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染谷将太×細田守監督「AIと人間の関係性を17年前に予見していたのがすごい」…『細田守の原点/展』の見どころを深掘り

  • 2026.7.6

アニメ映画『時をかける少女』の公開20周年を記念して、2026年8月31日(月)まで、CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京都・中央区)にて展覧会「細田守の原点/展」が開催中。こちらは過去最大規模のクリエイティブ資料でアニメーション映画監督・細田守さんの映像世界を体感できる催しになっており、開催前日には細田守監督と、細田監督作品に4度の出演経験がある俳優・染谷将太さんによるトークイベントも実施。『おおかみこどもの雨と雪』収録時のエピソードや本展の見どころなどが語られた。

「細田守の原点/展」の開催を記念して、細田守監督と染谷将太さんによるトークイベントを実施 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
「細田守の原点/展」の開催を記念して、細田守監督と染谷将太さんによるトークイベントを実施 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

現実世界のAIに関する問題を『サマーウォーズ』で予見

「細田守の原点/展」は、今なお多くのファンを生み続けている『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』といった作品を中心に、絵コンテ、レイアウト、原画、美術ボードなどの制作資料を過去最大規模で展示。さらに「Early Days」と称して、細田監督の学生時代の作品や『時をかける少女』以前に手掛けた制作物を紹介するエリアもあり、細田監督の原点ともいえる作品群を新たな視点から発見することができる。

青空が印象的な「細田守の原点/展」のエントランス 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
青空が印象的な「細田守の原点/展」のエントランス 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
『おおかみこどもの雨と雪』の展示エリア 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
『おおかみこどもの雨と雪』の展示エリア 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

ここからは、前日のイベントにおける細田監督と染谷さんのトーク内容を紹介しよう。

――染谷さんは細田監督の作品に4度も出演されていますが、お二人が初めてお会いになられた際のことを教えていただけますか?

【染谷将太】『おおかみこどもの雨と雪』のオーディションで初めてお会いしました。もともと細田監督の作品は大好きだったので、新作のオーディションを受けられることになってうれしい反面、ものすごく緊張もしていて。声の仕事もそれまで全くやったことがなかったんですけど、オーディションでは時間を割いて、芝居を見ていただけて。とても貴重な経験をさせていただいた…というのが、強く印象に残っています。

【細田守監督】オーディションというとキャラクターのセリフを用意して、それを読んでもらうのが普通ですが、染谷くんはすでに俳優として活動されていたので、「演じる役(キャラクター)を表現するうえで、どんなところにこだわっていますか?」みたいな話で盛り上がって。その後、“おおかみおとこ”と“雨”の2役をやってもらったんですけど、年齢的にどちらもちょっと合わなかったんですね。でも、染谷君のお芝居そのものはすごくよくて、ぜひ出ていただきたいと思いまして。それで、年齢的にぴったりの“田辺先生”という小学校の教師の役をお願いして、参加していただくことになったんです。

【染谷将太】思いもしなかった役ですが、それでも作品に参加できてうれしかったですね。細田監督ならではのアフレコの方針といいますか、包み込むようにして役者さん一人ひとりと向き合い、芝居を積み重ねながら声を収録していくスタイルは本当にすごくて。自分もそうやって演出してもらって、すごく幸せな時間を過ごさせていただきました。

「細田守の原点/展」の見どころについて語る細田守監督と染谷将太さん 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
「細田守の原点/展」の見どころについて語る細田守監督と染谷将太さん 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

――染谷さんからご覧になられて、細田監督の作品の魅力はどのようなところにあると思われますか?

【染谷将太】エンターテインメントとして楽しめるというのが大前提であるんですけど、そのなかに“人々の変化”と“時代の変化”もしっかり表現されているところが、すごく僕の胸に響くんですよね。『おおかみこどもの雨と雪』公開当時はまだ独身でしたが、その後、自分も結婚して、子どもが生まれたりして。家族を持ってからあらためて本作を観てみると、それまでとは全く違う印象を受けたので、そういったところもすごいなと感じました。『バケモノの子』も同様に、観たときの年齢や家族構成によっていろいろな捉え方ができる作品なんですけど、それでいて、ずっとぶれない信念のようなものも感じられて。そこもまた、ハッとさせられる要素であって、新作が発表されるたびに“新たな感動”と“変わらない信念”を同時に楽しめるのが、細田監督作品のすてきなところだと思います。

「エンターテインメントの中に“人々の変化”と“時代の変化”がしっかり描かれているところがすごい」と話す染谷将太さん 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
「エンターテインメントの中に“人々の変化”と“時代の変化”がしっかり描かれているところがすごい」と話す染谷将太さん 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

――細田監督にとっても、人々の変化、時代の変化を描くことは、作品を制作するうえで大事にされているところですか?

【細田守監督】いつも作品を作っていて思うんですけど、やはり“時代とともに変わっていくもの”っていうのは確実にあるんです。でもそれと同時に“時代を経ても変わらないもの”もあって。今回の展覧会でいうと『時をかける少女』は、もともとは筒井康隆先生の書かれた小説が原作で、本作のほかにも何度も映像化された経緯があるんですね。そういった作品を手掛けるにあたり、「時代ごとに変化していくものは何だろう?」、そして、それでも共通して「筒井先生の原作から変わらないものって何だろう?」ということを、とにかく考えました。

それ以降、『サマーウォーズ』をはじめ、ほかの作品でも“変わっていくことと、変わらないことを描く”という点は強く意識するようになって。さっきまで染谷くんとも話していたんですけど、『サマーウォーズ』はもう17年前の作品になりますが、AIが敵として登場するんですね。そして今まさに、世の中がそういうふうになってきているという。この作品ほど敵対しているわけじゃないけど、AIとの関係性みたいなことで言えば、今まさに僕らが直面している問題だったりするじゃないですか。そういう意味も含めて、映画っておもしろいですよね。その映画が作られた時代を感じられるのは当然として、それ以外にも、公開当時は突拍子もない出来事だと思われながらも、時間が経ってから観返すと「あの映画で言っていたのはこういうことだったんだ」と気づけたり。時代が巡ってきて、まさに今、現実世界で直面している事象や問題を映画から発見できるという。そういうことが起こり得るのも、映画ならではのおもしろさじゃないかなと思います。

「時間が経ってから観返すと新たな発見があるのも映画のおもしろいところ」と話す細田守監督 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
「時間が経ってから観返すと新たな発見があるのも映画のおもしろいところ」と話す細田守監督 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

学生時代の自主制作映画にも「果てスカ」に通じる要素が…

――本展のタイトルである“細田監督の原点”についても、お話を伺いたく思います。本展では細田監督が中学生時代に8ミリフィルムで制作された自主アニメーションなども公開されていますが、これらの展示に対しての率直なご意見、ご感想をお聞かせください。

【細田守監督】いやぁ、めちゃくちゃ恥ずかしいです。皆さん、中学生のときに書いた文章とか、人に読ませたりしますか?絶対できないでしょう?それに近いことを今、やっているわけですが、そうした恥ずかしさも含めて、自分自身の“原点”と呼べるものを用意させていただきました。このタイトルじゃなきゃ絶対出していないような作品なんですけども、出さざるを得なくなって。恥ずかしいんですけど、観てください…みたいな、そういうむず痒い感覚です。

【染谷将太】監督はそうおっしゃられますけど、すごかったですよ。実際に作品を観させていただいたんですけど、中三でこれを作られたことがすごいし、この時点でもうしっかり映画になっているのもすごい。しかもよく見てみると、今の監督の作品につながるモチーフもちらほら出てきていて。中学生のときに思いついた発想が今にもつながっているんだ…となって、そういったところに気づいた瞬間、鳥肌が立ちました。

【細田守監督】今まであまり、自分の作品を振り返ったことがなくて。1作作るごとに前の作品のことは忘れて、また新しい作品に取り組む…という姿勢でやってきたんですけど、せっかくの機会なのであらためて振り返ってみたところ、「このころから変わっていない部分がけっこうあるんだな…」ということに気づかされました。これもさっき、染谷君と話したんですけど、このころからすでに作品の中に竜が出てくるんですよ。そして『竜とそばかすの姫』や『果てしなきスカーレット』にも竜(ドラゴン)が出てきている。「三つ子の魂百まで」と言いますけど、それってこういうことなのかもしれないですね。

「あらためて自分の作品を観返したことで、さまざまな発見があった」と話す細田守監督 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
「あらためて自分の作品を観返したことで、さまざまな発見があった」と話す細田守監督 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

――本展をご覧になられて、特に印象に残った展示がありましたら教えてください。

【染谷将太】『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』という映画3作品の展示もおもしろいんですけど、僕は細田監督の大学時代にクローズアップしたエリアがおもしろかったですね。監督が描かれた油絵が展示されているんですけど、その色調というか色彩には、今の作品に通じるところがあって。それと、監督ご自身は恥ずかしいとおっしゃるんですけど、大学時代に撮られた実写映画も上映されていて、そこで描いているメッセージだったりとかも、しっかり今の作品につながっているんですね。こういったものは突発的に思いつくんじゃなくて、やっぱり地続きになっているんだなって思いましたし、ほかにもなかなか見ることのできない展示物が満載で。さまざまな展示から細田監督の原点に触れることができて、本当に楽しかったですね。個人的には、監督の本棚をそのまま再現したコーナーもおもしろかったです。

染谷将太さんのイチオシは「細田監督の大学時代にクローズアップしたエリア」だという 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
染谷将太さんのイチオシは「細田監督の大学時代にクローズアップしたエリア」だという 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

【細田守監督】お恥ずかしいかぎりですが、こういった積み重ねがあって、染谷くんと一緒に映画を作れるところまでこられたのだと思うと、感慨深いものがありますね。

――最後に、これから本展に来られる方や、本展に興味をお持ちの方に向けて、一言ずつメッセージをお願いします。

【染谷将太】子どもから大人まで楽しめる展覧会になっています。細田監督の原点が見られる、こういう機会はなかなかないと思うので、大勢の方に足を運んでいただけますとうれしいです。

【細田守監督】「時かけ」を作ったのは、もう20年以上前になるんですけど、展示を見ていたら当時の思いがありありとよみがえってきて。「どういった評価を受けるかわからないけど、とにかくいいものにしたい」とか、「皆さんに楽しんでもらえる作品をお届けしたい」といった、制作当時の気持ちを思い出して、懐かしくなりました。そういった意味でも、やはり「時かけ」は僕にとって一つの原点でしたし、さらに学生時代のね、子どものころに作った作品も観返してみて。このころから変わらずに、一貫して描きたいものが自分の中にあったんだな…ということをあらためて認識できたので、開催できてよかったと思っています。

『時をかける少女』では主人公・紺野真琴のバイタリティや若々しさ、みずみずしさ、『サマーウォーズ』や『おおかみこどもの雨と雪』では、家族や親戚が集まったときのワイワイした感じ。そういった要素も含めて描きたいものを詰め込んできたので、さまざまな展示物を通して、それらを感じ取っていただけるとうれしいです。ご家族で来ていただいても楽しめますし、一人でお越しいただいて、ご自身の若かったころと照らし合わせながら見ていただく…という鑑賞の仕方もできます。いろいろな形で本展を楽しんでいただけますと幸いです。

「大勢の方に遊びに来ていただきたい」と、展覧会の魅力をアピールする細田守監督&染谷将太さん 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
「大勢の方に遊びに来ていただきたい」と、展覧会の魅力をアピールする細田守監督&染谷将太さん 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

「細田守の原点/展」では、細田守監督作品の制作資料を300点以上展示。絵コンテの演出指示から精緻な筆遣いまで、間近で閲覧できるようになっている。また、天井高約5メートル、約1200平方メートルの大空間を活かし、各作品の名シーンを体感できる映像展示も実施。さらに会場では、細田作品の多くに描かれる“青空”をモチーフにしたアイテムや、作品の名場面をデザインしたグッズなど、本展ならではのオリジナルグッズ 100点以上も販売している。

『時をかける少女』の展示エリア 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
『時をかける少女』の展示エリア 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

そうして展覧会や買い物を楽しんだあとは、併設するカフェでさまざまなコラボメニューも楽しめる。『サマーウォーズ』に登場する仮想世界“OZ”をイメージしたメニューをはじめ、細田守監督作品の印象的なシーンやキャラクターをモチーフにしたフード、デザート、ドリンクが多数用意されているので、来場時はこちらにも立ち寄り、本展ならではの特別なカフェ体験を満喫しよう。

併設するカフェでは、細田守監督作品の世界観を活かしたメニューも味わえる 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展
併設するカフェでは、細田守監督作品の世界観を活かしたメニューも味わえる 撮影:ソムタム田井 (C)細田守の原点/展

取材・文=ソムタム田井

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