐことに、何の迷いもない人たちというか。そこは絶対に似ていると思っていました。それに、白石さんは本当に笑顔を崩さないんですよね。どんな時でも「笑顔でいよう」と決めているような、腹の据わり方がある。肝が据わっているというか、少し武士のような佇まいを感じます。

白石:なぜか私、「武士」という言葉をいろいろな方からすごく言われるんです(笑)。

高橋:本当に、“正々堂々”という言葉がすごく似合う方だと思います。ずるいことをしたり、誰かを出し抜いたりするのではなく、お芝居でまっすぐに向き合う方というか。剣と剣をきちんと交えるような誠実さがあって、今のお話を聞いていて、その表現はすごくしっくりきました。

古川:ずっと努力を重ねてきた人なんだろうな、ということがお芝居から伝わってくるんですよね。以前にレギュラーでご一緒したこともありますが、影でしっかり積み上げているのに、それを必要以上に表には出さずに振る舞っている印象があります。

現場で一緒になった時の空気感や、お芝居への向き合い方からも、「もっとやりたい」「もっと突き詰めたい」という思いがにじんでいる。言葉で聞いたわけではなくても、そういうものが自然と感じ取れるんですよね。

白石:ありがとうございます。自分ではあまり言葉にして伝えるタイプではないので、そういう部分をお芝居の中で感じ取っていただけていたのなら、すごくうれしいですし、役者冥利に尽きるなと思います。

――放送を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。

高橋:聖女ものや、綺麗な女の子、かっこいい王子様が登場する作品というと、少しジャンルを選ぶように感じる方もいるかもしれません。でも本作は、そういった世界観にあまり触れてこなかった方にとっても、すごく入り口になりやすい作品だと思っています。私たちも作品の中で、受け取っていただきやすいように努めてきたので、きっと見やすく楽しんでいただけるはずです。

その上で、“無自覚聖女”という部分はもちろん、登場人物たちがそれぞれに自己否定や迷いを抱えているところも、この作品の魅力だと思います。日頃、何かに引っかかったり、少し立ち止まったことがある方なら、きっとこの作品のテンポ感や爽快感から力をもらえるのではないかなと。ぜひ気軽にご覧いただけたらうれしいです。

古川:アニメーションは娯楽作品ではありますが、そこに登場するキャラクターたちを、一人の人間として見ていただけたらうれしいなと思っています。もちろん、どう受け取るかは見てくださる皆さん次第ですし、それぞれの楽しみ方があっていいものだと思います。

ただ、この『無自覚聖女』という作品の中で、何かしら自分の中のヒントのようなものが見つかるのであれば、それはすごく素敵なことだと思うんです。作品全体が持っているメッセージや、キャラクターたちの生き方が、無自覚に誰かの中に残って、その人の何かを少し変えるかもしれない。そんな期待もあります。何かを感じて、「そっか」と思えるものがあったら幸いです。

白石:いち視聴者として見ると、カロリーナとエドワードのやり取りは本当にキュンキュンする物語だと思います。登場人物それぞれが抱えているコンプレックスや苦しさを乗り越えていく成長の物語でもありますが、恋愛面もとても丁寧に描かれているんです。

不器用でピュアな2人だからこそ、近づきそうでなかなか近づけない。その距離感や、お互いに無自覚なところが、傍から見ているとすごくときめくんですよね。人間ドラマとしても見応えがありますし、純粋なラブストーリーとしても楽しんでいただける作品になっていると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。

(取材・文・写真:吉野庫之介)

テレビアニメ『無自覚聖女は今日も無意識に力を垂れ流す』は、AT-Xにて6月30日より毎週火曜22時、TOKYO MXにて7月7日より毎週火曜23時、BS11にて7月9日より毎週木曜25時、ほか各局にて順次放送。dアニメストア、U-NEXT、ABEMAにて6月30日22時30分より地上波1週間先行配信、その他プラットフォームにて順次配信。

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